現在位置:asahi.com>食>コラム>ワインの歳時記> 記事 ![]() 旬の果実を使ったカクテル、今なら“ベリーニ”2007年07月10日 果物屋さんの店頭に並べられた、みずみずしいフルーツ。その甘やかな香りはどれも魅力的ですが、なかでも気になるのは旬の“白桃”。ま〜るくて、淡いピンク色の愛くるしい桃は、桜やロゼ・シャンパンと同じく、心ときめく対象です。カクテルに変身させてもお洒落(しゃれ)ですよ!
●ヴェニスの『ハリーズ・バー』から生まれたカクテル 白桃を使ったカクテルの名は“ベリーニ”。イタリアのヴェニスにある有名なハリーズ・バーの初代ジュゼッペ・チプリアーニが考案したカクテルで、15世紀の画家ジョヴァンニ・ベリーニの作品からヒントを得て命名したと言われています。 カクテルに関する著述は数知れずという洋酒研究家の福西英三先生から「安西水丸さんが翻訳した『ハリーズ・バー(アリーゴ・チプリアーニ著・にじゅうに刊)』は読んだ?まだならぜひお読みなさい。なかなかの力作で面白いよ」というご連絡をいただき、ハリーズ・バーに興味を持ったのが、本が刊行された直後の1999年春。この時に、ベリーニ誕生秘話を知りました。 「イタリアでは6月から9月まで、桃が豊富に穫れる。(中略)小さな白桃をピューレして、プロセッコを加えてみた。この新しいカクテルを試飲した人たちの評価は好評で、カクテルは“ベリーニ”と名付けられ、その日以来、ピンク色をしたこのシャンパン・ベースのカクテルは、ハリーズ・バーの文化の一部となった(同書から抜粋)」 ●チプリアーニ社製プロセッコから作った“ベリーニ” 1999年は拙著『おいしい映画でワイン・レッスン』の執筆作業をしていた時期だったので、いろいろな情報を集めていたのですが、当時、有楽町にあったエノテカではイタリアワインフェアを実施しており、その一環として、「ハリーズ・バー直伝のベリーニ」と言ううたい文句で、カクテルの実演、販売をしていました。 ベースになるワインは、イタリア北東部の土着ぶどう「プロセッコ」から造られる辛口のスプマンテ(イタリア産スパークリングワイン)で、チプリアーニ社製プロセッコでした。エノテカのバーでは、まず、そのプロセッコを金魚鉢のような形の、丸くて薄いガラスのボウルに入れ、かなり長い時間回していました。これはデモンストレーションの意味合いもあったようで、スワリングしていたのは、ワインの泡を飛ばすことが目的とのこと。この後、白桃のジュースを加え、攪拌(かくはん)してグラスに入れて出来上がり。桃の香りあふれる軽快なカクテルでした! ●銀座のバーでいただいたクラッシュアイス入りの“ベリーニ” つい先日、「ワインの歳時記」用の画像づくりを兼ねて、銀座のバー「山下」に行き、久々に旬の“ベリーニ”を堪能してきました。オーナーの山下さんは、小ぶりの白桃1個、ピッコロサイズのシャンパン(画像にある赤いパイパーエドシック)、アイスクラッシャーで細かく砕いた氷、ガムシロップを用意して、早速ベリーニを。 まず、8等分した白桃をミキサーに入れペースト状にしてから、シャンパンを40ミリリットル弱入れて攪拌。その後、ガムシロップで甘さを微調整して、再度クラッシュアイスをミキサーの3分の2程度まで入れ、フタをして5秒。舌先に感じるクラッシュアイスの小さな塊のコリコリとした食感がうれしい桃のカクテルが出来あがりました。今風の“ベリーニ”です! ちなみに、ハリーズ・バーではピンクの色付けと糖分の調整に「グレナデン・シロップ」を使っているようです。 ヴェネト産のプロセッコが入手しにくい時は、バー「山下」のように、シャンパンを使うことをお薦めします。昨今、200ミリリットルのシャンパンや、187ミリリットルのカバ(シャンパンと同じ製法で造られたスペイン産スパークリングワイン)も多く出回っていますので、カクテル作りにはとても便利です。 前述の福西先生は「ベリーニの作り方は時代によって少しずつ変化しているようだ。グラスについて言えば、ハリーズ・バーでは昔から12オンスのタンブラーを使っている。気取らずに楽しむのがベリーニだよ」とおっしゃっていました。 旬の白桃が出回るこの時期、オリジナルのベリーニを作って、甘やかな香りに酔ってみてはいかがですか。 【簡単に楽しむベリーニ】 グラスに3分の1の量のピューレした白桃を入れ、その上からプロセッコあるいはシャンパンを3分の2の量を注ぎ、軽くすくうように混ぜる。甘味の調整はグレナデン・シロップあるいはガム・シロップで。 【ベリーニ作りにお薦めしたいアイテム】 〈イタリア〉
〈フランス〉
〈スペイン〉
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