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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

檜町の老舗 八重洲「割烹 や満登」

2011年1月18日

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明治の創業

 東京駅から数分。ごみごみっとした通りに飲食店が密集している。ビルの地下へのあまり目立たない入口。赤いじゅうたんを下ってゆく。意外に階段が長い。1、2度折れ曲がった先に思いがけずに情緒のある明かりが姿を現す。明治35年創業の老舗料亭「や満登」の入口だ。

 入るとおばちゃんから食券を買う仕組みとなっている。昼の品書きは、手さげ弁当2500円、松花堂弁当1500円、飛騨牛ステーキ1350円、今週の定食1000円、刺身定食1000円、鉄火・親子・天丼が900円。まずまずの価格。通りに面して品書きが出ているので、ある程度決めてから入ったほうがよい。

当座煮に料亭の片鱗

 頼んだのは料亭にはあまりふさわしくない今週の定食のうち豚肉の味噌炒め。好物なのだから仕方がない。ホイコーローに似たやや濃い目の味付け。ご飯のおかずを意識したもののようだ。ついてきた小鉢の当座煮は京菜、白身の魚、厚揚げなど。ちょっとした煮物だが、やはり居酒屋とは違う割烹調理の片鱗を感じさせる。

 しかし今日の定食は、小鉢以外は特に特徴があるというわけではない。やはりこの店らしい食事を望むなら夜の懐石、昼なら松花堂弁当あたりを頼むのが正解なのだろう。テーブル席はそれぞれが和風のパーテーションで仕切られている。騒々しさも音楽もなく、静かに食事をするにはいい店だ。

読めない文字を眺める

 好きなところへ座ってよさそうだったので、13人が座れるゆったりしたカウンターにした。目の前の屏風のような大きな書をぼんやり眺める。一度は読もうとしたのだが、読めないのでぼんやり眺めた。読めなくても書を眺めていると心が落ち着く。漢字文化圏に特有のDNAなのだろうか。

 書の隅のほうには18代中村勘三郎の襲名を祝った入山招木(いりやままねき)が飾ってあった。ひいき筋がご祝儀に贈るもので、歌舞伎座の2階にしばらく飾ってあったものだという。上部の山が入の文字形になっているので入山の招木というらしい。「日本ばし檜物町 や満登」と読める。

 この招木を勘三郎に贈った3代目の成川さん(80)は今でも毎日、昼から夜まで店に出ている。日本橋生まれの日本橋育ちの江戸っ子。ポツリポツリと懐かしそうに昔のことを語る横顔は、いかにも老舗の旦那の雰囲気だ。

今は死語の三業地

 家康は江戸開府にあたり、町づくりのため多くの檜物を扱う宮大工を江戸へ集めた。その時遠州浜松の檜物大工の棟梁をこの町の名主としたことが檜物町の名に由来するという。余談だが、江戸は職業に由来する地名が多い。青物町、木挽町、茅場町、鍛冶町、呉服町などと、数えだすときりがない。

 檜物町界隈は大正から昭和にかけ三業地としてにぎわった。盛時には待合が60軒、料理屋が5、6軒、芸者500人を数え、泉鏡花、花柳章太郎、水谷八重子など作家や役者が遊ぶ格式高い花街だったという。鏡花の小説「日本橋」には「や満登」が出てくるという。ちなみに今は死語となった三業地とは待合、料理屋、置屋からなるものをいう、とは今回知った。

【お店データ】

割烹 や満登(やまと)

東京都中央区八重洲1−7−4〈地図〉 03−3271−2491

営業:〔平日〕午前11時30分〜午後1時30分、午後5時〜午後10時

土日祝休み

<本日食したランチ>

豚肉味噌炒め 1000円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 心身のリフレッシュに週2、3回スポーツジム通い。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀界隈の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。時には温泉泊まりの輪行で古い街道を走ったり峠を越えたりも。元大手マスコミに勤務、不規則で不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。身長175センチ、A型。

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