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コラム「ワインの歳時記」

コルク派? それとも代替栓派?

2007年07月24日

 コルク樫の樹皮から生成されるコルクはワインにとって最適な栓になっています。世界中のワイン生産者は当然のこととしてコルクを使ってきましたし、ソムリエたちにとってコルクは芸術的なパフォーマンスを披露するための大事な小道具でもあります。ところが、1980年代以降、コルク臭問題が取りざたされるようになり、コルクに代わる新しい栓が登場してきました。

写真オーストラリアのリースリング
写真グロセットのワイン&1976年、1980年のワイン
写真SC仕様のオーストリー&神の雫のBN
写真シャブリの畑
写真2種類のワイン(コルクとSC)

●ワインに果実味もなく平坦でカビ臭かったら

 コルクで打栓されたワインはボトルの中でゆっくりと酸化していくことで、さまざまな芳香をそなえた、やわらかな味わいに変化していくのですが、時として、果実味もなく、味わいも平坦で、閉め切ったコンクリート造りの建物に感じるようなカビ臭いワインに出会うことがあります。

これは欠陥ワインのひとつで、コルク臭(注)と呼ばれるものです。コルクで打栓したボトルの5〜6%に発生していると言われています。ワイン生産者は可能な限り良質なコルクを入手し、コルクが汚染されていないかどうか検査し、打栓して出荷していますが、それでも、コルク臭の発生を100%防ぎ切れていないのが現状です。

●代替栓の筆頭はスクリューキャップ

 オーストラリアでは1980年代からスクリューキャップ(SC)を導入していましたが、市場での受けがいまひとつ芳しくないこともあり、しばらくの間、低迷していました。世間の注目を集めることになったのは、南オーストラリア州クレア・ヴァレーのワイン生産者たちの“ある行動”。十数社のワイナリーが一斉に、SCで打栓した2000年ヴィンテージのリースリングをリリースしたのです。衝撃的な出来事でした。リーダー役のジェフリー・グロセットさんは「2000年ヴィンテージの70%をSCでボトル詰めしましたが、2週間で完売しました」と語っていました。これを契機に、オーストラリアやニュージーランドのワイナリーではSCを本格的に採用するようになります。

●伝統国フランスでも最高級ワインにSCを使用

 一昨年、オーストラリアワイン事務局の日本代表ベンジャミン・ホルトさんが現地から1976年と1980年ヴィンテージのSC仕様のワインを取り寄せ、プレスを対象にしたテイスティングセミナーでそれらを供出してくれたのですが、25年以上経過しているにもかかわらず、ワインは品質、保存状態ともに健全でした。

 2003年にオーストラリア産のSC仕様のリースリング1980年を飲み、そのワインに満足したのはフランスのミッシェル・ラロッシュさん。彼はヨーロッパにおけるSCの推進派であり、2002年ヴィンテージからご自身が造るトップクラスのワイン、シャブリ・グラン・クリュ『レゼルブ・ドゥ・ロベディアンス』にSCを導入しています。コルク栓とSCの2タイプを生産していましたが、2004年ヴィンテージからコルクを廃止、SC一本で行くことに決めました。

●「レゼルブ・ドゥ・ロベディアンス2002」のSCとコルクの比較試飲

 昨年3月、ラロッシュさんが来日して、日本ソムリエ協会の小飼一至会長とSCについての対談をしました。席上、「レゼルブ・ドゥ・ロベディアンス2002」の栓違いを飲み比べてみたのですが、色調にも味わいにも明確な違いが出ていました。SCは輝きがある若々しいイエロー、フレッシュで果実味もあり、生き生きした酸がとても印象的です。口中に広がるミネラル感も心地よく、上品さがありました。コルクのほうはすでに熟成に入っていて、SCのタイプより黄色が強く、口中でまったりした味わいを感じました。私はどちらかと言うと「コルク派」なのですが、SC仕様のワインはとても新鮮なイメージです。

 ラロッシュさんは「SCに変えてからコルク臭によるクレームはゼロ」とおっしゃっていました。2002年から始まった代替栓への挑戦には満足しているようです。

 記念すべき日に大事に保存していたワインを開けてみたらコルク臭だったとか、ワイン生産者が丹精込めて造ったワインがコルク臭に汚染されていた、という話を聞くとガッカリします。コルク臭は、空気媒体でも起こりうるため、「コルク栓だけにコルク臭が発生する」とは言いきれませんが、代替栓にシフトした生産者の多くは、今までの悩みから開放され、喜んでいます。次回はSC以外の代替栓、また新しい栓に対する消費者の反応などについてフォローしておきたいと思います。

(注)コルクそのもののにおいではなく、2,4,6―トリクロロアニソール(TCA)に代表されるベンゼン核に塩素イオンが結合した化合物に起因する異臭。収穫したコルクの表層部分をコルク栓に成形後、雑菌と漂白の目的で次亜塩素酸ナトリウムナトリウム水溶液処理することで、コルク栓に残留した塩素が、瓶熟成期間中、ある種のカビによってTCAに変換されて発生する。(出典:ワインの事典 柴田書店)

【お薦めしたいスクリューキャップ仕様の白ワイン】

フランス 暑い夏にはミネラル感のある

  • ドメーヌ・ラロッシュ・シャブリ・グラン・クリュ・ロベディアンス 

オーストラリア 酸味のメリハリが効いた

  • グロセット・ポーリシュヒル・リースリング 

スクリューキャップの推進派が造る

  • ウルフ・ブラス ゴールド・ラベル・リースリング 

リースリングは初めてという方に

  • ルーウィン・エステート・アートシリーズ・リースリング 

ニュージーランド チャーミングで万人向きな

  • クラウディ・ベイ ソーヴィニヨン・ブラン 

  • ヴィラ・マリア ソーヴィニヨン・ブラン 

プロフィール

青木 冨美子(あおき・ふみこ)
慶応義塾大学卒業。(社)日本ソムリエ協会機関誌編集長http://www.sommelier.jp。NHK、大手洋酒メーカーを経て、現在、フリーランス・ワインジャーナリスト。1990年(社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー資格取得。著書に『おいしい映画でワイン・レッスン(講談社刊)』協力執筆『ワインの事典(柴田書店)』監修『今日にぴったりのワイン(ナツメ社)』など。女性誌への執筆、各種企業向けワイン講師のほか、現在、昭和女子大学オープンカレッジの講師として活躍中。個人のBlogは『青木冨美子の公式Blog』

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