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コラム「論より、おやつ。」

黙らせサブレTV出演(下)

2007年09月17日

 スカパーやKBS京都で流れる1時間の生番組が始まった。テレビカメラの前にノコノコ出る。えぇと、オヘソにガムテープ、オヘソに粘着テープ……。テーブルに張られたテープを体の真ん前にして座るよう、指示されていた。滑りやすいキャスター付きのいすに気をつけなければ。スッテーンと転んでもウケないだろう。そろそろ座る。梶原誠・KBSアナのセリフはもれなくビックリマーク付きだ。「おやつ研究家、なんですね!タダさん!」。「はい。あやしいですよねぇ」と返す。ニッコリ笑うはずだったのに。

写真

「黙らせサブレ」を手にしたアシスタントの井上優里さん(左)、梶原誠・KBS京都アナウンサー(右)と

 お弁当を食べながら紹介するコーナーに入る。台本には(お弁当を開いてリアクション)とある。ほほぉー! がんばってビックリマーク付きで言い、急いで包みを広げる。ようやくほどくと、京料理の仕出屋特製の「さば寿司としめじ御飯弁当」が現れた。私はシメジご飯の味見係だ。「それでは、タダさんから召し上がってください!」。大判焼きぐらいに型抜きされたご飯に箸を運ぶ。シメジと、見えないほど細く刻まれた油揚げが入っていた。直角ほどすくって、のどに落とす。もぐもぐ、胸がつかえそう。

 気の利いたことを言わなければ。「あ、おいしい。上品ですねぇ」。ありきたり過ぎて芸がない。「細切れになった油揚げが味のポイントだそうですよ!」と梶原アナに振られる。「ほぉ、味の影武者ですね」。今度は意味不明なことを口走る。言っちゃったものは消せない。テレビって怖い。

 「お知らせのあとは、タダさんの京都生活奮闘記、たっぷりお聞きします!」。え、もう。後半30分は私が「先生」として講義台に立った。住まいを京都にした理由を話す。チェチェンやクルドの友人は、故郷を追われてパリにやってきた。母国に住めるってありがたいと感じたこと。京都好きなフランス人が多く、古い街を大事にする心を彼らに教わったこと……。もう台本なんか見ちゃいない。時間が余っては迷惑をかける。ペラペラしゃべったが、うまく伝えられただろうか。

 番組のおしまいに前夜に焼いた「黙らせサブレ」を司会の2人に食べてもらった。梶原アナは開口一番「やわらかい!」。「へ、湿気てますか」。最後までおマヌケだったか。1時間番組があんなに短いとは。司会の2人に乗せられ、単におしゃべりに来たようだった。アドリブで何とかしのげるものね。テレビも我が人生も。

 味見した弁当は番組後、ちゃっかり平らげて帰宅した。大阪のM記者からメールが届いていた。たまたま目撃したらしい。「タダさん、失笑してましたよ」。番組を放映した関西テレビには「パリの話がよかった」「勇気付けられた」といった感想が届いたらしい。ほっとする。スタジオで撮った写真は髪がはねていた。「髪ぐらい、とかれぇ」と母にしかられた中学時代と変わらない。こんなのでもテレビに出ちゃうのね、と勇気を出してもらえたかな。でも女子たる者、やっぱり美容院、行くべきだった…。

プロフィール

多田 千香子(ただ・ちかこ)
おやつ研究家・食ジャーナリスト。1970年、岡山生まれ。岡山大学法学部卒。朝日新聞記者として12年余、新潟・福山・大阪・福岡で働く。2005年、フリー。パリ製菓留学をへて現在、京都在住。ウェブサイトは「おやつ新報別ウインドウで開きます」。
朝日カルチャーセンター神戸別ウインドウで開きます大阪別ウインドウで開きます京都別ウインドウで開きますで食やお菓子に関する講座を担当しています。パリ滞在をつづったエッセー「パリ砂糖漬けの日々」別ウインドウで開きますが文藝春秋より発売されました。
 「パリ砂糖漬けの日々」写真展を、岡山で開きます。20〜50点の写真が織りなす、パリ20カ月の風景です。
 ・岡山 10月10日(水)〜11月2日(金)の11:00〜22:00、岡山市内山下のルネスホール内、公文庫カフェ

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