現在位置:asahi.com>食と料理>教えてランチ> 記事 〈教えてランチ〉心から刺し身が食べたくなる店2007年12月27日 東京・中目黒 七舟 読者からの情報をもとに取材、紹介する「教えてランチ」です。(アサヒ・コム編集部)
「おやじさんの目利きの刺し身がとても破格な価格で味わえる。量もすごい。お薦めの刺し身は盛り合わせ。他店で食べたら2千円は下らない品数と量が950円で味わえます」(東京・ペンネーム w201e190さん) 東急・東京メトロ中目黒駅から2分ほど。駅を出て大型の商業ビルを横目に歩くと、目黒銀座の商店街の入り口近くにある、赤ちょうちんの店。昔ながらの、こぢんまりとした居酒屋が「七舟」だ。 店主の仲田光男さん(70)は以前この場所で、魚屋「目黒鮮魚」を営んでいた。駅前の再開発で、戦後から続く飲み屋街が消えたのが、約20年前。数十件あった飲み屋が一遍に姿を消した。鮮魚店の得意先がなくなったのだ。 いっそ移転も考えたが、「得意の魚で飲み屋をやったらどうだ」と、それらの飲み屋に勧められ、居酒屋を開いたのが1989年。見よう見まねで始めた居酒屋。試行錯誤を繰り返し、店をたたんだ人たちにも教えられ、駅前の「魚屋さん」はいつしか「刺し身屋さん」と呼ばれる飲み屋になった。 昼も夜も、メニューはひたすら魚、それも刺し身。シメサバ、ブリ、アジのたたき、マグロ、メバル――。これがこの日のランチメニュー。刺し身は毎日6種あるというから、連日でも通える。カウンターのネタケースの中の皿にあらかじめ盛られた刺し身は、どれも大盛り。「これで1人前ですかって驚かれることもあるんですよ」と、二人三脚で店を切り盛りする妻の茂子さん。ご飯、みそ汁、小鉢が付いて800円。 正直どれも食べたい。ここは、おすすめにもあった、950円の刺し身盛り合わせしかない。マグロ、ホタテ、ホッキ貝、甘エビ、ウニ、メンタイコ……。さっそくぷりぷりの刺し身にワサビをちょこっと付け、熱々の白いご飯と一緒にほおばる。うまみと甘みが口中に広がる。 新鮮なおいしさは、17歳で住み込みの魚屋に入り、魚を扱って50年以上になる仲田さんの経験のたまものだ。 午前11時半。店を開けるや、常連客がなだれ込む。ネタケースにあった刺し身はどんどんと無くなっていく。「40食分のご飯が無くなり次第、終わりです」というから、早めに行くのが確実だ。早いと12時45分に終わることも。 そして、冬場限定のもう一つの楽しみはカキフライ。これまた大ぶりのフライが四つのって950円。刺し身盛り合わせとカキフライは数量限定。 ランチ営業のみの土曜日は、つみれ汁がサービスで出る。残った魚を全部使い切って、何も残さないためという、うれしい工夫だ。 夜も刺し身がほとんど。あとは少々の煮物。焼き物はない。どれも500円から700円という値段で、10種類ほどが選べる。「夜はご飯が無いから、食べたければ持ち込みもかまいませんよ」と茂子さん。 お皿に乗る、刺し身の量はお店を始めた約20年前から変わらない。「安くて、たくさん食べてもらいたいんだ」という仲田さん。高い魚こそ出せないが、そのときにいい魚を選んで買い求める。70歳を超えた今でも、毎日自ら築地に足を運ぶ。そして、お店は夫婦2人だけでやる。無駄は出さない。それが、長く続いた秘密。 来年金婚式を迎える2人。「あと何年できるかなあ」。調理場の仲田さんは包丁を手に笑った。
【メニュー】各種刺し身定食が6種、800円から。刺し身盛り合わせは950円。アジフライ、カキフライ(冬場のみ)950円。 |