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日本には、昔から言い伝えられてきた「おばあちゃんの知恵袋」のような、食に関する言葉がたくさんあります。これらの言葉は、科学的にもきちんとした根拠があり、道理にかなっているということがほとんどです。ここでは、これらの食に関すること わざや格言などからおいしさを再発見してみます。 鳶(とび)に油揚げをさらわれる2007年10月05日 「鳶(とび)に油揚げをさらわれる」
当然自分が手に入れるはずのものを、思いがけず横あいから奪われ、呆然とすること。 普段の無秩序な食習慣がたたったのか、ある時、入院する羽目になってしまった。入院中の楽しみである朝、昼、夕の食事には、油揚げが多種にわたり本当にうまく使われていた。油揚げの材料は、周知のとおり大豆であるが、大豆食品は高蛋白の健康食品であり、さらに安価であるという利点もあって、病院食には多く利用されているようである。 さて話を本題に戻すが、「鳶(とび)に油揚げをさらわれる」である。鳶は本当に地上数10メートルの上空から急降下して、点にも見えない獲物を捕らえる。以前ケニヤの日本大使公邸に出向していた職員から、ケニヤ人は2キロ先のキリンが道路を横断するのが見えるという話を聞いたことがあるが、鳶の視力はこの何倍も優れていることが推察できる。さらに、あるテレビ番組で、本来は肉食の鳥である鳶が油揚げを食べるのか調べたところ、本当に油揚げを食べたそうである。 油揚げは先にも記したとおり大豆から作られる。「稲荷ずし」をはじめ、関西では、浪花のファーストフードともいえる「きつねうどん」、その他、いろいろな料理に使われている。日本料理では油揚げを使った料理を「信太(しのだ)」、「信田(しのだ)」と呼ぶ。「きつねうどん」は「信太うどん」、「稲荷ずし」は「信太ずし」とも呼ぶのである。これは、歌舞伎や浄瑠璃で「芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)」(通称「葛の葉」)として度々上演されている信太妻(しのだづま)の物語から取ったものである。 平安時代中期の陰陽師である安倍晴明の父、安倍保名が信太山(現在の大阪府和泉市にある)の森の中で狐狩りのために殺されかかった白狐を助けたところ、この白狐が美しい女の人に化け、恩返しに来た。彼女は葛の葉と名乗り、やがて保名と結ばれて妻となり、晴明を出産する。月日が流れ、幼い晴明が母の影に狐を見て驚いたため、これを恥じた葛の葉は障子に「恋しくば 尋ね来て見よ 和泉なる 信太の森の 恨み葛の葉」と書き残して信太の森に帰ってしまう。幼い晴明が母を恋しがるので、ある日保名が晴明をつれて信太の森に行くと、葛の葉が現れて晴明に「知恵の玉」を授ける。これが世にいう「葛の葉子別れ伝説」である。この話から狐の住む信太の森の名を取り、俗に狐は油揚げを好むといわれるので、油揚げを使った料理を「信太」と呼ぶようになったのである。 その後、晴明は京都に上って陰陽道と天文学を極め、陰陽道の大家として貴族世界に重んじられ、子孫の土御門家は後々まで陰陽頭として栄えていったのである。 油揚げは、料理にコクをつけたり風味を増すのによく使われる。野菜や乾物を具材とする味噌汁や炊き込み御飯を作るときは、油揚げを刻んで加えると、油揚げの油分のおかげで一段とコクと風味が増すのである。また、「狐酒」と呼ばれるお酒がある。これは熱湯をかけて油抜きした油揚げをよく焼いて器に入れ、熱燗にした日本酒を注いだものである。この場合、薄揚げよりも厚揚げを使う。こんがり焼いた厚揚げの香ばしさと大豆の甘みがかすかに日本酒に移り、非常に美味しくなる。酒を飲んだ後は、この厚揚げに少し醤油をたらして肴としてもよいだろう。 プロフィール
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