2008年1月7日
皮から手作りしたシベリアぎょうざペリメニ。あとはゆでるだけ
フクチャンのボルシチにはスメタナ(サワークリーム)をかけて
「ロシアの夕べ」に招かれた。ホステス役は毎年ロシアへ通う元職場の先輩フクチャンだ。前回のサンクトペテルブルグはパリから合流して相伴に預かった。ストロガノフ伯爵邸の中庭にあるファミレス風レストランで、ビーフ・ストロガノフを一緒に食べた。今回はモスクワへ行って、湯沸かし器サモワールを手に入れたらしい。見に行かねば。
ロシアにちなんだ「何か」を持って行こうと思ったけれど隣国なのに縁遠い。手製の田舎風テリーヌと、エビのテリーヌで我慢してもらうことにした。フランスの総菜なのをメールでわびる。返事は「貴族が仏語をしゃべっていた帝政ロシア時代の料理ってことで(笑)」。なるほど。
時間きっかりに部屋にお邪魔した。テリーヌに添えて、大丸梅田店で買った高級仏料理店のバゲットを「330円もした!」と恩着せがましく差し出した。後輩アイチャンの手作りティラミスはイタリア菓子だが、芸術大国つながりってことにしよう。先輩トミタさんは阪神百貨店のコロッケ4つが入った紙袋を開けた。どこがロシア…。「コロッケは世界中にある」からいいらしい。バゲットは高いだけだったが、ホクホクのコロッケはなかなかおいしかった。
メーンはボルシチだった。盛り上がる客5人を横目に、フクチャンは心配そうだった。ロシア料理専門書を片手に試作したら、安い豪州産カレー用牛肉はカチカチになったらしい。ネットで作り方を探し、スペアリブで再挑戦したという。2時間煮込んで、長野産ビーツと玉ねぎも一緒にする。仕上げにはロシア料理に欠かせない香草・ディルとスメタナと呼ぶサワークリームをかけて、召し上がれ。
5人とも「おいしい!」と叫んだ。骨付き肉からいいダシが出て、やさしい酸味にコクを足す。おかわりは取り合いになり、30半ばにして会うたび大きくなっているヤッシーがせしめた。フクチャンは「よかったぁ」と心底、ホッとしたようだった。
腹ごなしにシベリアぎょうざ・ペリメニ作りを手伝った。ユーラシア・ブックレットの「ロシア料理・レシピとしきたり」を読みながら、粉を牛乳で練った手作りの皮に中身を包む。端っこ同士をくっつけてUFOみたいにすれば、急にペリメニらしくなる。浮き上がってから2分ゆでた。スメタナをかけるのがロシア流だが、やっぱり酢醤油のがおいしいかも…。
ジム・ビームの小瓶を1人で空けたトミタさんは「いやーボルシチうまかった!」と繰り返した。私には「タダ、ちゃんと疲れろよ、ちゃんと」と言って帰っていった。ちゃんと疲れろっていったい…。昨夏には「タダ、折れるなよ、ポッキリとな」と言われたっけ。分からない。心を読む詩人なのか、単なる酔っ払いなのか。フクチャンに聞いた。「ま、両方なんじゃない…」。

おやつ研究家・食ジャーナリスト。1970年、岡山生まれ。岡山大学法学部卒。朝日新聞記者として12年余、新潟・福山・大阪・福岡で働く。2005年、フリー。パリ製菓留学をへて現在、京都在住。ウェブサイトは「おやつ新報」。

朝日カルチャーセンター大阪・京都で食やお菓子に関する講座を担当しています。パリ滞在をつづったエッセー「パリ砂糖漬けの日々」が文藝春秋より発売されました。
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