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コラム「ワインの歳時記」

夏は“氷”と“バニラアイス”でシェリーを楽しもう

2007年08月21日

シェリーはスペイン南部アンダルシア州にあるヘレス周辺で造られるアルコール強化ワイン(注)です。日本のレストランでは食前酒としてドライな「フィノ」をお薦めすることが多いようですが、シェリーには辛口から甘口までいろいろあります。その魅力をお伝えするために、まずは親しみやすい軽快な「辛口」と、至福の「極甘口」タイプからお話を進めてみたいと思います。

写真ドライタイプのシェリーはパロミノ種から造られます
写真色の変化に注目!前列フィノから3列目20年熟成のシェリーまで
写真シェリー特有の香りをつくるフロール
写真見事な技師ベネンシアドール
写真バニラアイスとの相性抜群のペドロ・ヒメネス

●スペインのヘレスではシェリーしか出てこない!

2001年9月、ヘレス原産地呼称統制委員会からヘレス視察のお誘いを受け、初めてヘレスを訪問しました。当時の私は、食通たちが語る「シェリーの食欲をそそるようなイースト香は素晴らしいですな」という言葉が良く理解できず、「まあ、シェリーが苦手でも、スペインにはカバ(スペインのスパークリングワイン)があるからシェリー攻めにあわない限り大丈夫」と高を括(くく)っていたのですが、現地入りしてびっくり。研修のためのセミナーは当然としても、ランチ、ディナー、夜のバル巡り、すべての集いに登場するのはシェリー、シェリー、シェリー! シェリーしか出てこない!

●シェリーって、どんなお酒?

シェリーは英語読みです。スペイン語ではヘレス、生産地は内陸の「ヘレス・デ・ラ・フロンテラ」、海寄りの「エル・プエルト・デ・サンタマリア」と「サンルーカル・デ・バラメダ」で、この地の最高気温は40度。海から吹いてくる湿気の多い風と内陸から吹く乾燥した風がぶどうの生育に大きく影響しています。

そのぶどうたちは「パロミノ」「ペドロ・ヒメネス」「モスカテル」の3種類で、9割以上は辛口タイプ用に造られるパロミノ種、その他の2種類は甘口に仕立てられます。

 辛口の一番メジャーなシェリーは麦わら色でアーモンドのような香りがする「フィノ」です。ヘレスだけに生息するといわれている自然酵母が、仕込んでいる樽(たる)やタンクのワインの液表面を被(おお)いつくし、ワインを空気と遮断してしまうことで、独特の香りと味わいを醸し出します。これがフロール(「花」の意味)と呼ばれるもので、フィノから「パンを焼いたような酵母の香り」が感じられると言われる理由がここにあります。

●「シェリーはどうも」と言う方にお薦めしたいマンサニーリャ

現地でシェリー攻めにあっていた私は、いつでもどこにでも出てくるイベリコ・ハムとフィノを合わせているうちに、シェリーへの抵抗感は完全に消えていました。短期間とはいえ、太陽がまぶしくて、日本の夏と同じく、べた〜っとした湿気が特徴のヘレスで過ごしたことで、長い歴史の中から生み出されたワインと食材の渾然一体としたすごさに洗脳されてしまったのです。

夏の季節には「フィノ」をガンガンに冷やしたり、氷を入れたり、ソーダ割にしたりして楽しめます。

個人的には、「フィノ」に似た「マンサニーリャ」がお薦めです。三つの産地の中でも海寄りのサンルーカルの醸造所で熟成させたものだけを「マンサニーリャ」と呼んでいます。軽快で、若干の塩気を感じる味わいは、スペイン産ハムやチョリーソ(ソーセージ)、魚介類のフライやオイルサーディンのように脂分の多い食材と合わせるとその良さがよくわかります。口中サッパリ、爽快(そうかい)な気分になれますよ。

●バニラアイスと極甘口シェリーの名コンビ

片や、極甘口シェリー「ペドロ・ヒメネス」との出会いは、日本橋高島屋で開催していたスペインフェアのお手伝いをさせていただいた頃にさかのぼります。デパートのワイン仕入れ担当者から「これ、黒蜜」と言って差し出された黒褐色の液体。ドロドロで、京都『鍵善』の「くずきり」に添えられた黒蜜そのものでした。そして、ひとくち飲んで、ここでもびっくり! 単に甘いだけでない、豊潤な味わいのシェリーがあることをこの時初めて知りました。

6年前はちょうど、ヘレスを去る最終日の最後の晩餐(ばんさん)ならぬお別れ会で、ペドロ・ヒメネスが登場してきました。“バニラアイスにペドロ・ヒメネスをかけた”すてきなデザートです。「甘いものは苦手で」という男性陣にも大ウケで、全員がこの組み合わせにノックダウンされていました。

ヘレスでの人気の定番を体験して以来、多くのお仲間に紹介している私ですが、オープンカレッジではスペインワインが出る回になると、皆さんに食べていただきたい一心で、ついつい用意してしまうクセが出ています。極甘口タイプは開栓してから、1〜2カ月は十分に持ちますので、一度お試しくださ〜い。

2001年の体験後、辛口シェリーは料理と合わせるとさらに楽しめることがよくわかりました。特に中華料理との相性は抜群です。また、おすしやお刺し身、焼き魚などとも良く合います。食欲の秋を迎えた頃、今度はより熟成が進んだアモンティリャードやオロロソについても触れたいと思います。

(注)醸造工程中にブランデーまたはアルコールを添加してワイン全体のアルコール分を高めたもので、コクがあり、通常のワインよりも長期保存に耐えられる。

【お薦めのシェリー】

〈暑い日にはオンザロックやソーダ割で〉

  • サンデマン ドライ・フィノ
  • ドン・ゾイロ フィノ
  • ペドロ・ドメック ラ・イーナ

〈イベリコハムやオイルサーディンに合わせて〉

  • ゴンザレス・ビアス マンサニーリャ・エル・ロシオ
  • ボデガス・イダルゴ・ラ・ヒターナ マンサニーリャ・ラ・ヒターナ

〈バニラアイスクリームにかけて〉

  • エミリオ・ルスタウ ペドロ・ヒメネス サン・エミリオ
  • サンチェス・ロマテ ペドロ・ヒメネス カルデナル・キスネロス

プロフィール

青木 冨美子(あおき・ふみこ)
慶応義塾大学卒業。(社)日本ソムリエ協会機関誌編集長http://www.sommelier.jp。NHK、大手洋酒メーカーを経て、現在、フリーランス・ワインジャーナリスト。1990年(社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー資格取得。著書に『おいしい映画でワイン・レッスン(講談社刊)』協力執筆『ワインの事典(柴田書店)』監修『今日にぴったりのワイン(ナツメ社)』など。女性誌への執筆、各種企業向けワイン講師のほか、現在、昭和女子大学オープンカレッジの講師として活躍中。個人のBlogは『青木冨美子の公式Blog』

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