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コラム「論より、おやつ。」

ごま入りラングドシャ

2007年04月23日

 ひいきの新潟・中越高校野球部の春合宿に行った。新人ダメ記者時代に甲子園まで取材した縁が続いている。グレーのユニフォームを見れば、13年前の歓声が遠鳴りする。しみじみしていたら部長のトガワ先生が言った。「ではタダチカコさんから一言」。えーっ。断れず、おずおず進み出た。丸刈り頭の40人を前に昔話をする。「というわけで甲子園はいいところなので、ぜーったい出てくださいっ」。力んだ酔っ払いみたい。ホンダ監督は「いや感動しましたよ」となぐさめてくれたが。

写真すりゴマ入りのラングドシャ。ネコの足跡つき

 人前に出るのはドキドキする。朝日カルチャーセンター神戸で28日、お菓子の話をするのに大丈夫かしらん。1人も来なかったらどうしよう(ぜひお越しください)。おびえつつ、おさらいしようと料理学校のノートを繰る。「猫舌」と書かれたページで手が止まる。なつかしい。同級生だった台湾娘・クリオの字だ。

 猫舌はフランス語で「ラングドシャ」。17世紀からある色白な薄焼きクッキーだ。授業で初めて、クリオの隣に座った日に習った。彼女の手元をのぞくと「猫舌」とキッパリ書いてあった。おお、日本語では「ラングドシャ」と呼ぶけれど、確かにネコの舌だわ。達筆の字を指さすと、クリオはニヤッとして私のノートに落書きした。

 作り方は簡単だ。卵白と粉と砂糖を混ぜて絞り出す。人さし指ぐらいの大きさで、まっすぐ。簡単なようでうまく絞れない。「アッカンベー」型になったり、焼いている間にくっついて「二枚舌」になったり。曲がって「巻き舌」になったのもあった。シェフの採点前に、ブサイクな舌は消えてもらわねば。焼きたての、まだ柔らかいのをつまむ。よく食べるねとクリオに笑われた。

 家族旅行で京都に来たクリオと会った。彼女は台北で評判の洋菓子店「小法国」の職人になっていた。「マダーム」と呼び合い、地図を片手に四条通を歩く。あやしいフランス語で話すアジア系コンビ、何者に見えるかな。喫茶店に入ると英語の品書きが2枚出された。クリオは「2人ともエトランジェール(よそ者)だね」と笑った。私のノートに「猫舌」と落書きしたのは「ゼンゼン、オブリエ」(全然、覚えていない)。お得意の日仏チャンポン語で返された。ま、いいけどね……。

 中越・トガワ先生とは握手して別れた。クリオとは2度ほおを寄せてチュッチュッ、フランス式あいさつをした。夏の甲子園と冬の台北で、また会えますように。

ゴマのラングドシャ

材料(40枚)

  • バター・砂糖・薄力粉 各30グラム
  • 卵白1個分
  • 白すりごま 大さじ1

作り方

  1. 泡立て器でバターをやわらかくし、砂糖を混ぜる。卵白も入れてトロロ状に。
  2. すりごま・粉も加え、なめらかに混ぜる。
  3. 絞り袋につめて天板に小指ほどの長さに絞り出す。間隔は5センチほど開けて。
  4. 180度のオーブンで、ふちがハニワ色になるまで焼く。

プロフィール

多田 千香子(ただ・ちかこ)
おやつ研究家・食ジャーナリスト。1970年、岡山生まれ。岡山大学法学部卒。朝日新聞記者として12年余、新潟・福山・大阪・福岡で働く。2005年、フリー。パリ製菓留学をへて現在、京都在住。個人blogはおやつ新報社
朝日カルチャーセンター神戸大阪京都で食やお菓子に関する講座を担当しています。

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