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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

東京ラーメンここにあり 銀座「萬福」

2011年9月27日

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80余年の歴史

 ここの店のラーメンの歴史は古い。初代が大正時代に屋台の支那蕎麦から始め、昭和4年(1929年)に銀座2丁目のこの角地に店を構えた。(確かに昔は支那蕎麦といった)。以来80余年、昭和の歴史は店の歴史でもあった。

 当初はカレーやカツなどの洋食も出す店だったが、いつか中華中心のメニューとなった。それでも昔洋食を出していた名残がただ1品残っている。ポークライス830円というケチャップ味の焼き飯だ。食したことはないが、昔懐かしい味がするに違いない。

創業当時のままの味

 この日はメニューの1番にあったラーメンを頼む。濁りのない黒々とした醤油スープの中に、細めの麺が静かに沈んでいる。上にはチャーシュー、赤い渦巻のなると、メンマ、青菜、卵焼きがそれぞれつつましやかに並んでいる。昔の定番「トッピング」だ。

 麺は特注品で細身ながらモチモチした食感。スープは創業当時からのレシピを忠実に守っているし、具も当時と変わらない。東京でラーメンが広く食されるようになった頃の味そのものと言える。言い換えれば正統「東京ラーメン」といったところだろうか。

たまに食すとホッとする

 しつこくなくあっさりしていて素朴な味わいで胃にも優しそうだ。単品では頼りなさそうだったので、770円の大盛り(普通は650円)を頼んだのだが、素直に腹に収まりもたれることもなかった。

 味噌とか豚骨スープとか、最近のラーメンの流れは味がより個性的で濃厚な方向へ向かっている。食べ物も時代の嗜好に合わせて変化してゆくのだから、それはそれで当然。だが、たまにこんなあっさりラーメンを食すと、少しホッとする。雑事に忙殺されて疲れた時、久しぶりに訪ねた地方で心安らぐ風景に出会った時のような気分だ。

 現在は3代目の久保英恭さん(45)が仕切っているが、店内には尊敬する初代の写真が張ってある。「おじいちゃんは休みなしで朝から夜中の2時まで働き、亡くなる2年前の85歳まで店に出ていました。とてもかないません」と久保さん。「明治人の頑張り」を体現するような人だったらしい。

 ずっとその背中を見てきた久保さんの言葉の端々には、祖父への尊敬と懐かしさがにじんでいるように感じられた。私もできればこのおじいちゃんが店に出ているうちに行ってみたかった。

メニューの簡潔な口上

 メニューに面白い口上が書いてあったので、カタカナをひらがなに直すだけで、そのまま転記しておこう。私の駄文よりこの一文のほうがよほど雄弁簡潔にこの店を語っているのかもしれない。

 平素は毎度ご贔屓頂き誠に有難う御座居ます。當店大正年間支那蕎麦屋臺として創業し、昭和四年此の地にて店舗を構えてより今日迄、空襲の戦火にも焼残り、一貫して創業当時の味を守り提供致して参りましたが、店舗老朽化の為、建替相成り、御陰様にて平成十五年三月吉日営業再開致す運と相成りました。今後共一層の精進致す所存なれば皆々様の変わらぬ御愛顧の程宜しく相願上仕ります。御客様各位。 店主敬白

【お店データ】

店名 萬福

中央区銀座2−13−13 〈地図〉 03−3541−7210

営業:〔月―木〕午前11時〜午後11時

〔金〕午前11時〜午後11時30分

〔土〕午前11時〜午後10時30分

日祝休み

<本日食したランチ>

ラーメン大盛り 770円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 心身のリフレッシュに週2、3回スポーツジム通い。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀界隈の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。時には温泉泊まりの輪行で古い街道を走ったり峠を越えたりも。元大手マスコミに勤務、不規則で不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。身長175センチ、A型。

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