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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

老舗の端正な鰻丼 銀座「竹葉亭本店」

2011年7月5日

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写真:お店看板お店看板

写真:お店外観お店外観

写真:店内店内

写真:鰻お丼鰻お丼

ミシュランの星

 とにかく、暑くなるとパブロフの犬のように、鰻を食したくなる時がある。「うまい鰻は・・・」と思いをめぐらし、数軒浮かんだ中で、竹葉亭の銀座(木挽町)本店に向かう。銀座もはずれで新橋に近いところ、周囲に再開発の工事壁が連なり、せっかくの趣を損ねているのがやや残念。

 和服をきりっと着た女将と仲居。看板や店のたたずまい、調度、内装、いずれをとっても東京屈指の鰻の老舗の趣を漂わせている。後で調べてみたら、東京の鰻屋として最初にミシュランの星がついていた。もっともこれは構えずに寄れるテーブル席でなく、座敷のほうとは思うが。

柔らかで上品な仕上がり

 鰻丼は2100円と2625円の2種類。価格の差は鰻の大きさの違い。久しぶりに足を延ばしたのだからと、大きいほうを注文。昼飯時とあって、あまり待たさずに出てくる。肝吸いとお新香がついている。

 黒塗りの丼のふたをとれば、端正なたたずまいの蒲焼が姿を現す。箸で軽く切り分けてほおばると、程々にあぶらがのった身がフワフワっと溶けるようにほぐれる。形をしっかり残した姿からの予想を裏切るやわらかさだ。やわらかくはあるが、水っぽいなどというわけではない。この微妙なところが蒸しと焼きの技なのだろう。

 タレはどちらかといえばあっさりで、しつこさがなく上品。味より量の食べ盛りの若い人には物足りなく感ずるかもしれない。ご飯の硬さも程々で私の好み。また、ついてきたお新香がうまい。時々、思いがけずうまいのに出会うことがあるのが、蕎麦屋の天ぷらと鰻屋のお新香。これがうまいと、もうけたような気分がして少しうれしい。

30年間値上げせず

 蒲焼には、串打ち3年、裂き5年、焼き一生という言葉があるそうだ。この店には焼きの名人がいた。関東大震災のとき、4つか5つの店の御嬢さんを背負って逃げたというエピソードが残る浅野政吉という職人だ。2代目から4代目まで3代にわたって仕えた。この技が今に伝わっているという。

 「今年は良い鰻が少ないうえに値段が上がっている」、「先代の言いつけで昭和56年から値段を上げていない。今は厳しいところです」。帳場の奥から顔を出した6代目の別府克己さん(72)は、社長業は7代目にまかせながらも温厚そうな顔を少し曇らせた。

 ひるめしに2625円というのは、サラリーマンが日々気軽に食すランチではない。しかし、老舗のこの味とこの雰囲気、たまにこんなランチもありだろう。

桃井道場の門前から

 店の名のいわれがそのまま店の生い立ちになる。いかにも老舗らしい歴史だ。江戸末期、江戸に剣術の三大道場があった。神田の千葉周作、九段の斎藤弥九郎、浅蜊河岸の桃井春蔵道場で、浅蜊河岸は今の新富町にあたる。首都高のわきに石碑も建っている。

 土佐の武市半平太なども通ったその桃井道場の門前で、門下生の刀預かり所として茶屋をしていたのが、そもそもの起源。明治9年の廃刀令に前後して酒や蒲焼を供する店となった。酒の事を古くはササとよんだので、屋号を「竹葉亭」とした。関東大震災を機に木挽町とよばれた現在の銀座8丁目に移転、座敷は当時のまま残っている。

【お店データ】

店名 竹葉亭

中央区銀座8−14−7 〈地図〉 03−3542−0789

営業:〔平日〕午前11時30分〜午後2時30分、午後6時30分〜午後8時(L.O.午後8時)

日祝休み

<本日食したランチ>

鰻お丼 2625円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 心身のリフレッシュに週2、3回スポーツジム通い。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀界隈の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。時には温泉泊まりの輪行で古い街道を走ったり峠を越えたりも。元大手マスコミに勤務、不規則で不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。身長175センチ、A型。

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