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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

老舗の名物はコロッケそば 銀座「よし田」

2011年12月6日

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創業は明治18年

 よし田の有名な一品はコロッケそばだ。かけの上に直径7〜8センチくらいだろうか、十文字に切れ目の入ったコロッケが乗っている。コロッケといってもジャガイモや豚肉を使ったそれではない。鶏肉をひいて山芋と卵をつなぎにつくねのように仕上げ、それを揚げたもの。

 ふわりと柔らかく、噛むほどに鶏肉の旨味がにじみ出てくる。しかし蕎麦の味の邪魔はしない。この店の創業は明治18年(1885年)。「よしだ」というのは東京でも蕎麦屋の古い暖簾の一つで、浜町にあった「吉田」の流れだという。ただ浜町の店は今はなく、暖簾とコロッケが銀座のこの店に残っているということらしい。

昔懐かしい空間+

 静岡県島田市の自家製粉所で作ったそば粉を店で製麺している蕎麦は、こしがしっかりしていて、かけにしても完食するまで同じような歯応えだった。つゆは江戸前で、出汁は昆布のほか、鰹節など数種類を使ってとっている。時代に合わせて現代風に変わってきたのだろう、あまりからくなくさっぱりしている。

 通りから戸をあけて入ると、70席というほの暗い濃厚な昭和的空間が広がっている。どこの町にもあったような昔懐かしい蕎麦屋だ。使い込まれた店内に出汁の香りが漂い、雰囲気も接客も価格もすべてが庶民的で、肩ひじを張らないで済む空間。よし田はそんな古き良き蕎麦屋のすべてを濃厚に残している。もりとかけは500円。超高級な飲食店からこうした店までがある銀座は懐が深い。

昼下がりの酒が似合う店

 ウイークデーの昼下がり、おねえさんに「熱燗!」と頼む声や、「(キープしてある)焼酎出して。蕎麦でなくお湯で」などと、昼の蕎麦屋で最近は聞かなくなった声が聞こえる。その隣では中年のご婦人が一人で文庫本を読みながら静かに蕎麦を食していた。そんな風景が違和感なくおさまっている。2階3階は座敷になっている。

 コロッケ蕎麦を食し終わり、フト後ろの壁を見たら古びた短冊が無造作にかけてあった。達筆で読みにくいのだが、「日に一度 そば食う癖の 柳かな 章太郎」と読めた。花柳章太郎の作らしい。この店をひいきにする文人や粋人も多かったと聞いているが、そんな歴史を垣間見る思いだ。

真っ黒な“招き猫”

 「吾輩は猫である」の猫は黒猫である。野良だった猫が夏目家に飼われるまでのいきさつは鏡子夫人の「漱石の思い出」に書いてある。出入りの某が「全身足の爪まで黒い猫は福猫だ、縁起がいい」といったので飼うことになったという。余談だが、鏡子夫人はいろんな作品から類推すると、かなりの“御幣担ぎ”だったらしい。

 ところで、この店の入り口わきでは真っ黒な猫が“招き猫”をしている。クロチィと呼ぶのだが、眼光鋭く客を見定めるなかなかのハンサム君だ。これも元は野良で、ここで飼われて7年余になる。界隈に親類縁者(縁猫か?)がいるが、深い付き合いはないらしい。いつも入り口で番をしているわけではない。気が向かないと書き入れ時でも職場放棄をして、店内の段ボールの家で寝てしまう。あ、そうそう、クロチィが来てから一段と繁盛したかどうか女将さんに聞こうと思っていたが聞き忘れた。

【お店データ】

店名 よし田

中央区銀座7−7−8 〈地図〉 03−3571−0526

営業:〔月〜金〕午前11時30分〜午後10時(LO9時30分)

   :〔土祝〕午前11時30分〜午後9時(LO8時30分)

日曜休み

<本日食したランチ>

コロッケそば 1000円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 心身のリフレッシュに週2、3回スポーツジム通い。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀界隈の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。時には温泉泊まりの輪行で古い街道を走ったり峠を越えたりも。元大手マスコミに勤務、不規則で不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。身長175センチ、A型。

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