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コラム「ワインの歳時記」

大容量ボトルで味わうワインのだいご味

2007年11月20日

 先週、ワインボトルにからむラッキーな出来事がありました。15000mlの巨大なテタンジェのシャンパンに遭遇し、その味わいを堪能できたことと、解禁日に比較試飲したルイ・ジャドの容量違いのプリムール(新酒)体験です。

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「ナビュコドノゾール」のシャンパンをサービスする剣持シェフソムリエ Photo by Bekey

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テタンジェでは「マチュザレム」サイズまで瓶内で2次発酵をさせています

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テタンジェのカーヴにずらりと並んだ「ドゥミ・ブティユ」から「ナビュコドノゾール」までのボトル

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ルイ・ジャドの「ジェロボアム」サイズのボージョレ・ヌーヴォー、味わいが違います

●テタンジェ・ブリュット・レゼルヴNVは通常のボトル20本分!

 テタンジェのシャンパンは、昭和女子大学オープンカレッジの講座生Y君の結婚披露宴の席に供出されたもので、新郎の父君が30年ほど前に現地を訪問した際、購入してきた年代もの。ただ、保管場所は“ワインセラー”などではなく、ファミリーの団欒(だんらん)の場である“居間”だったので、多分にオブジェ的役割も担っていたようです。温度管理が徹底していなかったこともあり、シャンパンを開栓するにあたってY君も「劣化している可能性もあるので、余興のつもりで」と話していました。

 ところが、開けてびっくり! ボトルからグラスに注がれたシャンパンはコハク色を含んだ黄金色で、ボディと複雑味を備えたコクのある上質な味わい! 気泡はワインに溶け込み、クリーミーな食感です。さらに素晴らしかったのは、メイン料理のグリエした和牛ととても良く合っていたこと。なまじの赤ワインもお手上げ状態で驚きの連続でした。

 会場は恵比寿の『ジョエル・ロブション』、剣持春夫シェフソムリエの落ち着いた抜栓フォームはさすが見事で、印象に残る思い出の一コマになりました。昨日開かれた『ミシュランガイド東京2008』の出版パーティで、同レストランがミシュランの「三つ星をゲット」という超ホットな嬉しい情報も入手しましたので書き添えておきます!!

●シャンパンの古酒からはコーヒーやモカの香りが

 以前、ワイン醸造家の安蔵光弘氏が、「シャンパンの古酒からはコーヒーやモカっぽい香りがします」とおっしゃっていたのですが、今回飲んだシャンパンの印象は、まさしくその通り! また、「ワインボトルの容量が大きいとボトル内の液体が受ける温度変化もゆっくりなので熟成も穏やかに進みますよ」とご教授くださったことも、「なるほど」と納得できるもので、安蔵氏のおっしゃっていた事柄が実証された出来事でした。

 巨大なボトルのシャンパンを味わう、ましてや30年を経たシャンパンをテイスティングするなどということは一期一会の体験だと思います。シャンパンはとても奇麗な熟成状態で、その熟成に貢献していた「炭酸ガス」と「上質な酸」の存在を明確に感じました。グラスから気泡は見えませんでしたが、炭酸ガスが長期にわたり殺菌作用を発揮していたこと、また、上質な酸がワインを長持ちさせていたことがわかります。シャンパーニュ地方を出て東京に運ばれてきたシャンパンは30年を経て栓を抜かれたわけですが、テタンジェの醸造責任者の“ブレンドの技”には脱帽です!

●ボトルの容量はキャールからナビュコドノゾールまで

 せっかくの機会ですから、ボトルの呼称と容量(単位はml)を書き出してみます(出典:ソムリエ教本)。最小容量は「キャール」188、「ドゥミ・ブティユ」375、「ブティユ」750、「マグナム」1500、「ジェロボアム」3000、「レオボアム」4500、「マチュザレム」6000、「サルマナザール」9000、「バルタザール」12000、そして最大容量「ナビュコドノゾール」15000、これはレギュラーサイズ20本分であり、その名はバビロン王に由来しています。

 テタンジェのカーヴにはレオボアムを除くドゥミ・ブティユからナビュコドノゾールまでのボトルが並んでいます。瓶内2次発酵はマチュザレムまでで、それ以上の大容量サイズは、瓶内2次発酵をしたボトルを開けて詰め替えて出荷するとのこと。Y君の披露宴に登場したボトルもそうですね。

●ボージョレ・ヌーヴォーのジェロボアムの試飲

 ボージョレ・ヌーヴォーの解禁日、ルイ・ジャドの新酒をレギュラーサイズと、その4本分に当たるジェロボアムサイズで利き比べしてみました。口中での印象が明らかに違います。容量の大きいジェロボアムのほうがエレガントでなめらか、酸の広がりもソフトです。レギュラーサイズは、ベリー系果実が前面に出ており、酸味がハッキリしています。

 私がワイン業界に参入して間もない頃から、いつも的確なアドバイスをしてくださる岩田勉大先輩は2つを比べ、「レギュラーサイズのほうは果実味やタンニン分を感じるが、ジェロボアムサイズはフレッシュ&フルーティな味わいで飲みやすく、時間の経過とともに、最初感じなかったガメ種の特徴であるイチゴのキャラクターがはっきり出てくる。醸造家が相当気を遣って醸造を手がけていることがわかるね」とコメントしてくれました。

 その昔、「大きいことは良いことだ」というCMがありましたが、大容量ボトルのワインは味わいが違います。そこで、子どもの誕生を記念してワインを購入する方たちにお薦めしたいのは「シャンパンの大容量サイズ」、一味違います! もちろん、大容量ならスティル・ワインでも!!

【お薦めワイン】

  • テタンジェ・ブリュットNV
  • ルイ・ジャド・プリムール

プロフィール

青木 冨美子(あおき・ふみこ)
慶応義塾大学卒業。(社)日本ソムリエ協会機関誌編集長http://www.sommelier.jp。NHK、大手洋酒メーカーを経て、現在、フリーランス・ワインジャーナリスト。1990年(社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー資格取得。著書に『おいしい映画でワイン・レッスン(講談社刊)』協力執筆『ワインの事典(柴田書店)』監修『今日にぴったりのワイン(ナツメ社)』など。女性誌への執筆、各種企業向けワイン講師のほか、現在、昭和女子大学オープンカレッジの講師として活躍中。個人のBlogは『青木冨美子の公式Blog』

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