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コラム「ワインの歳時記」

シェリーの味わい&幅広さは、食欲の秋にこそよくわかる

2007年10月23日

 ここ2〜3年スペインバルが人気なので、それに伴ってアルコール強化ワインのシェリーにも注目が集まっています。8月第3週の『ワインの歳時記』ではフィノやマンサニーリャ、香りを生み出すフロール、また夏に合わせた楽しみ方などについて触れました。第2弾の今回はシェリーに関する総決算! 食欲の秋にこそ、度量の広いシェリーをお試しくださ〜い。

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ヘレスの収穫祭「ぶどう踏みの儀式」、スペインには美人が多いんです

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2001年の訪問時、ドメック社の樽熟成庫で見つけたジャン・コクトーのサイン入りの古樽

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フィノ・タイプに良く合うホセリートのハモン・イベリコ(生ハム)、トップレストラン御用達だけあって食感が違います!

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エミリオ・ルスタウ社のオロロソと豚の角煮を合わせて。口中でとろける感触が最高

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お気に入りの機関誌の表紙。ベネンシアドール&シェリーが登場しました!

●爽やかなフィノ・タイプは海の幸と合わせて

 フィノやマンサニーリャは爽やか&軽やかタイプです。平目の白身に軽くレモンを搾ってフィノと合わせたり、塩焼きにした魚や新鮮なお刺身にわさびを添えてマンサニーリャと合わせたり、海の幸とすっきり爽やか系のフィノタイプは良く合います。

 私はマンサニーリャを飲んだ時に口の中がサッパリする感じが好きなのですが、それを確かめるにはイカの塩辛とあわせるのが一番! 生臭さが一瞬で消えてしまいます。

 本場スペインでもマンサニーリャは人気が高く、シェリー委員会日本代表の明比淑子さんによると、消費量はスペイン全体で54%、ヘレスに限ってみると何と70%近いとか。一口飲んだ後、さらに次の味を引き立ててくれる旨さはさすが、人気者になるのもうなずけます。

●コクとボディのオロロソ・タイプ

 オロロソは色が濃い目でボディもしっかりしています。フィノやマンサニーリャは熟成期間中、常にフロールの膜が発生し、それがワインに独特の風味を与えてくれますが、オロロソは18度までアルコール強化してしまうのでフロールが発生せず、ワインは空気に触れ、酸化しながら熟成していくことになります。

 そのオロロソは「オロール」(スペイン語で“匂い”)に由来するだけあって、イイんだなぁ、甘やかな香りが。私はオロロソの香りをきくといつもうっとりしてしまいます。

 画像のシェリーはオロロソ、(株)八田が扱うエミリオ・ルスタウ社のアルマセニスタのものです。通常、シェリーは大手メーカーが生産者からシェリーを買い上げブレンドして、メーカー独自の味わいに仕立てていくのですが、アルマセニスタは生産者が造ったシェリーをブレンドすることなく、そのまま瓶詰めした、日本で言うなら「地酒」のようなシェリー、ワンランク上のオロロソです。

●すぐに応用できるお薦めマリアージュ

 オロロソと料理のマリアージュについて、先の明比淑子さんや(株)八田の敏腕営業レディーは口を揃えて「肉類、特に赤身肉がお薦め!」と断言しています。おふたりからいただいたお薦めマリアージュを書き出してみると……。

 まずはヘレスのお得意、腎臓のオロロソ煮込み、オックステイルのオロロソ煮込み、牛肉のオロロソ煮込み。赤ワインではなく、オロロソで作ると、酸味が少ないので、すごくまろやかでソフト、リッチな仕上がりになります。そして豚の角煮、シンプルならアモンティリャード(※)、スパイシーさがますにつれてオロロソに移行。アモンティリャードはオロロソより辛口度が高いので、煮込みよりは、少し繊細さのあるものが良く、シンプルな鉄板焼きの牛肉などにはアモンティリャードがオシャレ。焼肉の場合は味が濃いのでオロロソ。すき焼きにもオロロソ、お鍋に少しオロロソを加えると一段と旨みが増します。

 すぐにでもお試しいただけるものばかりです。中華料理も肉系のものがお薦めで、特に甘味のある濃厚なソースがかかった料理と良く合います。開栓後、冷蔵庫で保管しておけば、1カ月以上は楽しめるのも魅力ですね。

●シェリーと言えばベネンシアドール

 その昔、カップは銅製、長い柄はクジラのヒゲで作られていた“ベネンシア”も、今ではステンレスとグラスファイバー製になっています。そして、この“ベネンシア”を扱う職人がベネンシアドール、その名はアベネンシア(“協定、合意”の意味)に由来しています。

 世界に先駆け、2002年から日本で開始されたのが『ベネンシアドール公式称号資格認定試験』で、すでに60名ものベネンシアドールが誕生しています。この数字は本場ヘレスより多いそうです! 試験はシェリー&マンサニーリャ原産地呼称統制委員会とスペイン貿易庁およびスペイン大使館経済商務部主催で行なわれ、チャレンジャーは1次試験(筆記)を通過した者のみ、実技が試されることになります。

 いかにスピーディに切れ味良くグラスにシェリーを注ぎ入れるか。回を重ねるにつれ、難易度もアップしてきました。ここ2〜3年、グラスを1度に3脚持ってシェリーを注ぐパターンになりましたが、選手の技量は十分、それはそれは見事です。

 シェリーの知名度向上で、パーティーやイベントでのベネンシアドールの実技披露の依頼も増えているとか。11月、12月はベネンシアドールの登場を華にするのも一興かも知れません。

※フィノだったワインが熟成途中でフロールを失い、オロロソのように酸化熟成したタイプ。へーゼルナッツのような香り。コンソメの隠し味に使ったり、熟成タイプのチーズとの相性が良い。

【お試しいただきたいシェリー】

▽海の幸なら

  • ライネラ・ペレス・マリン社 ラ・ギータ・マンサニーリャ
  • ボデガス・マリア・デル・ピラール・ガルシア・デ・ヴェラスコ社 マンサニーリャ・ラ・シガレラ

▽肉系料理なら

  • エミリオ・ルスタウ社 アルマセニスタ・オロロソ・デ・ヘレス・パタ・デ・ガリーナ
  • ゴンザレス・ビアス社 アルフォンソ
  • ウイリアムズ・ハンバート社 ドン・ゾイロ・オロロソ
  • サンチェス・ロマテ・エルマノス社 ラ・サクリスティア・デ・ロマテ・オロロソ30年

▽赤ワイン漬けのオレンジ(デザート)

  • ハーベイ・ブリストル・クリーム

プロフィール

青木 冨美子(あおき・ふみこ)
慶応義塾大学卒業。(社)日本ソムリエ協会機関誌編集長http://www.sommelier.jp。NHK、大手洋酒メーカーを経て、現在、フリーランス・ワインジャーナリスト。1990年(社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー資格取得。著書に『おいしい映画でワイン・レッスン(講談社刊)』協力執筆『ワインの事典(柴田書店)』監修『今日にぴったりのワイン(ナツメ社)』など。女性誌への執筆、各種企業向けワイン講師のほか、現在、昭和女子大学オープンカレッジの講師として活躍中。個人のBlogは『青木冨美子の公式Blog』

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