【茨城】(日立市)街がたり人がたり スイーツ工房2007年05月07日 JR日立駅近くのホテル天地閣の裏にある小さな洋菓子店。入居する雑居ビルの古めかしさや周りの静寂さと対照的に、花びらをちりばめたような色鮮やかで出来たてのケーキが並ぶ。スイーツ工房「モルトボーノ」=旭町2丁目。イタリア語で「とてもおいしい」という意味がある。
家族連れやOLらがひっきりなしに訪れる。オープンキッチンでは、すべて女性の厨房(ちゅうぼう)スタッフがかいがいしく作業している。「出店当初よりずいぶん上達しましたよ」。スタッフたちの様子を見ながら目を細めるのが井端久泰(ひさひろ)さん(41)。全国各地の洋菓子店で商品開発やプロパティシエの指導を手がけている。 ホテル天地閣が「地元の雇用に貢献しよう」と始めた。昨年4月から主婦ばかり約10人が集まり、井端さんのもとで修業。井端さんが日立駅に降り立った時の潮の香りと、海岸で見つけた貝殻をヒントに開発した「NAGISAシュークリーム」などを作り、ホテルロビーで販売していた。 そんな店に強い追い風が吹く。TBSで昨年9月4日から10月27日まで放送された昼のドラマ「スイーツドリーム」。井端さんがドラマでスイーツを監修し、ドラマの中に「NAGISAシュークリーム」とその開発現場である茨城の海沿いのホテルが登場。主人公も台詞(せりふ)で「いま日立にいます」と、ほのめかした。 放送後にはシュークリームの売り上げが倍増。「番組のエンドロールでホテルの名前が出たからでしょうか。テレビってすごいですね」。工房社長の小笠原諭(さとる)さん(33)は振り返る。 昨年10月21日、現在の店舗に移った。シュークリームはたいてい、午前11時の開店後2、3時間で完売する。「とにかく基本的な作業を体で覚えさせた」という井端さんの厳しい指導のもと、最初は1日30〜50個程度しか作れなかったが、今では1日400個をこなすほど、主婦たちも力をつけた。 「プロから学べることに魅力を感じて」と、スタッフに加わった吉沢広子さん(45)。10年ほど前からお菓子教室などで学び、自信があった洋菓子作りだが、「井端さんと同じようにやっているのに、うまくいかないことばかりだった」。 矢代千鶴さん(43)は週3日ほど、朝5時に起床して家族の弁当と夕食を作ってから店に向かう。うまく出来ずに怒られ、「今日こそずる休みしよう」と思ったこともある。「それでもなぜか来ちゃうんですよ」 そんな2人はこう口をそろえる。「もっと上手にお菓子を作りたくて」。「家庭もあるし、子どももいるのにがんばっている。みんな同じ気持ちじゃないですか」と矢代さんはスタッフの気持ちを代弁する。 販売員2人を含めた女性13人を束ねる小笠原さんは、「一人ひとりの個性を引き出したい。モルトボーノで仕事ができてよかったと自信を持ってもらえる店にしたいですね」と話す。 「お菓子作りはお客様に夢を与える仕事」と井端さん。そんなプロ意識が、パートの主婦たちにも浸透しつつある。「秋には、日立だけじゃなく茨城を代表する名菓を作りますよ」と井端さんは目を輝かせた。 この記事の関連情報 |