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コラム「論より、おやつ。」

茶の湯とパリ風マカロン

2007年10月22日

 アトリエの四畳半でお茶会を開いた。主人役は24歳リヨコさん。京都・堺町通で懐石料理店を営む母ミキコさんとお菓子を習いに来てくれた。茶道の先生と聞いて「ここでお茶してもらえません?」と口説いた。ナンパみたい。

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アトリエの四畳半で開いたお茶会

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懐紙にのったお手製マカロン

 茶の湯っておっかない。友人シルヴィにパリで「セレモニー・ド・テ(茶会)」に招かれた。お茶歴7年の彼女にほめられたのは正座だけだった。同席した台湾やフランスの友人には「日本人なのになぜ」という顔をされた。京都にいるのだから習いたい。まずは茶道カフェの月釜に行った。茶碗を渡される。ええと、回せばいいんだっけ。額から汗は吹き、器はダッチロールした。居合わせた地元の女性は「全然心得ありません」と言いながら、懐紙をスッと出した。その程度で知っていると言わないらしい。

 ドキドキせずに楽しみたい。「サルでもできる茶会」をしますと呼びかけた。計11人が集まった。大阪のナオミさんは「どんな格好したらいいですか」。公序良俗に反しない限りOKというと「じゃあ鼻に一文銭あてて来ます」。ドジョウすくいじゃないんだから。

 お茶菓子にはパリ風マカロンはどうだろう。クリームを皮で挟むから「もなか」みたいだし、濃厚な甘さは抹茶にあうはず。華もある。茶会前夜に卵白とアーモンド粉、砂糖を混ぜて焼く。挟むバタークリームはコーヒーやオレンジの花の水、キイチゴ味などをこしらえた。抹茶にコーヒー味なんてダメだったかも。リヨコ先生は「抹茶にはカテキンと、カフェインとビタミンがたっぷり。あわないものはないんですよ」。よかった。

 畳の間に上がる前に各自、好みのクリームをマカロンに挟んでもらう。マリさんは全ての味を試したいと、カナッペのようにクリームをのせた。きもの姿のリヨコさんは「これを、カイシ、といいます」と、丁寧に説明した。中1のモエちゃんはふくさの手さばきを空中で真似ていた。さすが茶道部。「エアふくさ」一等賞、あげる。

 マカロンは1人2個、淑女の合間をしずしずと進んだ。「ご相伴させていただきます」と言い、マカロンを懐紙にのせる。「お侍さんのようににじり寄って、車庫入れのようにバックして」とリヨコさん。ヒサエさんは「分かりやすかった」と、お茶会後も若き茶人を質問攻めにしていた。

 私は一服もできなかった。後輩Y君から同じ日、焼き菓子25人分を頼まれていたからだ。マカロンのため卵白を使い、卵黄ばかり10個ほど余らせた。カスタードクリームを作れば使い切れる。Y君に泣きつき、シュークリームを認めてもらう。お茶会を横目に必死でシュー皮50個を焼いた。約束の時間まで残り1時間。鬼の形相でクリームを詰める。ええと、どうやって運ぼう。苦しまぎれに思いついたのがコーヒーフィルターだった。底を折って平らにし、シューを2個ずつ入れる。真ん中にパンチで穴を開けてリボンを通す。花かごみたい。なかなかかわいい。自賛している場合じゃない。友人マユさんにも手伝ってもらい、慌てて祇園の会場へ届けた。「赤福みたいに冷凍設備もないので、正真正銘の作りたてです。とっとと食べてください!」。もっとも設備があっても作りおきしないだろう。ギリギリまでやらないサガは一生、直りそうもないから。また茶会を開きたいが、次こそ参加できるんだろうか。

プロフィール

多田 千香子(ただ・ちかこ)
おやつ研究家・食ジャーナリスト。1970年、岡山生まれ。岡山大学法学部卒。朝日新聞記者として12年余、新潟・福山・大阪・福岡で働く。2005年、フリー。パリ製菓留学をへて現在、京都在住。ウェブサイトは「おやつ新報別ウインドウで開きます」。
朝日カルチャーセンター神戸別ウインドウで開きます大阪別ウインドウで開きますで食やお菓子に関する講座を担当しています。パリ滞在をつづったエッセー「パリ砂糖漬けの日々」別ウインドウで開きますが文藝春秋より発売されました。
 「パリ砂糖漬けの日々」写真展を、岡山で開きます。20〜50点の写真が織りなす、パリ20カ月の風景です。
 ・岡山 10月10日(水)〜11月2日(金)の11:00〜22:00、岡山市内山下のルネスホール内、公文庫カフェ

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