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カバーガール撮影会2007年06月25日 東京駅は雨だった。丸の内南口で舌打ちした。両肩と両手にカバン四つ。12、3種類のヤワな菓子に加え、お皿や瓶に料理用ガスバーナーまでかついできた。計20キロ以上だろう。こわれ物だらけだ。拙著「パリ砂糖漬けの日々」(7月25日配本)の表紙撮影のため、紀尾井町の文藝春秋までタクシーに乗る。早く着いた。広い応接室で胸像の菊池寛に見守られながら、そっと80センチ幅のカバンを開ける。
大丈夫かな。モナカの空き箱に並べたマカロン30個はヒビ割れもせず異常なし。よくぞご無事で。白鳥型のシュークリーム20羽は、そろいもそろって細長い首を右にかしげている。京都から長旅の疲れか新作バレエのポーズか。しっかりして。首に見立てた「し」の字型のシューを、羽にひそんだ生クリームに突き刺し直した。 2階の写真部の部屋に向かう。急ぐものから撮影しよう。迷わずシューを積み上げた工芸菓子「クロカンブッシュ」を選ぶ。飾りのアメがダラーと溶けはじめていたからだ。お立ち台の上にソロソロ運ぶ。カメラを背にどんどん包みを開けていると、カメラマンのカマヤさんが叫んだ。「あぁ!」。クロカンブッシュの頂上にのせたシュー1個が落っこちたのだ。「救助隊出動しますっ」。ガスバーナーを片手にお立ち台に駆け寄り、アメを溶かしてくっつけ直す。 お次は白鳥シューにしよう。小学生のころ初めて作った菓子として本文に登場する。思い入れがあるのに生みの親の心、白鳥知らず。どれも湿気で首がすわっていない。比較的マシな3羽をカメラの前に連れ出した。あれ、装丁担当のノナカさんまで首をかしげている。「うーん、あの子の首が、ちょっと……」。確かに1羽だけカメラ目線にならず、あさっての方向を向いている。「移植手術しますっ」。ごめんねと首を引っこ抜き、別の白鳥の首にすげ替えた。 クレーム・ブリュレも至急だった。カフェオレボウルに卵液を流して表面をカリカリさせたはずが、やわらかくなっている。エッフェル塔の型で抜いたクッキーをのせたら、重さでアーチ部分がめり込みそう。エッフェル塔沈没の危機はカマヤさんがテキパキと撮影してくれて乗り切った。 いつも焼くマドレーヌやバターケーキは頑丈だ。堂々とカメラの前に立つ。なんてよい子たちなんだろう。ステージ・ママの気分だ。私の作るヘナチョコ菓子が晴れ舞台に立っている。なんだか気恥ずかしいが、あんまり美しくても買ったものと思われる。ちょっと不器量ぐらいが愛されるってものだ。女磨きを怠る理由みたいだな。 白いレフ板が倒れてマカロン3個がペシャンコになったり、お皿も足りず文春の給湯室にあるのを借りたり。バタバタと駆け回り、3時間ほどがあっというまだった。ノナカさん、文中イラストを描いてくれるジョウラクさんと撮影後にお菓子をつまむ。ほっ。 菓子10種類が表紙を飾るとはいえ半分は裏表紙で、帯に隠れる菓子もある。さて、目立つ主役の座を射止めるのはどれだろう。ノナカさんにメールで尋ねる。「どの子が、おめがねにかなったでしょうか」。返事が来た。「カバーガールは、ただいま選考中です!」。 プロフィール
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