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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

江戸前握りの原型 神田「笹巻けぬきすし総本店」

2011年4月5日

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戦国時代の保存食がヒント

 笹に殺菌作用があることは古くから知られていた。戦国時代、飯を笹の葉にくるんで兵糧として携帯したことにヒントを得て、初代が「笹巻鮨」を始めたのが元禄15年(1702)のこと。越後の新発田出身松崎喜右衛門という人で、人形町に店を構えた。江戸名物の一つとして通人に人気があったらしい。暖簾分けで深川、神田、青山などにも店があったが、現在は神田のこの店だけとなった。ちなみに当代は13代目。

 店は10数人ほどが座れる縁台の様な質素な腰掛と低いテーブルが置いてある。これは基本的に折詰を待つ間の席であって、私のようにここで食するのは主流ではないようだ。この日も私が待つ間、40過ぎの男性が7個の折詰を持ち帰りで頼んでいた。物書きを商売にしているとかで、時々無性にここの鮨が食べたくなるのだそうだ。

江戸の絵草子にも登場

 緑鮮やかな笹を開くと、まぎれもない握りずしが出てきた。ただし、この鮨の特徴はたねが酸っぱくて塩辛いうえ、日持ちを良くするためにすし飯も十分に酢がきかせてある。さらに、おはぎのように粘りを出すまでにしっかり握られている。作り立てより3時間くらいたってからのほうが塩も酢もこなれてうまくなるという。店番をしていた大女将さんは「一晩おいたほうが好き」だそうだ。

 というわけで、このすしは折詰を持ち帰って時間をおいて食すのが「正しいやり方」らしい。江戸の絵草子にも「御殿勤めの宿下がりの折りに笹巻鮨を持ち帰る」とも書かれてあったとか。そんな歴史を見ると、この鮨が江戸前握りの元祖といっても大きな間違いではなさそうだ。

毛抜きで小骨を抜く

 店の説明によるとたねは、たい、おぼろ、卵、のり、光り物、白身魚など。光り物は春はさわら、夏はあじ、さより、秋冬はこはだ。白身は青だい、わらさ、かんぱち、など。

 作り方は、とにかく長く持たせるために、魚類は三枚におろして1日塩漬けにし、それを1番酢につけて1日しめ、あとは使うまで2番酢につけておく。

 たいがいの魚の小骨はきつい酢でしめるうちに柔らかくなるのだが、鯛の小骨だけは柔らかくならず、毛抜きで抜いていた。諸侯や旗本などがそれを面白がり、評判となって「笹巻けぬきすし」と呼ばれるようになったと伝わる。もちろん今も毛抜きで抜いている。

骨董品的な味わい

 昔は酢も塩もずいぶんときついものだったが、冷蔵庫が普及し客の嗜好も変わってきた今はずっと控えめにしているという。それでも現代の華奢で神経質な鮨とはかなり違う。現代の上品な握りを焼き物に例えて繊細で美しい柿右衛門とすれば、須恵器か古備前の様なたたずまい。骨董品的とでもいえるだろうか。骨董品同様この鮨の味も私は嫌いではない。

 食事をするには低すぎるテーブルと、手に粘りつく飯にやや苦戦しつつ食していたら、大女将さんがカンパチの頭のアラ煮を出してくれた。品書きに潮汁は付くとあったが、アラ煮は載ってない。「メニューに無いが・・・」と問えば、鮨たねの残りで頭が出た時など、時々こうして客につけるのだという。なんとおうようなことか。すっかり豊かな気分にさせてもらった。

【お店データ】

千代田区神田小川町2−12 〈地図〉 03−3291−2570

営業:〔平日〕午前9時〜午後6時30分、売り切れ終了。

日祝休み

<本日食したランチ>

7個潮汁付き 1620円 (7個持ち帰りは1575円)

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 心身のリフレッシュに週2、3回スポーツジム通い。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀界隈の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。時には温泉泊まりの輪行で古い街道を走ったり峠を越えたりも。元大手マスコミに勤務、不規則で不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。身長175センチ、A型。

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