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アメリカ市場を一変させた「イエローテイル」、熟成のきわみ対極にある「グランジ」2007年09月18日 オーストラリアは広大です。ニュー・サウス・ウェールズ(以下NSW)州の東端にあるオペラハウスで有名なシドニーから、西オーストラリア州西端のパースへは747型ジェット機で4時間。国内移動と言っても日本とはけた違いの広さですね。
●可愛いワラビーがアメリカのワイン市場を変えた
同国に生息する動物たちの中でも、特に可愛らしいと評判のロックワラビー。このワラビーの“黄色い足”にちなんで命名された「イエローテイル」は発売後、わずか2年足らずでアメリカ市場を席捲(せっけん)し、フランス産&イタリア産ワインを押さえてブランドトータルで輸入ワインNo.1の座を射止めてしまいました。
「イエローテイル」は2001年6月、NSW州にあるカセラ・ワインズが初リリースしたワインですが、その販売戦略は他社のそれとはひと味違っていました。同社の成功を分析した『ブルー・オーシャン戦略(ランダムハウス講談社刊)』によると、「誰もが気軽に楽しんで飲めることを目的に造られたワインであり、その戦略は同業他社と争って顧客を奪い取るのではなく、従来からビールやカクテルに親しみ愛飲していた人々をワイン市場へと引き込み、新たな客層を開拓した」ことを挙げています。
●低タンニン、ソフトな酸味、果実の甘さ
まろやかな口当たりで果実味のあるイエローテイルをオープンカレッジで出したことがあります。銘柄を隠したブラインドですが、ワイン入門者からは「飲みやすくておいしい」と好評でした。ヘビーユーザーである生徒たちからは「少し甘すぎ」との声が出ていましたが、果実味があるのでべたべたした甘さにはならず、総括として「リーズナブルだし、たまに飲むなら良いのでは」という結論になりました。
カセラ・ワインズは本来ワインの特徴となるべき「タンニンの抽出やワイン熟成」といった要素を取り除き、「低タンニン(渋味の刺激が穏やか)、やさしい酸味(残糖が1リットル中8〜10グラムなので普通のワインより甘味があり、酸を意識しなくてすむ)、果実味豊か」を重視し、イエローテイルをボージョレ・ヌーボーのように短期間で飲み切るタイプのワインに仕上げました。
爆発的売れ行きを示した米国市場での調査からわかったことは、テーブルワインを購入していた初心者が頻繁にワインを飲み始め、低価格ワインの購入者がそれより高いワインを買い、高級ワインの飲み手がイエローテイルをたしなむという現象だったそうです。これはカレッジでの意見と重なる部分でもあります。
●イエローテイルと激辛クラブとの相性はお薦め!
昨年2月、カセラ・ワインズを訪問し、ワイン醸造施設を見学しましたが、正直言って巨大なタンクばかりが目につきました。世界最速の瓶詰ラインでは1秒間に10本という目にも止まらぬ速さ! 年間1,000万ケースの生産体制には、この速度でなければ追いつかないのでしょう。
製造工程だけでなく、「実際料理と合わせてどうか」ということで、今年は3月に同社の輸出担当のリチャード・オーウェン部長とシドニーにある『Harry’s Singapore Chilli Crab』で激辛の味付けクラブとイエローテイル・シラーズとの相性をみました。これは絶賛です! ワインの果実味とカニの辛みが口中で渾然(こんぜん)一体となり、超お薦めのマリアージュになりました。
●移民たちによって発展したオーストラリアのワイン産業
ヨーロッパから入植した人々は、自分たちが生まれ育った懐かしい故郷をしのび、ぶどう畑を開拓していきます。前出のカセラ・ワインズはイタリア系、巨大なワイン醸造施設を構えるウルフ・ブラスや、バロッサを守った伝説の男ピ−ター・レーマンなどはドイツ系です。また、同じバロッサにあるオーストラリアワインの最高峰ペンフォールドはイギリス系、他にも多くの素晴らしい生産者がいますが、彼らの努力によってオーストラリアワインは飛躍的な発展を遂げました。
●熟成を経て本領を発揮するペンフォールドの「グランジ」
オーストラリアワイン史上、欠かせないのがペンフォールドです。現在、4代目チーフワインメーカーのピーター・ゲイゴ氏が名門ワイナリーの顔として活躍していますが、銘醸ワイン誕生の陰には著名なワインメーカーの存在があり、ワインについても、ヴィンテージ情報から、土壌の特徴、栽培&醸造のプロセス(樽の使用率と熟成期間)、ぶどう品種とその比率に至るまで細かく記されています。
昨年、ゲイゴ氏の来日セミナーで、「グランジ」と「セント・ヘンリー・シラーズ」の比較試飲をしましたが、“熟成を経たワインの香味”に改めて感嘆し、特に「グランジ」が本領を発揮するまでには30年近い年月が必要なんだと再認識した次第です。
米国市場でヒットしたイエローテイルは、グランジのように熟成させる必要もなく、ぶどう畑の情報も極力減らしています。目を引くオレンジと黄色のデザインや、シンプルなラベルはユーザーにとって選択しやすい要素になっているようです。ワインメイキングに関しては対極にある「イエローテイル」と「グランジ」。オーストラリアの自由さを知るには丁度良い例かも知れません。
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