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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

鍋風の煮魚 京橋「早瀬」

2010年7月20日

  • 筆者 京橋玉次郎

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金目が煮汁に半身

 頼んだのは煮魚では好物のひとつである金目鯛。皿に載ってくるものとばかり思っていた。が、陶器のふたつき柳川鍋のようなものが出てきた。「どうぞ」と運んできた兄さんがふたを取る。確かに真っ赤なかなり大きい立派な金目の切り身が現れた。熱々の煮汁の中にあたかも鍋料理の如く半身を浸している。冷えたら煮凝りが出来るような、濃厚な煮魚を想像していたのでちょっと意表をつかれた。

 鍋にはよく味のしみた大根、サトイモ、たまねぎが入っており、加えてシャキッとした歯ごたえの水菜が一つまみ添えてある。店長の田代さん(36)の説明では、なるべく客に暖かいものを暖かいうちに、と思って陶の鍋を使ったという。金目鯛では初めて対面したスタイルだ。

マグロ仲買人を12年

 個人的な好みでいえば、酒を飲むならこのあっさり味でよいが、昼飯のおかずにはもう少し甘しょっぱいしょう油味が深くしみこんでいてもよかった。切り身は新鮮だった。他の魚を食していないので断定できないが、魚については自信があるらしい。というのも店長はかつて築地でマグロの仲買人を12年間やっていたという。魚の目利きのプロというわけだ。ご飯もうまい。銘柄はコシヒカリとだけ米屋に指定し、産地等はその時々でよいものを選んでもらっているという。

まもなく開店3年

 このあたりは京橋でも屈指のランチ激戦区。ちょっと意地悪い言い方だが、この界隈では開店して数ヶ月や半年ではなかなか先行きは分からない。この店が開店したのも目撃しているが、まもなく3年になる。激戦の地に居場所を確保したかと思い、あらためて訪問してみた。古さを演出してはいるが、疑古調の今風の店だ。

 店内は黒を基調としてデザインされ落ち着いている。ラストオーダー近くの訪問だったため、他に客はいなかった。1960年代のビートルズが静かに流れていた。すみのテーブルにひっそりと座り、しみじみと昼めしを食すつもりだった。だが、すでに片付け作業に入った台所の音が耳につき、いささか気を散らされる。ぎりぎりの遅い時間に飛び込んだ一人客ではあったが・・・。ランチは限定15食の週替わり定食、10食の健康定食、づけ丼、唐揚げ定食などがすべて一律980円。ご飯、味噌汁のお代わり自由。

シダ観察と食

 ところで先日ひょんなことから生物学のフィールドワークに参加した。昼でも薄暗い木陰で、ひたすらシダの種類を同定してゆくという、おそろしく地味な勉強。私にはどうみても同じに見えるものを、先生は「これはなになに、あれはなになに」とわずかな違いを判別してゆく。当初の学習意欲はすぐに絶望にかわり、あ然として観ているしかなかった。

 ひるがえって食。微妙な味の違いや素材の細かな判別に自信はない。しかし世にはそうしたことが分かる人がいるらしい。プロとよぶのだろうか。シダ観察と似ていないでもない。そんな人から見れば、こんな駄文は「笑止」の一言だろう。そんなことを思いつつ、汗を拭きながらただ先生のあとをついて回った。

【お店データ】

店名 早瀬

中央区京橋3−3−11 〈地図〉 03−6423−1863

営業:〔平日〕午前11時30分〜午後2時、午後5時30分〜午後11時30分

  :〔土曜〕夜だけ

日祝休み

<本日食したランチ>

金目鯛の煮付け  980円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 週2、3回のジム通いで運動不足を解消中。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀中心の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。元大手マスコミに勤務、不規則・不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。1946年生まれ身長175センチ、A型。

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