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コラム「論より、おやつ。」

ほうじ茶ブランマンジェ

2007年09月03日

 パリ近郊に住むメル友アンヌからエアメールが届いた。贈った拙著のお礼だった。「フランス語訳はまだ? 英語でも。欧州の言語なら何でもOKよ」。駅前もパリも、留学オール落第の私が訳すほうが、よほど実現しそう……。近くの小学校の給食の献立表も同封されていた。「チカコが興味あると思って」。本当に。パリの住まいは隣が幼稚園で、玄関近くの掲示板に献立が張られていた。よくチェックした。きちんと前菜・メーン・乳製品・デザートが並んでいる。当時の私のお昼なんて、チーズにバゲットをかじるぐらい。ちょっと悔しかった。久々に献立を読む。

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ほうじ茶ブランマンジェに、アーモンド粉と焦がしバターの菓子フィナンスィエを添えました

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北九州で「パリ砂糖漬けの日々」写真展をしています(10日まで)。写真のシュークリームに「これ、ちょうだい!」=北九州市小倉北区で

 ある週の木曜日はニンジン千切りサラダ、鶏のローストにジャガイモの黄金焼き、ナチュラルヨーグルト、フルーツカクテル。火曜日はバーミセリ(極細パスタ)入りトマトポタージュ、ローストビーフのインゲン添え、生チーズ、果物。次の木曜日はパリ風ポタージュ、ひき肉とジャガイモの重ね焼き、グリーンサラダ、ヨーグルト、果物。おいしそうだが自宅に帰って食べる子も多いらしい。アンヌも「カンティーヌ(学食)に、いい思い出ないわ」と言っていた。

 コース給食のシメは、ほとんど果物のようだ。エクレアや焼き菓子は月に3回ほど。古今東西、同じかも。私の小・中学時代も冷凍ミカンが多かった。アルマイトの盆がビショビショになった。卵ドーナツの日はうれしくて、こんがり焼けた六角形を選んでいた。どこもそうなんだろうか。北九州で始まった自分の写真展で尋ねた。給食のおやつ、覚えていますか?

 福岡の30代女性は口をそろえて「カップに入った白いの」と言った。「半解凍でヨーグルトみたいな感じ」とエリさん。「いや、もっと甘くて白い」「休んだ子のが奪い合いになるほど人気だった」。ヨシエさんは「真ん中は凍っているのが不思議で、あんまり好きじゃなかった」そうだ。へーぇ。岡山育ちの記憶にはない。白くてトロリとしたフランス菓子・ブランマンジェだろうか。「そんな上等なものじゃない」と笑われた。いえいえ、白い半解凍デザートだってブランマンジェと言えるはず。フランス語では単に「白い食べ物」の意味だから。

 京都のアトリエに戻って作った。ふつうはアーモンドを使うけれど切らしていた。やっと涼しくなってお茶がおいしい季節になるから、ほうじ茶ブランマンジェにしよう。牛乳で煮出したほうじ茶のチャイに生クリームとゼラチンを入れて、やわやわに固めた。

 前世は大道芸人で現世は新聞記者のマリさんと、ダブリン帰りの立命大生アヤさんに食べてもらった。「甘さ控えめで、ちょっと苦みがあっていい」。大阪出身の2人も「給食の白いの」は知らなかった。3人で「焼き肉行こう」と言いながら、あっというまに平らげる。給食より大人の味のはずが、食べっぷりは少女時代と変わらないのだった。

 

プロフィール

多田 千香子(ただ・ちかこ)
おやつ研究家・食ジャーナリスト。1970年、岡山生まれ。岡山大学法学部卒。朝日新聞記者として12年余、新潟・福山・大阪・福岡で働く。2005年、フリー。パリ製菓留学をへて現在、京都在住。ウェブサイトは「おやつ新報別ウインドウで開きます」。
朝日カルチャーセンター神戸別ウインドウで開きます大阪別ウインドウで開きます京都別ウインドウで開きますで食やお菓子に関する講座を担当しています。パリ滞在をつづったエッセー「パリ砂糖漬けの日々」別ウインドウで開きますが文藝春秋より発売されました。
 「パリ砂糖漬けの日々」写真展を、北九州、岡山で開きます。20〜50点の写真が織りなす、パリ20カ月の風景です。
 ・北九州 9月1日(土)〜10日(月)の10:00〜18:00、小倉北区室町のリバーウオーク北九州内、朝日新聞西部本社4階・朝日さんさん広場
 ・岡山 10月10日(水)〜11月2日(金)の11:00〜22:00、岡山市内山下のルネスホール内、公文庫カフェ

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