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堂本尚郎画伯とシャトー・ムートン・ロートシルト、そしてオーパス・ワン2007年11月06日 ボルドーのトップシャトー「シャトー・ムートン・ロートシルト」(※1)の故フィリップ・ド・ロートシルト男爵のこだわりのひとつがラベルでした。1924年、図案デザイナーのジャン・カルリュが描いたラベルを使って以降、1946年からは毎年世界の芸術家たちの未公開作品を使用しており、画家たちはテーマとなる「ぶどう樹」や「飲む喜び」、また、ムートン(mouton)の象徴である「羊」などを自由な発想で描いています。
●シャトー・ムートン・ロートシルトのラベルを描いた芸術家たち 最初の10年ほどはフィリップ男爵が親しくしていた芸術家仲間のジャン・ユーゴ(1946)、ジャン・コクトー(1947)、アルニュルフ(1950)などを使い、1955年にジョルジュ・ブラックが挿画を引き受けてからは、ダリ(1958)、セザール(1967)、ミロ(1969)、シャガール(1970)といった著名画家が続き、ラベルはさらに魅力あるものになっていきます。さぞかし、多くの謝礼が支払われるのでは、と想像してしまうところですが、意外や、金銭の授受などはなく、「画家がデザインしたヴィンテージのワインと、その画家が所望する他のヴィンテージを各1ケース」なのだそうです! ●文化功労者の堂本画伯は1979年のラベルを描いて 3日の「文化の日」、画家の堂本尚郎氏は文化功労者に選ばれました。堂本画伯は日本人で初めてシャトー・ムートン・ロートシルトのラベルを描いた人です! 私は残念ながら面識はありませんが、仕事でお世話になっているグラフィックデザイナーの麹谷宏先生から伺った話では……。 ムートンから電話で「絵を描いて欲しい」との依頼を受けた堂本氏は、描く場所について質問しました。壁画のようなスケールを想像していた氏は、「ワインボトルのラベルに」というムートンからの返事に戸惑い、「そんなところには描けない」と言って断ったそうです。ところがその後、ラベルの歴史や実際のワインを見て驚き、急きょ、承諾の返事をしたとか。 記念のヴィンテージは1979年になります。奇しくも日本での干支(えと)も「未(ひつじ)」。余談ですが、その12年後の1991年、やはり未年に日本人女性で初めて挿画を担当したのが節子バルテュスさんです。ミレニアムを記念した2000年ボトルはムートン美術館所蔵のアウクスブルクの羊をモチーフにした特殊加工の豪華なプリントボトルで、金色の羊の細工は実に見事です! ●フィリップ男爵とモンダヴィが実現させた最高のワイン「オーパス・ワン」 カリフォルニアのワイナリーの中でも圧倒的な存在感を示すオーパス・ワン。そのオーパス・ワンはフィリップ男爵とナパの先駆者ロバート・モンダヴィとのジョイントベンチャーによって誕生しました。双方の創造性の賜物「最高の品質」を目指したワインには、“Opus One”(作品番号1)という名が付けられました。 創立当初からすべて双方のパートナーシップ下で管理されてきたワイナリーですが、モンダヴィが買収されたことで、現在では独立した経営方針を取っています。新CEOにはモンダヴィ傘下でマネージメントの経験を積んできたデヴィット・ピアソン氏が、2001年からワインメーカーとして同ワイナリーで活躍していたマイケル・シラッチ氏が最高醸造責任者に就任しています。 ●オーパス・ワンの初ヴィンテージは1979年! 11月2日、オーパス・ワン・ワイナリーから前述の首脳陣が来日し、エノテカ主催でワインセミナーが開かれました。供出されたワインは1979年、1986年、1987年、1997年、2001年、そして最新ヴィンテージ2004年までの6種類。1979年を始めとするオールドヴィンテージがマグナムサイズだったこともあり、熟成状態は極めて良好、特に1979年の色調の若々しさには驚きました。 マグナムサイズ(1500ml)とレギュラーサイズ(750ml)を比べた場合、2倍の容量の差があるので、セラーの温度変化をゆっくりと吸収することになり、ワインの液量が多いほど温まったり冷えたりするのに時間がかかるので、そのため大容量ボトルのほうがゆっくり熟成させることができるのです。 フィリップ男爵の遺した偉大なワイン「シャトー・ムートン・ロートシルト」と「オーパス・ワン」。ラベルにこだわってきた男爵へのオマージュとして、前者には逝去した年の1987年ヴィンテージに肖像画を挿画しています。後者には初リリースから横顔のシルエットが描かれています。
※1:ボルドー地方メドック地区ポーイヤック村のシャトー。1855年の格付けでは第2級のトップであったが、1973年に第1級に昇格。記念すべき1973年のラベルには美術館所蔵のピカソの「踊るバッカス」が使われた。
参考文献:ムートン・ロスチャイルドラベル原画作品集
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