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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

文明開化の味は550円 日本橋「精養軒カレーハウス」

2011年10月25日

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裏通りの小さなハウス

 日本橋三越の向かい、中央通りから1本はいった裏通り、数台止められる駐車場の片隅のプレハブの簡易小屋風の店である。屋根は目立つ緑色なのだが、大きな通りからは見え難いところにある。

 デパートの近くで、周辺は飲食店が密集する界隈だが、店のあるあたりは死角になっていて買い物客がふらりと立ち寄るようなロケーションではない。本当にこの質素な店があの精養軒なのだろうかと、入る前にしばらく立ち止まって眺めてしまった。客は常連である近隣の勤め人がほとんどとみえる。

 店内に入るとまず食券を買う。狭い店内はコの字型のカウンターに丸いスツールが11個。中にはおばちゃんが二人。券を渡すと金属の皿に盛られたカレーがあっという間に出てくる。

家庭的なポーク味

 ねっとりしたコクのある甘さが、いかにも日本のカレー的な味わいだ。しかし食べ進めるうちに一呼吸おいて、若干のピリリとした辛さもある。要するに子供のころから食べ慣れた懐かしい洋食屋のカレーだ。説明書きは特にないがポークだ。カレーライスは550円、ハヤシライスが700円、もう100円出せばご飯を大盛りにしてくれる。

 いつの間にか見かけなくなった、今は懐かしい小さなラジカセが窓際に置いてある。そこから流れる音楽を聴きながら黙々と食す。談笑するとかくつろぐとかはこの店に似合わない。この店では、さっと食してさっと立つのがスマートに見える。カレーの立ち食い的な感覚とでもいえばよいのだろうか。昼飯時は行列ができるらしいが、おばちゃんたちの手際もよく回転が速そうなので、思ったより待ち時間は少ないかもしれない。

鹿鳴館の時代から

 精養軒といえば、日本の文明開化の歴史と切り離せない。明治5年(1872年)フランス料理の店として築地に創業、同9年に上野に店を構えて今に至る。鹿鳴館時代はもちろん、内外の国賓・貴賓の交歓の場として利用されてきた老舗中の老舗レストランだ。シンボルマークの馬車の図柄が歴史を感じさせる。

 昨今はレストランンも多様化し細分化されたが、一定の年配以上の人にとっては精養軒といえば、レストランの代名詞のようでもあったらしい。私の身近に居た人など、都心に行くこともほとんどなくなった晩年、カレーを目にすると「精養軒のカレーが懐かしい」と、誰にいうともなく小声でつぶやいていた。

落差の面白さ

 そんな老舗が、路地裏の駐車場のわきに立ち食いのようなカレー屋を開いていると小耳にはさんだ時は、名をかたった似て非なるまがい物商法ではないかと疑ったくらいだ。しかし看板の文字もシンボルの図柄も本物のそれだった。カレーのレシピは店ごとに変えているというが、私には他の系列店のそれと同じように思えた。

 同じブロックの中央通りに面したビルの9階には、折り目正しいレストランを持っている。そのビルの裏側の駐車場の質素なカレーハウス。その落差がなんだかおもしろい。なんたって550円で老舗のカレーだ。しかも朝7時30分から開いている。

【お店データ】

店名 上野精養軒 日本橋カレーハウス

中央区日本橋室町1−5−3 〈地図〉 03−3241−2741

営業:〔平日〕午前7時30分〜午後2時30分

   :〔土曜〕午前11時〜午後2時30分

日祝休み

<本日食したランチ>

カレーライス 550円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 心身のリフレッシュに週2、3回スポーツジム通い。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀界隈の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。時には温泉泊まりの輪行で古い街道を走ったり峠を越えたりも。元大手マスコミに勤務、不規則で不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。身長175センチ、A型。

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