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ドライいちご作りの4日間

2008年4月21日

  • 筆者 多田千香子

写真縁側で日光浴2日目のイチゴ写真自家製ドライいちご入りイチゴミルクケーキ

 ドライいちごが大好きだ。ねっちり甘いのをたまに買う。業務食材店で500グラム入り1000円だった。袋の裏には「中国産」「着色料赤色○号」。うーん、見て見ぬふり。でも袋を開けたら最後、いっぺんに空にしてしまった。表示が引っかかるのに、あーあ。

 赤色○号なんて特撮ヒーローみたいな物体X、これ以上胃袋に入れたくない。自家製に挑戦しよう。まず砂糖漬けにして、ジャムなら煮るところを干せばいいはず。まぁ素材と対話しながら決めればいい。ミシュランの三ツ星シェフみたいに言ってみる。技が伴わない私の場合、単に大ざっぱというが…。

 念のため仏ラルース社の「ジャム辞典」で調べることにした。「ジャムの妖精」と呼ばれるフランスの職人クリスティーヌ・フェルベールさん監修の本だから間違いないだろう。全350ページ、素材別に作り方が並んでいる。オレンジやブルーベリーといった定番から、ズッキーニやバラの花びらまで。ええとイチゴ、イチゴ…と。果実1キロに対し砂糖800グラム、レモン汁1個分とあった。パリの料理学校ではバルサミコ酢を入れたっけ。夕方セールだった1パック250円の熊本産「さちのか」に混ぜた。

 特売品だけでなく京都産も仲間に入れよう。転勤した先輩Oさんからイチゴ鉢をもらっていた。アトリエのマメ畑の端っこに植え替えたおかげか、かわいい実がなっている。摘みたての真っ赤な1粒を加えた。

 1晩漬ける。砂糖が溶けた真っ赤な海の中、イチゴがとろけていた。ピカピカしておいしそう。食べたいのを我慢して少し煮てから、実だけオーブンへ入れた。軽く乾かして網の上に移す。日光浴させようと、町家アトリエの庭に面した縁側に並べた。

 1日目。水分が抜けてシワが寄る。あぁ、我が肌を見るようでイタイ。2日目。シワシワ度はあまり変わらないけれど、どんどん真っ赤になっていく。3日目。小指の先ほどまで細った。つまみ食いしてみる。甘酸っぱい。味がギュッと詰まった気がする。これぐらいでいいかな。

 さっそくケーキを焼く。バターと砂糖、卵とを混ぜる。イチゴミルク味にしようと練乳をひとさじたらす。型に入れたらドライいちごを散らしてオーブンへ。ぷーんと懐かしいような香りが漂う。焼き立てにオマケでできた真っ赤なシロップを染み込ませた。

 送った横浜のミナコさんは「イチゴがとっても濃くて、いとおしいほどおいしかった」。滋賀のアツコさんは「きれいな天然色、見とれてしまいます。それなのにどうして着色するんでしょうね」と言ってくれた。本当に。わざわざ色をつける必要なんてない。フレッシュなのもいいけれど、シワシワになって味に深みが増す。なんだか女の一生を見るようだ…。縁側で1人、複雑な気分になった4日間だった。

プロフィール

多田 千香子(ただ・ちかこ)

おやつ研究家・食ジャーナリスト。1970年、岡山生まれ。岡山大学法学部卒。朝日新聞記者として12年余、新潟・福山・大阪・福岡で働く。2005年、フリー。パリ製菓留学をへて現在、京都在住。ウェブサイトは「おやつ新報」。

朝日カルチャーセンター大阪京都で食やお菓子に関する講座を担当しています。パリ滞在をつづったエッセー「パリ砂糖漬けの日々」が文藝春秋より発売されました。

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