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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

東京でみそかつを食す 銀座「矢場とん」

2011年10月4日

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名古屋独特の食文化

 それぞれの土地に独特の食べ物があるが、中京圏のそれは時に凡人の想像力を超えたものがある。鰻を茶漬けで食すひつまぶし、あんかけスパゲティ、てんむす、みそかつ…。いずれも取り合わせの妙と言えるのだろうが、関東育ちには考えも及ばない。

 ひつまぶしだけは20年くらい前に初めて名古屋で食し、その美味に驚いた。最近は東京でも見かけるようになった。しかし、そのほかは食したことがなかった。といったところで、先日銀座で「みそかつ」の文字に気が付いた。好奇心と道連れで入ってみた。

味を支配する赤味噌

 まずは直球勝負で、シンプルなロースとんかつ定食1155円(単品735円)を注文。かつは千切りキャベツに片身をあずけ、焦げ茶色のみそだれがかかっている。濃い感じだ。恐る恐るほおばってみる。矛盾するような表現だが、衣はカラリとしていてフンワリしている。「良い肉はたたかなくてもうまいので、当店はたたかない」と自慢するだけあって、確かに肉は柔らかくうまい。

 味はといえば甘みの強いみその味が、独裁者のように風味を支配している。しかし想像していたほどの違和感はない。いかにもご飯に合いそうで一度食したらこの味は忘れられないだろう。癖になって再訪するか、あるいはそうでないか好みがはっきり分かれるところだ。食しつつみそ、しょうゆという優れた調味料は守備範囲が広いことに改めて感心する。

不安と共に東京進出

 昭和20年代の初頭、ある屋台で串カツを食べていた客が、みそ仕立ての「どて鍋」に串カツを浸して食し「うまい」と叫んだという。それを見て「みそかつ」を考案したのが矢場とんの初代店主となる鈴木義夫さん。鈴木さんは同22年に矢場町の地名をとって南大津通四丁目に「矢場のとんかつ」として創業した、と店の歴史に書かれている。

 ここで思う。凡人は、うまいと思っても「今度家でもそうやって食してみよう」と考える程度。それを「商売に」と考えるかどうかが分かれ道なのだろう。「東京、それも銀座でみそかつが受け入れられるかどうか心配しつつ」進出したのは2004年。高校生のアルバイト当時から16年、矢場とん一筋というサブチーフシェフの坂部さん(34)によれば、常連もでき「大分認知されてきた」という。

 2階への階段の壁に「カンボジア便り」という壁新聞がたくさん貼ってあった。従業員がまかない1食ごとに100円を払い、会社の分と合わせてカンボジアへ学校を寄付し学用品や衣類などを援助しているのだという。立ち止まってしばらく読んでしまった。

カエサルの慧眼

 店は東京屈指の老舗寿司屋「二葉鮨」の並びにあった。7年ほど前からあった計算だから店の前はずいぶん通ったはずだが、記憶としては残っていなかった。視界には入っていたが「見て」はいなかったのだ。たとえばある風景を写真に撮ってプリントしてみたら、前景に映っている電線がひどく邪魔だった、などということはしばしば経験する。

 「ひっきょう、人は見ようとするものしか見ない」と喝破したのはカエサルだった。カエサルがこの言葉を使ったのは深淵な意味だったのだろうが、単純な視覚での経験も同じ心理作用なのだろうか。

【お店データ】

店名 矢場とん

中央区銀座4−10−14 〈地図〉 03−3546−8810

営業:〔平日〕午前11時〜午後10時

月曜休

<本日食したランチ>

ロースとんかつ定食 1155円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 心身のリフレッシュに週2、3回スポーツジム通い。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀界隈の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。時には温泉泊まりの輪行で古い街道を走ったり峠を越えたりも。元大手マスコミに勤務、不規則で不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。身長175センチ、A型。

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