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コラム「論より、おやつ。」

乳の花アイスパフェ

2007年08月27日

 京都・四条河原町の書店をのぞく。レジで去り際、男性店員にささやかれた。「あの、ついてますよ、ココ」。はっ。口元を指でこする。緑色の切れ端が出てきた。お昼に食べたベトナムうどん・フォーに浮いていた香菜だった。慣れない取材を受けた日も、長身のカメラマンが「ついてますよ、ココ」と指差す。慌てて後ろの窓に向かって「イー」する。口紅が歯についていた。久々に化粧したら濃すぎたか。恥ずかしい。

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リサちゃん(左)に竹サジ作りを教わる

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モエちゃん作・竹サジと乳の花アイスパフェ

 顔から火を噴いてばかりだ。涼しくなりたい。中古のアイスクリームメーカーをもらっていた。嵯峨野のサクライさんちで眠っていた伊デロンギ製だ。使ったのは最初の1シーズンのみだったという。夏は冷凍室がパンパンになる。キャベツ玉ほどある保冷ポットを入れるすき間、ないからなぁ。私も7月に譲り受け、箱を開けていなかった。使い初めしよう。庭造りで余った竹もたくさんある。「竹サジとアイスを手作りする会」を呼びかけると、6人が集まった。

 竹サジ作りは29歳の竹職人・リサちゃんに習う。割った竹は水に1時間ほど浸し、先っちょを小刀でまるく削る。カーブが左右でいびつだが愛敬としよう。彫刻刀で掘ってくぼみを作る。仕上げに紙ヤスリをかける。ネイリストのスミエさんは「爪を磨くのと一緒!」。ていねいに同じ方向に手を動かした。

 30分足らずで形になった。私のは茶さじみたい。たっぷりアイスがすくえるように欲張ったせいだ。中1のモエちゃんが一番上手に、細長いのを2つこしらえた。

 アイスは「糖分控えめ」が条件だった。モエちゃんの父は糖尿病だからだ。フランスの料理本で「乳の花アイス」というのを見つけた。「乳の花」は牛乳のてっぺんにできるクリームのことで、生クリームの別名になる。作り方を読むとギリシャヨーグルトと生クリームに、シロップとレモン汁を混ぜるだけだった。簡単でヘルシーだ。

 近くの生協の特売で、無脂肪ヨーグルト500グラムが100円だった。フランスのスーパーで売っている濃厚なギリシャ風はおいしいが、これでいいや。サラッとしたタネを文明の利器に流しこむ。スイッチオン。回る羽根が重そうになった30分後、シャリシャリとろーりになった。

 粒チョコや手製の出来そこないのマドレーヌ、割れたサブレを並べて「トッピング・バー」にした。お好みの味を添えて召し上がれ。モエちゃんは白いアイスにキスチョコを天の川みたいに散らし、キイチゴとサブレを1つずつお座りさせた。乙女のパフェはかわいらしい。竹サジは舌にやさしく甘みを引き立てる。保冷ポットにこびりついたのも、竹サジでこそげて食べた。

 モエちゃんは夏休みの宿題の追い込み中だった。国語の課題・俳句2句がまだという。「季語ってなぁに?」と知らないようだ。竹サジやアイスのように、自作に細かいことは言いっこなし。うーん、うーん。大人も考え始め、やにわに句会になった。「できた!」。モエちゃんが段ボールの切れ端に書き付ける。どれどれ。

竹サジで食べるアイスで夏終わり  モエ

 ほぉー。続いて私が落書きした。

糖尿の父が一番アイス食べ  詠み人知らず

プロフィール

多田 千香子(ただ・ちかこ)
おやつ研究家・食ジャーナリスト。1970年、岡山生まれ。岡山大学法学部卒。朝日新聞記者として12年余、新潟・福山・大阪・福岡で働く。2005年、フリー。パリ製菓留学をへて現在、京都在住。ウェブサイトは「おやつ新報別ウインドウで開きます」。
朝日カルチャーセンター神戸別ウインドウで開きます大阪別ウインドウで開きます京都別ウインドウで開きますで食やお菓子に関する講座を担当しています。パリ滞在をつづったエッセー「パリ砂糖漬けの日々」別ウインドウで開きますが文藝春秋より発売されました。
 「パリ砂糖漬けの日々」写真展を、北九州、岡山で開きます。20〜50点の写真が織りなす、パリ20カ月の風景です。
 ・北九州 9月1日(土)〜10日(月)の10:00〜18:00、小倉北区室町のリバーウオーク北九州内、朝日新聞西部本社4階・朝日さんさん広場
 ・岡山 10月10日(水)〜11月2日(金)の11:00〜22:00、岡山市内山下のルネスホール内、公文庫カフェ

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