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紀香の先輩とシュケット2007年06月11日 だれも止めてくれないので買ってしまいました。3回目のコラムで書いたプロ仕様オーブン「プティ・バッケン」。シュー皮がぷっくりふくらんだのを見て一目ぼれ、車1台買えそうな額をはたくはめになった。どうやって払う気だ私……。
オーブンは重量100キロなので、運び入れるのは3人がかりだった。業務用オーブンに慣れた運搬係の男性は「えらい小さいなぁ」。いやいや家庭用からすると60センチ角は大きい。長屋の土間はデコボコなので、慎重に置き場所を選ぶ。水平に置かないと焼きムラができるからだ。ちょうど格子窓から見える位置になった。プティ・バッケンが京都にやってくるのは初めてだとか。「うわ、大きなオーブン」「すごいねぇ」と通りかかりの人が言う。普及したてのころのテレビみたいだ。 試運転すると「ブー」。うわ、びっくり。映画の開演ブザーと同じ大きな音が鳴り響いた。スクリーンどころかテレビもない町家には大げさすぎる。ピーピーという電子音に変えたが、ハンドミキサーを使っていたりすると聞こえない。しかたない、開演ブザーに戻そう。オーブン劇場はじまりはじまり。気分が乗りそう。 がんがん焼いてモトを取らねば。遊びに来てくれたミユキさんを誘って台所に立つ。神戸の女子校で藤原紀香の一つ先輩だった彼女は、紀香ぐらい背が高い美人だ。高校時代はさぞもてたでしょ?ノリカかミユキかと人気を二分したでしょ?しつこく聞くと「いや〜ん!」と恥ずかしがって首を振った。まんざらでもなさそうだ。もっとも風邪でガラガラ声だと「ゲイバーのママ」と呼ばれたそうだ。 ミユキさんからタカラジェンヌ御用達の「宝もなか」を手土産にもらった。かわいい一口サイズの和菓子のお返しに、やはり小さなシュケットを焼こう。直径2センチほどのシュー生地に、あられ糖をまぶして焼く。パリのパン屋ではよくレジのわきにある。量り売りで100グラム2〜3ユーロ(330〜500円)だ。日本ではあまり見かけない。友人の菓子職人いわく「お客さんにクリームが入っていないと言われ」売れないんだそうだ。クリームなしの皮ってしっけていないし、それだけでおいしいんだけどな。 牛乳と水、バターを沸騰させて、粉を一気に加える。「よく練るって、これぐらい?」ミユキさんがゴムベラをまわす。ちょっと心配そうだ。そうそう、頑張って。ふくらまなくても大丈夫、スープかみそ汁の浮き実にすればいい。卵は少しずつ加えてどんどん混ぜる。ポッテリ固めのおカユさんぐらいになったら、おしまい。袋に詰めて天板いっぱいに絞り出す。ミユキさんは親指の先ほどの小粒に絞り、ていねいにあられ糖をのせた。さすがお嬢様は品がいい。30個が行儀よく整列した。天板に乗り切らない分はガスオーブンに入れて焼き比べた。 2人でじーっとオーブンの中をのぞく。「やっぱりバッケンのがよくふくらみますね。同じ生地なのに」とミユキさん。でもガスオーブン製のシュケットだって悪くない。「皮だってバターと卵でできているんだから、それだけでおいしいに決まってますよね」。パクパク、ムシャムシャ。あっというまに2人で30粒を食べてしまった。残った8粒は「ユースケ君に」と、大事そうに夫への土産にした。帰って差し出すと「えぇ、作ったの?」と驚かれたそうだ。あらかた食べてしまった残り物というのは内緒だ。 論より、おやつ。バックナンバー
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