2011年12月26日
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イスラエルから小包が届いた。エルサレムの観光ガイド・キョーコさんからだった。角張ったヘブライ語の飛んだ箱を開ける。わぁ、甘い香り。メールで「ハーブティーをおすそ分けしたい」と言われていた。わざわざ申し訳ない。でも好奇心が勝った。イスラエルのお茶、どんな香りだろう。住所を告げた。本当に10日後、やってきた。
小さなカードが入っていた。「チカちゃーん」。いつものメールの書き出しと同じだった。うれしい。ドライフルーツは小さいサイコロ状で、宝石みたい。パウンドケーキに入れるのによさそうだけれど、お湯を注いで飲むという。カップの底に沈んだ実はもちろん食べられる。お茶としていただくなんて考えなかった。面白い。
さっそく試した。ほんのり甘い。キョーコさんによると、砂糖がフルーツにまぶしてあるとのことだった。イスラエル最大の湖・ガリラヤ湖の南西部にある農場の店で買ったという。近郊のゴラン高原の物産も扱っているらしい。まだ見ぬ土地とキョーコさんに思いをはせる。「遠い国に感じるかもしれませんが、来てしまえば、インドより簡単だと思いますよ。ケイちゃんを連れてぜひどうぞ。イスラエルはヨーロッパと違ってレストランも子どもOKですから」。そうなんだ。本気にする。行こう。
小包を受け取ったのと同じ日、レバノンからメールが届いた。イラクで復興プロジェクトに従事するカツアキさんだった。休暇で来ていること、冷凍マグロの刺身を買ってバグダッドに戻り、正月を迎えること…。「ゴラン高原方面の雪景色がきれいです」。あぁ、キョーコさんも書いたゴラン高原を、カツアキさんも眺めているんだな。不思議だな。当人同士は知らないことだけれど、水の流れのように、世界が、人が、つながっている。バグダッドは難しいが、カツアキさんにも会いたい。来月の帰国でぜひ。約束した。
カナダのアキノさんからクリスマスカードが今年も届いた。彼女が4年ぶりに帰国した今年2月、京都まで会いに来てくれた。写真も同封されていた。アキノさんと、お腹も顔もふくらんだ妊婦の私が笑っている。なつかしい。まだ1年たっていないのに。
クリスマスプレゼントのような再会にも恵まれた。「あさって、東京行くんですよ!」電話の主はKFB福島放送の笠置わか菜アナウンサーだった。震災がらみの写真展を見に来るという。日帰りというのに連絡してくれたんだ。神楽坂のカフェで会った。福島・会津地方や彼女の故郷・香川を案内してもらって以来、2年ぶりだった。
お土産をもらった。黒糖まんじゅうに会津塗の赤ちゃん用スプーンとフォーク、それに小瓶を渡された。何だろう。「あれですよ、アレ!」わか菜さんがじれったそうに言った。すっかり忘れていた。香川・小豆島で2年前、一緒に収穫したオリーブからとれたオイルだった。ちょっと手伝っただけで貴重な一瓶をくれるなんて。
レシピ本を出したほど料理上手な彼女からの年始メールにはこうあった。「今年は福島の全市町村、それぞれ一家族にお邪魔し、その家の味を教えてもらう旅に出ようかなと思っています」。震災で一変したのは明らかだった。何から聞いていいのやら…。
よく頑張ったね。母親のような気分になる。忙しいのによく声をかけてくれたね。わか菜さんはカフェオレを手に笑った。「チカコサンの教えですよ、ご縁が2つ重なったらゴー、って」。そうだった。
別れ際に彼女が言った。「私が取材から手がけた番組、ぜひ見てください」。ドキュメンタリー「テレメンタリー2011 母親たちの選択 放射線に引き裂かれた暮らし」だった。動画サイトで観た。わか菜さんの落ち着いたナレーションに涙が止まらなくなった。また福島に行こう。新刊「パリのおやつ旅のおやつ」のPRも兼ねれば、ほら、縁が2つになる。「じゃあ、次は郡山で!」手を振って飯田橋駅で別れた。
出会いの数々、本当に宝物だ。「論より、おやつ。」は2007年4月、スタートした。アスパラクラブにあったコラム「パリ砂糖漬け」から含めると6年半になる。会社を辞めてパリに2年、製菓留学して帰国。京都にアトリエを構えて3年で閉じ、いまは東京にいる。旅した国・地域を数えてみる。フランス、イタリア、オランダ、ドイツ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア、インド、香港、台湾、ドバイ、チェコ、シンガポール、ブータン…。15ほどになるような。どこか忘れているような気もするが。
場所とともに暮らしも変わった。34歳、単身でパリに渡ったのが、39歳で2人になり、41歳のいま3人になった。コラムを読んで英領バミューダから京都まで会いに来てくれたミノリさんとの縁が数珠つなぎになった。本当に人生分からない。いまだにふと、夢か幻じゃないかと思う。私が赤子を抱いているなんて。
生後3カ月のケイと9月、パリ取材に10日ほど出かけた。東京の部屋に帰った日、ちゃぶ台の上に置き手紙があった。「おかえりなさい!! また一緒に、がんぼろう ゆう」。相棒ユウさんだった。プッ。下手な字だな。よく見ると「な」には点がない。おまけに「がんばろう」と書きたかったのだろうが、どう見ても「がんぼろう」になっていた。何じゃいな。本当に日本生まれかいな。「だって急いで書いたから…」。それでもふつう、間違えないだろうに。
ガンボロー、か。口に出してみた。おかしくてトホホな感じがして、でも不思議と元気が出る。気に入った。冷蔵庫に張った。先は分からないけれど、ガンボロー。声に時々、出している。
コラムを読み続けてくださったみなさま、ありがとうを1000回言います。おかげさまで改稿して新刊「パリのおやつ旅のおやつ」にまとめることができました。ぜひお手元においてくださったらうれしいです。もちろん、おやつを巡る旅と書く活動はずっと続けます。コラムの漂流先は決まっていないのがトホホではありますが…。でもガンボロー! こぶしをかためて三唱しつつ、トホホ人生を頑張ってまいります。モリモリおやつをほおばりながら。
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「論より、おやつ。」は、今週で最終回となります。長らくのご愛読ありがとうございました。

おやつ記者。1970年、岡山生まれ。岡山大学法学部卒。朝日新聞記者として12年余、新潟・福山・大阪・福岡で働く。2005年、フリー。パリ製菓留学をへてアトリエ「おやつ新報」主宰。

著書としてレシピ&おはなし集「おやつ新報へ、ようこそ。」(エンターブレイン、税込1680円)、パリ滞在をつづったエッセー「パリ砂糖漬けの日々」(文藝春秋、税込1800円)が発売中です。
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