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コラム「論より、おやつ。」

台北ダジャレナイト

2008年03月03日

 年に一度は中華圏へ「大人の遠足」に出かける。現地集合で自由行動、食事だけ一緒に過ごす。4〜6人で毎回、メンツが変わるから「モー娘。」旅行と呼んでいる。コアメンバーは北京語使いの「おねだり次長」ことガクさん。2月14日、わざわざ休日出勤してチョコレートをもらいに来たという。相変わらずだ。

写真

台湾名産のタロイモ・チップス=台北市内で

 今回は彼が20年通う台北にした。中毒ギョーザ担当記者にして拙著「パリ砂糖漬けの日々」で本人いわく「雑魚キャラ」のヤッシー、六本木勤務にして稲刈り機の運転が特技の美人秘書ヨーコさんが加わった。

 初日の夕食はヨーコさんの友人アーロン君と、私のパリ製菓留学先の同級生クリオも誘った。イマドキの店で台湾料理を囲む。日中仏英語が飛びかう。東京に留学したアーロン君は忘れかけた日本語を生まじめに操った。「どうしてガクさんは毎年、台湾に来ているのですか」。「映像における比較文化」のためと本人は言う。「でも日本のが一番よくないですか?」。アーロン君の目が光る。日台の男子3人で「我々はコモン・インタレスト(共通の興味)を持っている」と意気投合している。

 女子3人の白い視線を感じたのか、新聞編集をするガクさんがダジャレ見出しを披露し始めた。まーただよ。元同僚だったヤッシーと私は心配する。うけるんだろうか、台湾の朋友に。

 アユの解禁を告げる写真に「Are you ready?(アーユーレディ)?」

 アーロン君は感に堪えないように英語で言った。「先生は天才です。日本のことわざを覚えたい。他にありませんか」。調子に乗せちゃダメ。紫色のタロイモとサツマイモのチップスをつまみながらハラハラする。

 ガクさんは「朱(酒)にまじわれば」の掛詞を北京語で説明した。それはパクリだわ。非難するとガクさんは、手当たり次第にダジャレをまき散らし始めた。「モロッコってあるでしょ?」「六甲という地名が関西にはあってね」。前置きが長いとロクなことがない。嫌な予感は当たった。

 私の友人が先日、モロッコに行ったが、私はモロッコに行けない。でも大阪から神戸まで電車に乗ったらすぐ六甲を通り過ぎてしまった。「もう六甲」。モウロッコー、モロッコ…。

 一瞬、黙る6人。私が口を開く前に、端っこにいたクリオが腰を浮かせた。タロイモが入っていた貝殻の器をひっくり返そうとしている。どこで覚えたのか、日本語で叫んだ。「ムッシュー・モロッコ、ヘンナオジサンー!」

プロフィール

多田 千香子(ただ・ちかこ)
おやつ研究家・食ジャーナリスト。1970年、岡山生まれ。岡山大学法学部卒。朝日新聞記者として12年余、新潟・福山・大阪・福岡で働く。2005年、フリー。パリ製菓留学をへて現在、京都在住。ウェブサイトは「おやつ新報別ウインドウで開きます」。
朝日カルチャーセンター大阪別ウインドウで開きます京都別ウインドウで開きますで食やお菓子に関する講座を担当しています。パリ滞在をつづったエッセー「パリ砂糖漬けの日々」別ウインドウで開きますが文藝春秋より発売されました。

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