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築120年の古民家、手作り石窯で焼くピザ

2007年11月13日

 福島県会津美里町の山あいに、築120年の古民家で味わう石窯ピザの店がオープンし、話題を集めている。オーナーは脱サラして東京から移住してきた伊藤道人さん(57)と妻の敏恵さん(54)。コクのあるトマトソースや香り高いオレガノは隣の畑で作った有機野菜を用い、石窯も近所の人の力を借りた手作り。「体に安心で身近な素材を使った食事を、心穏やかになるこの場所で楽しんで欲しい」と、再チャレンジに目を輝かす。

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焼きたてのピザを運ぶ伊藤道人さんと敏恵さん(奥の2人)。添加物のない素材で作るピザは「胃にもたれない」という=福島県会津美里町宮川の「くるみの樹」で

 JR会津若松駅から車で30分。山あいを縫うように走る国道401号沿いの集落の中に、ひっそりとたたずむ店は「くるみの樹(き)」。6日に開店したばかりだ。

 朝7時半に自宅を出て、帰るのは日付が変わってからという猛烈サラリーマンだった道人さんに、転機が訪れたのは2年前。会津若松市に残した両親がいずれも認知症になったためだ。進む病状に最期をともに過ごしたいと、27年の会社員生活に別れを告げた。

 退職金をはたき、畑が300坪ある古民家を買ったのも、土が身近にある生活で両親の病状を改善させることができれば、との思いからだった。しかし、ふたりは昨年、相次いで亡くなる。

 「何のために帰ってきたのか。一時は東京に戻ろうと思った」。ぼうぜんとする道人さんに、敏恵さんは持ちかけた。

 「石窯のピザ屋をやりましょう」

 東京都板橋区で暮らしていたころ、ピザ店を経営する友人がいた。また豊かな木々があふれた会津では薪を使った石窯で焼く店が、とても似つかわしいように思えた。

 「この土地と出会ったのも何かの縁。働ける場がないなら作ればいいし、畑と町をつなぐ何かができればと思った」

 敏恵さんは自然食品の店や共同作業所の厨房(ちゅうぼう)で修業を始めた。当初は抵抗を示していた道人さんも畑を耕し、サポートに回った。

 今春、自宅を店舗に改装し始めると、聞きつけた集落の人たちが次々に協力を申し出てくれた。「目玉」の石窯は、もともと炭焼きをしていたという隣人が、こともなげに引き受けてくれた。会津若松市の郊外、芦ノ牧温泉の陶芸家が使わなくなった耐火れんがをわけてくれ、4カ月かけてみんなで手作りした。

 料理の素材は国内産の小麦粉、エビは養殖でない天然ものを取り寄せ、タマネギやニンジンは自宅の畑や地元の有機農産物の生産者から。とくに野菜は、化学肥料や農薬を使っていない「有機JAS(日本農林規格)認定」のお墨付きだ。

 ピザは敏恵さんが生地をこね、道人さんが窯に出し入れする。銀座で飲み歩くことはあっても料理は苦手だったという道人さんは今では、すっかりエプロン姿が板についている。

 「何より目標ができたことが楽しい。まだまだ試行錯誤ですが、自分に『大地に根を下ろした生き方』ができるか、挑戦の日々です」

 営業は、定休日の火曜、水曜を除く午前11時〜午後3時。ミックスピザ1200円、オーガニックコーヒー600円など。問い合わせは、同店(0242・53・2805)へ。

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