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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

昭和の郷愁、小さな洋食屋 銀座「早川」

2011年8月2日

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 「ハイネケン。それからハンバーグとチキンソテー。ご飯はいらないから」。時間は午後2時少し前。近所の自営の人だろうか、自宅の居間に入ってきたような感じの年恰好40歳前後、ポロシャツ姿の男性。注文を終えると、グラスを片手に持参した雑誌をめくっている。余計な音もなく、静かに時間が流れている。

 他の客は、私と年配の先客とやや地味な中年のご婦人。狭い店内にキッチンから洋食屋特有の脂っぽい匂いが漂ってくる。耳障りな雑音も余計な話し声もない。静かだ。昭和通りと晴海通りの交差する外のせわしない喧噪がうそのようだ。

12人で満員

 店内は6人掛け、4人掛け、2人掛けのテーブルがそれぞれ一つ。カウンター席が二つあるが、これは狭くてあまり実用的でない。キッチンにいるのはオーナーシェフである早川恒也さん(63)一人だから、料理が出てくるまではある程度の時間は覚悟が必要だ。

 カウンターでは、見習いだろうか白衣の“イケメン”の若い男性が料理を運ぶべく待ち構えている。忙しいというほどでもなさそうだ。時々カウンターの向こうのキッチンに入ってゆく。「な、こう切れば…だろう」などと、断片的に若者に話すシェフの声が聞こえる。

ごく普通の洋食

 ランチはカレーライス650円、オムライス750円などと、すこぶる良心的な価格。950円が一番高いのだが、その一つであるハンバーグを注文した。やや小ぶりで素直なハンバーグに目玉焼きとポテトサラダ、レモンが添えてある。「庶民的な普通のハンバーグ定食」というのがぴったりだ。

 誤解しないでほしい。「普通」という言葉はおとしめているわけではない。むしろ普通であることはある意味「ありがたい」ことである。たとえば日々の事。東北を思えば普通であることの、なんとありがたいことか。

1970年前後の香り

 店の創業は昭和11年。歌舞伎座の裏手で開業したが、戦後今のところに移った。店内は漆喰風の白い壁と天井、濃い茶色の椅子と床。強く何かを自己主張するところもなく、素朴な感じの洋食屋そのもの。昭和のころは町に何軒か小粋な存在として、こんな感じのレストランがあった。

 貧乏学生の頃、仕送りなしの学寮生活に月に1回入る奨学金は貴重だった。しかし、「たまには」とポケットにしのばせ、こうした感じの店で食事をするのが、年に何回かのささやかな贅沢だった。店の感じがそんなことを思い出させた。しかし、考えてみれば、なんとそれは40年以上前の話だ。

3代目は修業中

 一見怖そうだが、話してみれば人のよさそうな表情を隠せないオーナーシェフの早川さんは2代目。コック見習いかと思っていた若者は息子だった。銀座というきらびやかな街に、こうした、ごく普通で、若い人はもちろんおやじや年配のご婦人までが、一人でも複数でも気さくに食事を摂れる店があるのは貴重だ。

 息子さんは服部学園卒業という。28歳の時から35年キッチンに立ってきた父の後をついで、3代目として味わい深いこの小さな洋食屋を続けてほしいものだ。

【お店データ】

店名 レストラン 早川

中央区銀座4−10−7 〈地図〉 03−3541−7664

営業:〔平日〕午前11時30分〜午後3時、午後6時〜午後8時

日祝休み

<本日食したランチ>

ハンバーグ定食 950円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 心身のリフレッシュに週2、3回スポーツジム通い。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀界隈の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。時には温泉泊まりの輪行で古い街道を走ったり峠を越えたりも。元大手マスコミに勤務、不規則で不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。身長175センチ、A型。

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