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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

江戸からの老舗蕎麦 日本橋「藪伊豆総本店」

2010年8月3日

  • 筆者 京橋玉次郎

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門構えと看板女将

 日本橋と一口にいっても古い雰囲気の街、百貨店や繁華街、ビジネス街、といくつかの顔を持っている。薮伊豆の界隈は昔からのビジネス街だ。人通りも左程多くない。そんな通りで重厚な料亭のような門構えは異彩を放っている。以前ぶらぶら歩いていてここが目にとまったときは、思わず立ち止まって近づき、何の店か確かめてしまった。

 よくある町角の蕎麦屋とは違った雰囲気がある。従業員もせかせかしていないし、客層も落ち着いた感じの勤め人風の男性が多い。何より特徴的なのは、真夏でも和服をきちっと隙なく着こなした美人の女将がレジにいること。百貨店の広報を担当していたというが、そんな才気をオブラートにくるんだ笑顔で対応をする。看板女将というのだろう。

使い込まれたせいろ

 480円のせいろで味見という考えもよぎったが、結局せいろランチ1050円を頼む。せいろ2枚、海老天、野菜、かまぼこ、玉子焼きがついてくる。せいろは使い込まれた漆塗り、角などところどころ地肌の木が見える。無傷のそれもいいが、年季を感じさせる本物の味わいも悪くない。

 甘皮まで挽かれた蕎麦は、食感は更科のようだが味わいはそれより手ごたえがある。好みをいえばもう少し香りが欲しい。今は蕎麦の端境期、なのかな。つゆは宗田節が主、鯖節が従で出汁をとったあまり甘みを感じさせないすっきりした味わい。

 蕎麦屋では、時にてんぷらや玉子焼きに驚くような冴えを見せることがある。薮伊豆の海老天もいい。熱いのをほおばると、パリッとした薄い衣と海老の甘さが心地良く、冷たい蕎麦が一段と引き立つ。このランチのコストパフォーマンスは悪くない。

毎日石臼で挽く

 蕎麦は毎日入り口脇の小屋で石臼を回し、甘皮まで挽いたそば粉を使っている。蕎麦の挽き方はよく知られたように、胚乳中心の白い更科と、ある程度殻まで挽きこんだ黒い田舎蕎麦、その中間の甘皮までを挽いた蕎麦、と分けることが出来る。甘皮まで挽くとルチンなど栄養が多く含まれ香りも強くなる。

 石臼も凝っている。今では手に入りにくい蜂巣石。これは石に細かな穴があいていて、石が熱くなりにくいので粉が焼けず、うまく挽けるのだという。「包丁3日 延し3年 木鉢3年」などという言葉もあるそうだ。庶民の素朴な食べ物から始まって出世した寿司と同じように、蕎麦も究めるのもなかなか大変なようだ。

天保年間から繁盛

 店に伝わる由来によれば、江戸末期の天保年間(1830年代)には伊豆本という名前で、すでに京橋で繁盛していたという。明治15年に「神田の藪の暖簾に包含され」、藪本家の堀田定次郎によって薮と伊豆本から「薮伊豆」と命名され直系の暖簾になったという。

 どちらがどう仕掛けたのかは知らないが、今で言う企業合併のようなものだろう。老舗同士の暖簾、興味深いドラマがあったに違いない。平成8年に京橋から日本橋に移った。「伝統の味を守りたい」と語る野川店主が6代目にあたる。1階テーブル席、2階テーブル席と小上がり席、3階座敷、で各種宴会にも対応できるそうだ。

【お店データ】

店名 藪伊豆総本店

中央区日本橋3−15−7 〈地図〉 03−3242−1240

営業:〔平日〕午前11時〜午後3時、午後5時〜午後10時(金は午後11時)

  :〔土曜〕午前11時〜午後8時

日祝休み

<本日食したランチ>

せいろランチ  1050円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 週2、3回のジム通いで運動不足を解消中。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀中心の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。元大手マスコミに勤務、不規則・不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。1946年生まれ身長175センチ、A型。

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