現在位置:asahi.com>食>コラム>スイーツの心得> 記事 “バラ買い”こそ“大人買い”?2007年09月10日 バラ売りが好きだ。
欲しいものだけ1個ずつ袋に入れてもらって買うのが好き。「フランボワーズとカフェとショコラと……」。パリではいつもマカロンをそうやって買っている。そして、歩きながら食べる。ボンボン・ショコラも自分用にはそうやって買う。 「選ぶ」という行為自体が、ひとつのイベントなんだろうと思う。詰め合わせにはないワクワクがある。迷うことが楽しい。年齢とともに自分の好みがはっきりしてきたから、好きなフレーバーだけ買えるほうが都合もいい。おすし屋さんのカウンターでお好みで食べるようなものだろうか。最近は、おまかせで全種類出されるより、ひかりものと白身だけでいいと思ったりするが、ボンボンもいろんな種類を食べるより4、5種類を狙い撃ちするほうが自分の気持ちにフィットする。食べたいものだけ食べたいというか、食べたくないものは食べたくないというか。 1個だけ、とか、2個だけというのがまたいとおしい。10個あれば、気持ちも10等分。1個しか手元にないと、その1個を大切に食べたくなる。 あるもの全種類を買うのが「大人買い」なら、バラ買いは「子ども買い」かもしれない。実際、駄菓子を買う感覚なのだから。 埼玉県・ふじみ野駅近くの「ブロンディール」というフランス菓子屋さんへ行くと、ケーキのショーケースの隣にキャラメルのケースがあって、どちらのケースの上にも、キャンディーやマカロンの入ったガラス瓶がいくつも並んでいる。昔、駄菓子屋さんが使っていたアルミふたの付いたガラス瓶だ。さしずめフランス駄菓子の感覚ですね。「なんでこんな所に?」とびっくりするくらい鄙(ひな)にも稀(まれ)な、しゃれたフランス菓子屋さんなのだが、もし、ガラス瓶がなかったら、この空間、これほど魅力的に映るだろうかと思わなくもない。いかにも大人なケーキだけじゃなくて、ちょっと子どもな、郷愁を誘うような一角があることで、店の醸し出す雰囲気に奥行きが出ているのは確かだ。もちろん、これらはバラ売りで、キャンディーなら1粒25円と30円! 「オー・バカナル」が原宿のパレフランス1階に入っていた頃、カウンターの上にアルミふたのガラス瓶が置かれていて、カントゥッチが入っていた。あれもバラ売りだった。そのカジュアル感がよかった。今だと、「スターバックス」が、レジ横に小菓子を置いてバラ売りしている。こちらは「ついで買い」を狙ってのことだろう。私もよく引っ掛かる。 バラ売りが好きなのは、バラ売りについて回る紙だの袋だのが好きなせいもある。ドーナツならワックスペーパー、甘食なら薄くて白い紙袋。大福とかおまんじゅうなんかも1個2個だけ買う時は、白い紙袋に入れてくれることが多い。パリでマカロンを買ってもそう。その薄い紙質がいいのだ、味があって。贈答用に使われる上等なコート紙なんかじゃないわけだが、紙自体の魅力ははるかに勝る。人肌があるんですね。 こうして思い巡らせていると、バラ売りに伴うのはお高くないテイストだ。やっぱり「大人買い」とは逆なのだろうか。大福と一緒におにぎりやおいなりさんをガラスケースに並べている甘味屋さんで、おにぎりを1個だけ買うと、やっぱり白い紙袋に入れてくれて、ごはん粒が袋に付いちゃったりするのだけれど、私はあれが嫌いじゃない。「今、おにぎりを1個だけバッグの中に入れている」と思うと、おにぎりがいとおしくて、紙袋に付いたお米粒もいとおしい。 自分が欲しいものを欲しい量だけ。それも少量、選んで買う。本当はこっちのほうが大人の買い方だと私は思う。客も店もともに成熟してないと意外にできないことなんじゃないか?
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