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'91ヴィンテージに込められたシャプティエの親ごころ2007年05月01日 「ワイングラスを水で濯(すす)ぐようなことはしないでくれ!」
テイスティングする予定のワインが多く、すべてに1脚ずつのグラスを用意することができなかったセミナーでの出来事です。丹精込めたワインに、余分な水分が1滴たりとも混ざることは許せない、と言わんばかりの厳しさをみせたミッシェル・シャプティエ。妥協を許さないその一途さは、子宝に恵まれなかった彼に待望の娘が生まれた1991年の『エルミタージュ・パヴィヨン』にも表れています。子どもの誕生年、バースデーヴィンテージのワインに賭けたシャプティエの深い親ごころが……。 ●娘の結婚式で開けるのにふさわしいワインを造る フランスのコート・デュ・ローヌ地方でワイン醸造に励むミッシェル・シャプティエはビオディナミ農法を実践し、現在、自社畑で生産されるワインはすべてオーガニックワインとして認められています。また、1995年からは世界に先駆けて点字表記のラベルも採用しています。 4年ほど前、ワイン評論家の田中克幸氏からミッシェル・シャプティエの“こども誕生”の逸話を伺った時、彼のすごさを実感しました。 氏を通じて聞いたシャプティエの胸のうちは「待ち望んだ娘の誕生は本当にうれしかった。私は娘の結婚式で開けるのにふさわしいワインを造ろうと決めた。20歳で結婚するなら簡単だ。20年後に飲んでおいしいワインなら誰でもできる。でも、娘は40歳まで良縁に恵まれないかも知れない。その時にワインが劣化していたらどれほど悲しい思いをすることか。娘に劣化したワインなど飲ませるわけにはいかない。だから私は '91ヴィンテージを素晴らしいワインにしようとがむしゃらに働いた。翌年を犠牲にしても1991年だけは完璧にしたかった」。何たる“熱い”言葉! ●偉大なワインが長生きする理由(わけ) 「Vintageヴィンテージ」は、“収穫年”を意味します。ワインの原料となるぶどうはその年の気候に左右される農産物なので、作柄の良し悪しはワインの品質にも関わってきます。ただ、毎年潤沢(じゅんたく)に相当量のワインを生産しているボルドーのトップシャトーなどは品質の点でも安心できますし、お薦めできます。シャプティエの造るワインも含めてそうですが、長期熟成のワインは「タンニン(渋味)」と「酸の高さ」がポイントであり、これらが20年、30年、50年という長きにわたる熟成を可能にさせてくれます。 ワインの熟成は〈穏やかな酸化〉と理解できます。コルクで打栓された瓶の中のワインはゆっくりと酸化が進むことで、口当たりが丸くなり、さまざまな香りが出てきます。 「タンニン」はポリフェノールに分類されますが、ポリフェノールは酸素を吸収する能力を持っているので、ワインに含まれている酸素を吸収し、従って、タンニンを多く含むワインはゆっくりと熟成していくことになります。 「酸の高い(=pHの低い)ワイン」は、ワインに含まれる亜硫酸の抗酸化力を高め、ワインを酸化しにくくさせます。これは「pHが低い=水素イオンが多い」ためで、水素イオンには“酸化を打ち消す”効果があるので、熟成がゆっくりと進むのです。 そして、 ボトルの中では、アルコールと酸(酒石酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸など)が酸素を仲立ちとして結合し、「エステル」という物質に変わりますが、このエステルは果実系の強い香りを持ち、それ自体が結合したり、分解したりを繰り返すことで、香りは常に微妙に変化していきます。 ●“こどもの日”には誕生年のワインを! 子どもの誕生を記念してワインを購入するなら、ボルドーのプリムールをまずチェックしましょう。プリムールとは樽熟成中のワインを先行販売するボルドー独自のシステムで、日本ではエノテカ(株)や、(株)徳岡が行なっています。ちょうど2006年ヴィンテージ(2006年生まれの方に)のプリムール予約を開始しています。6月中旬くらいにトップシャトーの価格が決まる見込みですが、購入することが決まれば、“2008年の春頃”、ワインがお手元に届きます。ヨーロッパの風習同様、気張って1ケース単位で購入できればベストでしょうが、1本でも大丈夫。長期保存も寺田倉庫のように温度、湿度ともにきちんと管理してくれる保管場所もあるので、購入後も安心できます。 オールドヴィンテージのワインを探すのであれば、海外酒販のサイトの検索をお薦めします。 成人式やシャプティエ然りの結婚式など、子どもの成長に合わせて、ストックしておいたヴィンテージワインを開けて祝う! これは夢のあるすてきなことです。
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