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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

路地裏のてんぷら名店 茅場町「みかわ」

2011年8月9日

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尋常でない気配

 明るい大通りも気持ちが良いが、陰影があり人間の生活の匂いが漂う様な裏通りや路地が好きだ。先日、茅場町のそんな地味な路地裏を歩いていたら、「てんぷら みかわ」と書かれた暖簾が目に入った。路地を外から眺めただけでは、そこにてんぷら屋があるとはとても思えないし、足を踏み入れてもぼんやりしていたら通り過ぎただろう。しもた屋風の地味な入口だ。

 上を見上げると、陶器でできているらしい、「みかわ」と彫られた看板が掲げてあった。どことなく尋常でない「空気」をにじませていた。この時はすでに食後だったので、横目で通り過ぎたのだが、「ここは近いうちに是非来てみよう」と強く決心させるものがあった。

からりと上品

 期待とわずかな緊張感を抱えてそろりと暖簾をくぐる。板場をカギの手に囲む9席のカウンターは4席が埋まっていた。職人の手元が見える一番端の特等席はすでに人がいる。もう一方の端でビールのコップを片手にてんぷらを食している初老の紳士の隣に案内された。右手には小上がりの座敷がある。

 天丼もあったが定食を頼む。まずご飯とアサリの赤だし、お新香、おろしの入った小鉢が出される。追いかけるようにエビ2尾がカウンターの向こうからスッと置かれる。薄い衣でカラリと揚がっている。1尾は塩で1尾はつゆで食す。しつこさというものがない上品な仕上がりだ。当方の食べるペースを見計らいつつ、メゴチ、イカ、アナゴ、ナス、ピーマンと続いた。

東京屈指の有名店だった

 「てんぷら屋に行くときは腹をすかして行って、親の敵にでもあったように揚げるそばからかぶりつくようにしてたべなきゃ」、とは池波正太郎さんの言葉。「そうすれば職人も喜ぶしてんぷらもうまい」という。確かに揚げたてがうまいのは真実だが、初めての店であまりガツガツした素振りもどうかな…などとちゅうちょする気持ちもある。なかなか文豪のようには振る舞えない。

 帰ってから気になって調べてみたら、この店は早乙女哲哉氏が「一番良い材料で他所に負けない店を」と1976年に開店、一代で東京屈指のてんぷら屋にそだてた有名店だった。現在は温厚そうな2代目の具視さん(36)が厨房に、その奥さんが店に立っている。路地裏の名店とはこんな店を言うのだろう。

素材の良さが全て

 ところで江戸の“郷土料理”的なものの代表といえば寿司、蕎麦、てんぷらだろう。いずれも屋台の庶民的な食い物として始まったが、いつの間にかみんな出世してうんちくまでが語られ、ある種芸術品か嗜好品にまでなってしまった面もある。しかし寿司は回転寿司等の出現で再び庶民的な食べ物として隆盛を極めている。蕎麦屋もいうまでもなくどこにでもある。

 では、なぜてんぷらの専門店は増えないのだろう。常々疑問に思っていた。2代目の推論はこうだ。技術はもちろんだが「本当にうまいてんぷらは素材の良さに尽きる。素材をしめたり漬けたりの仕事をしないので、とにかく素材の鮮度と良さが決定的だ。したがってある程度継続して繁盛しないとてんぷら屋は、やっていけない」、という。

 「ここのてんぷらは絶品だよ。器もいいし、材料の仕込みから下ごしらえまで細かいところを手抜きしない。この席に週に1回座るのが楽しみ」という、隣にいた65歳になる初老の紳士。こんな風景がよく似合う店だ。

【お店データ】

店名 みかわ

中央区日本橋茅場町3−4−7 〈地図〉 03−3664−9843

営業:〔平日〕午前11時30分〜午後1時30分、午後5時〜午後9時30分(日祝9時)

水曜休み

<本日食したランチ>

定食 1200円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 心身のリフレッシュに週2、3回スポーツジム通い。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀界隈の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。時には温泉泊まりの輪行で古い街道を走ったり峠を越えたりも。元大手マスコミに勤務、不規則で不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。身長175センチ、A型。

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