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コラム「論より、おやつ。」

女子肉の会の京風パエリア

2007年10月29日

 NOVA博多校中退だ。大阪にいたころに通い始め、英仏語に足かけ3年貢いだ。身によくついたのは、カウンセリングという名の営業トークに対するトボケ方ぐらいか。もっとも元々、ボケている。カメラに向かって「笑って」と言われ、ニッコリするはずが顔を引きつらせる。私って日本語、通じてない……。

写真

10人前の京風パエリア

 女性ファッション誌の取材が舞い込んだ。着たきりスズメの私にファッション誌なんて、ドッキリかもしれない。Y紙記者マリさんが言い出しっぺの「女子肉の会」で相談しよう。お肉を焼肉屋より安上がりに、気兼ねなく食べようとの会だった。9月はマリさんと立命館大のアヤちゃんが私のアトリエに集まった。近所の三条会商店街にある肉屋が安くておいしい。でも焼肉プレートがない。しゃぶしゃぶにした。アトリエの畑でモリモリ育ったレタスを合いの手に、3つの胃袋に消えた牛・豚肉は1キロを超えた。たまたま女性だけだったので「女子肉の会」と呼ぶようになった。

 10月の会は女性誌取材の前夜に開いた。パエリアにしたのは、引っ越し荷物からサフランの小瓶が出てきたからだ。オーブンで焼けば失敗もない。鶏肉や玉ねぎ、エビを炒める。万願寺とうがらしも加えて京風に。サフランの黄色い湯を玄米に吸わせたらオーブンへ入れる。僧衣を仕立てる衣屋に嫁いだミスズさんが、タイムやローズマリーを山ほど持ってきてくれた。いい香り、さっそくのせちゃおう。四畳半にあるちゃぶ台を10人が囲んだ。白1点・M記者も呼んだので、女子からも肉からも離れてしまった。まぁいっか。

 パエリアをつつきながら、翌日に控えた取材について教えを請うた。何を着たらいいんだろう。ファッション担当だったヒロコ記者は「いま着ているこのシャツ、似合いますよ」。「ふだんのままでいいんじゃないんですか」と言ったM記者は、携帯電話で事件発生を告げられ消えた。

 嵯峨野の美容師スミエさんを翌朝、訪ねた。女優さんとかモデルさんと同じ誌面に載るなんて、着ぐるみでもかぶりたいわ。「いーえ、勝負しましょう!」。スミエさんはガッツポーズして、メークに取りかかった。淡いピンク色の口紅は、はっきり描かないのがイマドキだそうだ。「女優さんも耳は出していません」と、髪を耳にかけないほうがいいと言って送り出してくれた。

 服は結局、前日も着た白いシャツにした。芸大生サオリちゃんが前夜の片づけを手伝ってくれた。ピンクのガーベラをスターバックスのタンブラーにいけて、ミスズさんちのハーブも飾る。カメラの前でもリラックスできるかも。「笑ってください」。やっぱりカチカチになった。「撮影終わります」と言われたとたん、ホッとして満面の笑みになる。カメラマンのフジタニさんがシャッターを切る。「最後の4枚でキマリだなぁ」と笑われた。

 副編集長ミワコさんからモノクロ写真が届いた。ガハハ笑いする私はスミエさんの助言に反して、しっかり耳に髪を引っかけていた。やっぱり言葉、通じちゃいない。

 福岡の大学に講演に行ったら、久々にK記者に会った。知った顔には気安い。マイク片手にペラペラ話しかける。カメラ越しのK記者があきれ顔で言った。「タダさん笑いすぎ。これじゃカラオケ中みたいですよ…」。カメラ、やっぱり苦手だ。

プロフィール

多田 千香子(ただ・ちかこ)
おやつ研究家・食ジャーナリスト。1970年、岡山生まれ。岡山大学法学部卒。朝日新聞記者として12年余、新潟・福山・大阪・福岡で働く。2005年、フリー。パリ製菓留学をへて現在、京都在住。ウェブサイトは「おやつ新報別ウインドウで開きます」。
朝日カルチャーセンター神戸別ウインドウで開きます大阪別ウインドウで開きますで食やお菓子に関する講座を担当しています。パリ滞在をつづったエッセー「パリ砂糖漬けの日々」別ウインドウで開きますが文藝春秋より発売されました。
 「パリ砂糖漬けの日々」写真展を、岡山で開きます。20〜50点の写真が織りなす、パリ20カ月の風景です。
 ・岡山 10月10日(水)〜11月2日(金)の11:00〜22:00、岡山市内山下のルネスホール内、公文庫カフェ

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