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コラム「スイーツの心得」

「塩スイーツ」というジャンル!?

2007年05月11日

 地下鉄で中づり広告を見ていたら、「塩スイーツ」の文字が目に飛び込んできた。『anan』が「ハッピー!スイーツパラダイス」という特集を組んでいるのだが、この春のお菓子トレンドとして、「塩スイーツ」の項目が立っていたのである。その数日前には、地方のテレビ局から「塩スイーツ」について電話取材を受けたばかりだった。どうやら「塩スイーツ」が健闘中らしい。

写真「アテスウェイ」のガレット・ブルトンヌ(手前)181円とクイン・アマン305円。小麦粉とバターの生地をがっしり焼き込んだおいしさ。ほのかな塩気が濃厚な味わいにキレをもたらす。
写真「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション」のブリオッシュ・ブール・サレ(中)189円。有塩バターの塩気とグラニュー糖が混じった甘じょっぱさが後をひく。上はアニス・レザン289円、アニスの風味がなんともフランスっぽい。
写真これが、塩スイーツの火付け役となった、アンリ・ルルーさんの塩入りバターキャラメル「C.B.S.(セー・ベー・エス)」。とろんとしたやわらかい食感で、日本人が思い描くキャラメルとはちょっぴり異なるかもしれない。
写真ルルーさん監修の下、日本で作られているマカロン。ショコラ生地にプラスされたフレーバーが楽しい。「C.B.S.」を挟んだものもある。
写真伊勢丹新宿店の「サダハル アオキ」で販売されたゴールデンウイーク限定のエクレアにも塩キャラメル味がありました。塩バター味や塩キャラメル味が定番フレーバーになっていく予感?

 「塩スイーツ」という言葉が聞かれ始めたばかりの頃(2年以上前だ)、必ず取材されていたのが、東京・吉祥寺「アテスウェイ」というパティスリーである。この店のシェフ、川村英樹さんは、フランス・ブルターニュ地方で修業した。ブルターニュは塩の産地として名高く、お菓子に塩や有塩バターを用いる(普通、フランス菓子で使うのは無塩バターだ)。川村さんは、パティシエとしての自分を形成してくれたブルターニュの味を日本でも再現したいとの思いから、塩や有塩バターを使うお菓子をレパートリーに加えてきた。つまり、彼にとっては、「アイデンティティーとしての塩」だ。「塩スイーツ」というものを作ろうとしているわけではない。当時、彼は、自分の思いとは関係なく「塩スイーツ」としてくくられてしまうことへの困惑を訴えていた。

 誰が呼び始めたのかは知らないけれど、「塩スイーツ」という呼び方自体がなんとも際どいのである。いかにも「流行(はや)り物」的な、すぐに消えてゆきそうな感じで。「世の中の興味も長くは続くまい」とすっかり高をくくっていたところ、そうでもなかったんですね。

 つい先日、「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション」へ行ったら、塩バター味のブリオッシュがあった。いや、これがとんでもなくおいしい。有塩バターをたっぷり塗って砂糖をふったブリオッシュ生地のトーストをイメージしていただけばよいだろうか。甘くてしょっぱくて、日本人にはどこか懐かしくもある。「う〜ん、これは確かに受けるかもしれない」。「塩スイーツ」なんて名称はともかく、味覚の根っこを刺激するのは間違いない。

 パリの三ツ星シェフ、アラン・パッサールが来日して、ザ・プリンス パークタワー東京の「ブリーズヴェール」で開かれたフェアに登場した小菓子「醤油(しょうゆ)のパート・ド・フリュイ(ゼリー)」は、みたらしだんごの「みたらし」の味だった。「こういう甘くてしょっぱい味をフランス人は好むのか?」との質問に、パッサールは「ウイ」と言う。一同、「へぇ〜」。そうとは知らなかったよ。しかし、後で思い出したのだった、彼がブルターニュ地方の出身であることを。

 「塩スイーツ」の発端は、アンリ・ルルーの塩入りバターキャラメルにあると私は見ている。「サロン・ド・ショコラ」が開かれる度に、ルルーさんのコーナーには大行列ができて、彼の塩入りバターキャラメルは飛ぶように売れた。以降、塩キャラメルを作るパティシエやメーカーが増えた。「塩キャラメル」の文字をあちこちで見かけるようになった。

 ルルーさんはもちろんブルターニュの人である。そんなルルーさんの名前を冠したショップが伊勢丹新宿店に常設されて、ケーキも並び始めた。塩の利いたチョコレートケーキまである。こうして「塩スイーツ」という概念は次第に確立されていくのかもしれない。

メモ

アテスウェイ

東京都武蔵野市吉祥寺東町3-8-8

Phone 0422-29-0888

11:00〜19:30

月曜休

ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション

東京都目黒区三田1-13-1

恵比寿ガーデンプレイス内 シャトーレストラン ジョエル・ロブションB1

Phone 03-5424-1345

9:30〜20:00

不定休

アンリ・ルルー

東京都新宿区新宿3-14-1

伊勢丹新宿店本館地下1階

Phone 03-3352-1111

10:00〜20:00

不定休

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プロフィール

君島 佐和子(Kimijima Sawako)
1962年生まれ。『料理通信』(毎月6日全国書店で発売)編集長。ショコラ好きでボンボン・ショコラに目がない。パッケージ・コレクターでもあり、ジャン=ポール・エヴァンやラ・メゾン・デュ・ショコラの箱は大切に保存している。www.r-tsushin.com

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