食ニュース【熊本】美味&エコ 阿蘇あか牛が人気2008年03月31日 阿蘇の草原で放牧される「あか牛」の人気がじわりと広がっている。消費者の霜降り志向から脂(サシ)が多い黒毛和牛に押されっぱなしだったが、赤身肉のうまみがプロの料理人に評価されてきた。地元の草で育つ特性から、日本の食べ物のあり方や地球環境を食卓から考える題材にも使われている。
「さっぱりしているのに柔らかいと、特に年配の方に好評です」。大阪市の中心部に店を構えるイタリア料理店、ポンテベッキオ本店の土谷哲平料理長(30)はあか牛をこう評価する。 7年ほど前から使っている。炭火焼きが定番メニュー。イタリアの肉をイメージし、脂の少ない赤身の肉を探し続け、たどり着いたのがあか牛だった。「赤身の味が濃い肉は日本では希少。こんな肉が増えてほしい」 福岡市の西鉄グランドホテルは5〜6月、各レストランであか牛料理を出すイベントを開く。フレンチを長年手がけてきた磯山俊二総料理長(60)は「肉の味はしっかりあるのに後に残らず、前後の料理の味を殺さない。何より、健康に育った牛であることがいい」と言う。 使うのは、南阿蘇畜産農協(高森町)が地元の草を多く与えて育てた牛だ。磯山総料理長は何度も阿蘇に出かけ、育つ様子を見てきた。「まだ知名度が低く供給量も少ないが、いつ産山村の標高700メートル近くにある井(い)信行さん(73)の畜舎。裏手の草地を母子の牛が軽快に動き回っていた。 「高い霜降りを誰もが買うわけない」と井さん。地元の草やわらなどの主に粗飼料で育てることにこだわってきた。出荷前の約半年間だけ、トウモロコシなど濃厚飼料を多く与える。 97年に仲間の農家4人で任意組合をつくり、販売も手がける。固定客が増え、大分・湯布院の旅館や県内外の洋食店から注文が来るようになった。 市場ではサシの多い肉のほうが高く売れるため、阿蘇でもあか牛を畜舎に入れっぱなしにして、脂肪のつく濃厚飼料を多く与える農家が多い。もっとサシを、と黒毛和牛に変える農家も増えた。 井さんに続いてきた産山村の上田尻牧野組合(15人)と農家2軒は今年から、冬場以外はほぼ全期間にわたる放牧を始める。確かな手応えを感じているからだ。 百貨店の大丸は02年から関西の7店舗で、同組合の育てたあか牛の肉を販売しているが、07年度の売り上げは前年より3割伸びた。担当者は「消費者の求めるものは確実に変わってきている」とみる。 か、あか牛を定番メニューにしたい」 環境にやさしいという視点で、あか牛の良さを評価する意見もある。「あか牛の『フード・マイレージ』を通して日本の食料事情のいびつさが見える」。食べ物が食卓まで運ばれた距離を知り、環境とのかかわりを考えようと、中田哲也さん(九州農政局消費生活課長)は提唱する。 フード・マイレージは、輸送量と輸送距離をかけた数字をトン・キロメートル(t・km)という独自の単位で表す。食料の輸送量と輸送距離が増えれば燃料を多く使い、排出される二酸化炭素も増えるという考え方が根底にある。 中田さんは、畜産用濃厚飼料のトウモロコシのほとんどが米国から輸入されていることに着目した。産山村の牛が地元の草だけで育った場合と、米国産トウモロコシだけで育った場合を想定し、熊本市で消費者が手に取るまでの飼料も含めたマイレージを試算。肉1キロのマイレージはそれぞれ0.37t・km、216t・kmと600倍の差になった。 中田さんは「経済効率だけでなく、環境という物差しでも食べ物を見れば、地元の草を食べて草原維持にも役立つあか牛は、食と農のあり方を考える大きなヒントになる」と話す。 この記事の関連情報 |