
2008年12月19日
トロ握りを考案の店
創業明治12年。江戸前寿司の老舗で、東京でも屈指の有名店。なんといっても関東大震災までは魚河岸があった日本橋。そこの老舗というのだから筋が通っている。江戸前寿司の総本山と称する人もいる。とりわけこの寿司屋を有名にしたのは、トロ握りを考案したこと。それまでは油が多く始末に困って棄てていたまぐろの腹側の脂身を、二代目が握って出したところ、評判が良かった。脂身だから「アブ」とよんでいたが、語呂が悪い。ある人が「とろっとしてるからトロでどうか」と命名し、それが広く現在に及んでいるという。これは親方も少しテレながら肯定するエピソード。
表にメニューがあるわけでなく、初めて入るには少し気合がいるだろう。店内は左側につけ場を囲むようにL字型にカウンター席10人分。右手は4人がけのテーブルが4個、さらに壁際にこ上がりの座敷があり4人のがけの座卓2個。寿司屋としては比較的大きな店だ。その店内が昼も夜もいつもほぼ一杯になっている。
カウンターの真ん中
通されたのはカウンターの真ん中。店内にも品書きが張ってあるわけではない。「おまかせでランチをお願いします」、「握りですか、ちらしですか」、「握りでお願いします」。もちろん、黙ってしばらくすればおねえさんが品書きを出してくれるが、目標が決まっていればそれを待つまでもない。
寿司屋ではカウンターのどこの席に通されるか、つまり親方の正面かどうかが通人は気になるらしい。おおむねそれはカウンターの真ん中あたりだという。世間には、カウンターでは「職人と客の真剣勝負」などという文章を書く、すしを究めた通人もある。が、昼間はそうした緊張感も席の“序列”もなさそうなのが有難い。玉次郎の寿司をにぎったのは右端の若い人だった。
江戸前のスタンダード
前置きが長くなってしまったが、寿司のこと。やや硬めで人肌のシャリに、上品にネタが乗っている。マグロなどは、どんなしごとがしてあるのか知らないが見事なつやだ。丁度良い大きさのそれを一口にほおばると、ふっとほどける酢めしとネタが良い塩梅に調和する。これはネタ、米、炊き加減、すし酢、適度なぬくもり、握り加減、を含めた総合的なものだろう。
と、生意気に言ってみても、寿司の薀蓄について多くを語る舌も知識もない。単純に自分にとってうまいかそうでないか、というのが基本。ただ、ここの寿司がある意味伝統的な江戸前のスタンダードと理解し、他の寿司を食べるときの物差しにしている。もちろん価格や店の雰囲気も合わせて。
余裕の年配客が多い
杖をついた一人客の老婦人もいれば、年配の夫婦らしき客もいた。我輩の両サイドの先客のおやじなどは、それぞれゆっくりとビールを飲みながらつまんでいた。我輩が出る時もまだ悠然としていた。推測するに毎日が日曜日なのだろう。うらやましい。いずれにしても有名店ではありながら、夜も含めてまっとうな寿司をまっとうな価格で食べられる貴重な店の一つ。京橋に生息するおやじとしてはメモ帳から外せない。昼の品書きは、にぎり2種類1575円と2100円、同大2310円と3150円、とろにぎり4200円、ちらし1575円、同大2310円、鉄火重2100円、太巻1050円、赤だし210円。
吉野鮨本店
東京都中央区日本橋3−8−11〈地図〉 03−3274−3001
営業時間:午前11時〜午後2時(日休み)、午後4時30分〜午後9時30分(土日祝休み)
<本日食したランチ>
にぎり 1575円

1946年生まれ。週2、3回のジム通いで運動不足を解消。ウエストが5センチほど細くなり、昼の焼肉・トンカツにも食指が動くようになった。過去30余年の不規則な記者生活から解放された。昼めし散策のほか、通勤時の読書と休日のサイクリングが楽しみ。元大手マスコミ勤務のA型。身長175センチ。
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