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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

城下町の老舗うなぎ 小田原「柏又」

2009年9月29日

  • 筆者 京橋玉次郎

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ペダルをこいで

 数少ない趣味の一つに、気候の良い日のサイクリングがある。自宅を出て江ノ島、茅ヶ崎、大磯と湘南海岸を走り小田原まで行くと50kmちょっとになる。往復して100km余。私の場合、自転車は移動手段ではなく身体との対話。運動不足解消と少々がんばった心地よさが気分転換にちょうど良い。

 数年前のこと、そんな小田原で昼飯を食そうとお堀の近くを物色していたら、いかにも風雪を感じさせる建物とうなぎという文字が見えた。心のひだにすっと入ってくるような味わい深い家屋と好物のうなぎ、とても通り過ぎることは出来なかった。サイクリング用の異な格好で気が引けたが、それで良いというのでいそいそと敷居をくぐった。以来時々立ち寄る。

やわらかくさっぱり

 壁に一わたり品書きが貼ってある。うな重は上重2800、梅3300、竹3800、松4300とある。強気の設定だ。上重2800を選択。注文を聞いてから裂いたわけではなかろうが、ゆっくりと待つ。十分に蒸してあるらしく、出てきたウナギは柔らかい。一口含む。大層柔らかくはあるが、かといって油が抜け過ぎて味が落ちているわけではない。全く好みの問題なのだが、私としてはもう少し手ごたえがあってもよい。

 タレはさっぱりしている。もう少し濃くてもよいかな、というのはこれも勝手な感想。この店のうなぎを食すときは、いつも数時間それなりの運動した後なので、味覚的に普段と違っているかもしれない。したがって判断にあまり自信は無い。これが長く続いているこの店の特徴としての味なのだろう。

近衛文麿もひいき

 パンフレットにあったコピーは「城下の堀端で百余年」。女将に聞けば今の親方が5代目、創業130年。ひいきにした著名人も多かったようだ。本館の玄関正面には「鰻」としたためた近衛文麿の色紙が飾ってある。少しかすれ丸みを帯びた字面はいかにもうなぎにふさわしい。興津の別荘の西園寺公望をたずねた帰りでもあったか、あるいは箱根への遊山の道中でもあったか、などと空想は広がる。そのほか菊池寛などもひいきにしたほか、最近では福田赳夫の色紙などもある。

 著名人がひいきにしたから無条件で旨いというものでもなかろうが、ものを食するということは食材そのものだけでなく、付帯する様々な情報も味付けのうちと思っている。そうした意味で、小田原にサイクリングで出かけると時々この店に寄る。店の名前は「かしまた」と読み、法事などにもよく利用されているようだ。

味わい深い城下町

 小田原は関東の雄・北条氏の拠点、秀吉に降伏するまでは日本屈指、東日本では最大の巨大城郭都市であった。東海道の要所であり、幕府は徳川の譜代大名を城主としておいた。東京に近いという微妙な位置にあり、観光地として際立った個性というものを探すのは難しい。しかしそのことが幸いしたのか、街は変に観光地ずれした上ずったところが無い。きれいに残っている城跡や堀などと違和感なく融合している。地味だが味わい深く、好きな町のひとつだ。

【お店データ】

柏又(かしまた)

神奈川県小田原市本町1−9−35〈地図〉 0465−22−0267〜8

営業:午前11時 ̄午後3時、午後4時30分〜午後8時 〔定休〕木曜、第3週は水木連休

<本日食したランチ>

上重 2800円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

1946年生まれ。週2、3回のジム通いで運動不足を解消。ウエストが5センチほど細くなり、昼の焼肉・トンカツにも食指が動くようになった。過去30余年の不規則な記者生活から解放された。昼めし散策のほか、通勤時の読書と休日のサイクリングが楽しみ。元大手マスコミ勤務のA型。身長175センチ。

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