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コラム「論より、おやつ。」

アケミさんの汁椀で「もちバター雑煮」

2007年12月31日

 農水省が選んだ「郷土料理100選」に、大阪は白みそ雑煮が入っていた。食に関する講座を担当している朝日カルチャーセンターで聞いた。「うちの普通ですけど…」を枕詞に続く中身は、やっぱり自分ちとは違う。

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アケミさんとペアの汁椀に入れた「もちバター雑煮」

 元小学教師シズコさん:元日は白みそ、かまぼこ、ゆで丸もち、大根、ニンジン、サトイモ、2日はすましに焼いた丸もち

 菓子店勤務サキコさん:白みそに合わせ少々、焼き丸もち、大根、ニンジン。2日はシズコさんと同じ

 英会話講師カオリさん 白みそ、焼き丸もち、白菜

 在日コリアンのジュンコさん:トックに鶏肉、しょうゆだし、卵、もみのり

 赤穂出身ナオコさん:すまし、ゆで丸もち、ニンジン、大根、焼きアナゴ

 元日は白みそ+焼かない丸もちに大根、ニンジンなどで、2日目はすまし汁+焼きもちに変わる家庭が多かった。食いしん坊な大阪女20人が話し始めると止まらない。焼きもち派は「おもちを焼かないなんて。焼いたらおいしいのに」と突っ込む。サナエさんは両親が徳島出身で、やっぱり「うちの普通です」と言って続けた。「合わせみそ、焼いた丸もちあんこ入り、白菜、ニンジン、ゴボウ、ブリ」。20人がびっくりする。「あんこにブリ…」。

 京都や名古屋はシンプルだ。桂で祖母と暮らすキョウコさんは「白味噌に、かしら芋とせいぜいクワイだけ」。「縁起物だから食べなさい」と言われて口にしたが、芋は好きではなかったという。名古屋のマチヨさんは「すまし汁に焼かない角もちと、もち菜だけ」。もち菜って何だろう。「え、全国的には入れないの」。初めて聞いた。

 私のうちも「ごく普通で」、すまし、ゆで丸もち、ニンジン、サヤエンドウ、鶏肉かカキかなあ。「豪華」「カキなんか入れるんだ」「生臭くないの」。具だくさんなのは岡山風なんだろうか。郷土料理100選に選ばれた「岡山ばら寿司」も、サワラや野菜がてんこ盛りだから。

 私のオリジナルは「もちバター雑煮」だ。大阪・北新地の居酒屋「明石屋」の名物「もちバター」が好きで、家でも作るようになった。フライパンにバターを熱し、もちをこんがり焼く。黒コショウをガリガリかける。さあ食べよう。合いの手のカップスープに湯を注いだら、もちを皿にとるのが面倒になった。洗い物が増えるし…。スープにドボンと浮かべてみた。結構おいしかった。モノグサ雑煮は時々、寒い夜に作る。東京のアケミさんとおそろいの汁椀によそう。アスパラクラブ時代から私のコラムを読んでくれる彼女が今夏、出版祝いに贈ってくれた。「異国にありて味噌汁を想っていたチカコさんへ」と、手書きのメッセージが添えられていた。暑い京都での出版パーティーに駆けつけてくれた彼女を、お椀がぬくもるたびに思い出す。

 そう、今年はパリ留学から帰国、初のエッセーを上梓し、京都にアトリエを開いた。ドタバタしつつ、なんとか年を越せそうだ。しみじみありがたい。

 どうぞ皆様、よいお年を。年越しライブに東京へ行こうかとも思ったけれど、母の「普通の」雑煮を食べに、これから岡山に帰ります。

プロフィール

多田 千香子(ただ・ちかこ)
おやつ研究家・食ジャーナリスト。1970年、岡山生まれ。岡山大学法学部卒。朝日新聞記者として12年余、新潟・福山・大阪・福岡で働く。2005年、フリー。パリ製菓留学をへて現在、京都在住。ウェブサイトは「おやつ新報別ウインドウで開きます」。
朝日カルチャーセンター大阪別ウインドウで開きます京都別ウインドウで開きますで食やお菓子に関する講座を担当しています。パリ滞在をつづったエッセー「パリ砂糖漬けの日々」別ウインドウで開きますが文藝春秋より発売されました。

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