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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

穴子の専門店 日本橋「玉ゐ」

2009年8月18日

  • 筆者 京橋玉次郎

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人に言えぬ悩み

 品書きを前に人知れず悩むことがある。たとえばこの店、看板料理の蒲焼の箱めしは小箱1600円、中箱2800円、大箱3800円とある。小箱では少々けちけちしている様でいじましくはなかろうか。かといって大箱では昼飯としては少々高過ぎる。結局中箱を頼むのだが、それに至るまでの心中の葛藤だ。時間にすればわずかなのだが、そんないじましいことをあれこれ考えてしまう。

 寿司屋などではこうした葛藤は一段と悩ましくなる。こんなことに悩むのは私だけなのだろうか。ひるがえってみれば、意識して無難な道を選んだわけではないが、結果として劇的な場面もなく、当たり障りもないままに過ぎてきた我が来し方も、こうした性分のなせる結果だったのだろうか。

焼くか煮るか

 話がそれてしまった。アナゴに戻ろう。香ばしい「焼上げ」か、ふんわりとした「煮上げ」かのどちらかを選ぶようになっている。「うーむ」と迷っていたら、「両方を半分ずつ並べることが出来ます」という。それなら迷わなくていい。食べ方は、まずわさびを載せて食し、次に薬味のねぎやすりおろしてある柚子を載せて、最後にだし汁でお茶漬け風に。これは名古屋発祥の「ひつまぶし」とまったく同じ食べ方だ。茶漬け用のだし汁はプラス200円。

 手前側の焼上げの穴子から箸をつける。香ばしそうな焼き色を裏切るようなやわやわと柔らかいそれを、タレの沁みたご飯と共にほおばる。溶けるような歯触りだ。しつこさがなくあっさりしていている。ウナギに比べ脂肪が少ないからだろう。タレは甘みが強い。

味のある建物

 薬味で3分の2ほど食べ進んだところで声をかけ、熱いだし汁をもらう。「一度に作るとご飯がふやけます」という忠告を受け、少しずつ椀に移して茶漬けとしてさらさらと食す。まことにあっさりしている。ウナギの濃厚さが好きでアナゴにはあまり食指が動かなかったが、たまには悪くない。

 昭和の匂いを色濃く発散する建物。通るたびに気にかかっていた。昭和28年築の酒屋の家屋をそのまま利用している。老舗の雰囲気を漂わせているが、実は2005年6月の創業。つまり4年前のことだ。全体のデザインをした人が手練なのだろう。オーナーの玉井から「玉ゐ」を店名とした小技も冴えている。店はカウンター6人、テーブル20人。昼時はよく行列を見かける。

天然もの信仰

 店のPRでは「アナゴはすべて江戸前か常磐産などの天然もの」とある。アナゴの養殖は研究されてはいるが、まだ軌道には乗っていないそうだ。魚の世界では海水、淡水を問わず思いがけないものまでが養殖されている。ふぐなどは養殖のおかげである程度リーズナブルなものが出回るようになったと聞く。

 しかし、技術がすすんでも、ふぐさしなどは天然ものにかなわないという。ではあるが、無条件に天然ものを信奉するのも上策ではなかろう。要は旨くて安全なことが大事。さらにそれが低コストなら言うことはない。むしろ資源小国に住む身としては、総じて養殖は歓迎すべきことなのだろう。

【お店データ】

玉ゐ

東京都中央区日本橋2−9−9〈地図〉 03−3272−3227

営業:〔平日〕午前11時〜午後2時、午後5時〜午後11時30分〔土日祝〕午前11時30分〜午後3時、午後4時30分〜午後8時30分

<本日食したランチ>

箱めし中箱 2800円+出汁つゆ200円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

1946年生まれ。週2、3回のジム通いで運動不足を解消。ウエストが5センチほど細くなり、昼の焼肉・トンカツにも食指が動くようになった。過去30余年の不規則な記者生活から解放された。昼めし散策のほか、通勤時の読書と休日のサイクリングが楽しみ。元大手マスコミ勤務のA型。身長175センチ。

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