「一年中、病気との闘い」と枝切りする飯塚俟偉さん=日の出町大久野
今年は豊作――。庭師の傍ら約25年間リンゴ栽培を続ける飯塚俟偉(まつい)さん(66)=福生市在住=の笑顔がこぼれる。秋の収穫を迎えると、めったに車も通らない日の出町大久野にある畑の前に、週末だけの直売所を構える。23日が今年最後の店開きだ。(上林格)
小金井市出身。戦時中に生まれ、戦後の食糧難を経験した。「冬に食べたリンゴの甘さが忘れられない」。オートバイのエンジン設計や教育書籍の販売など職を変えたが、リンゴの木に実をならせる夢は持ち続けた。
福生に移り住んだ30代のころ、新聞で矮性(わいせい)リンゴの存在を知った。小型のまま木が成熟する性質があり、広い土地も必要ない。ちょうど学習塾を経営していて昼は時間がつくれるため、都内の果樹試験場などに通って栽培法を学んだ。
日の出町に耕作地を見つけたのは40歳ごろ。つるが生い茂る山の斜面約1500平方メートルを切り開き、長野から買い付けた苗木を5本、10本と植えていった。
だが、そこからが悪戦苦闘の連続だった。3、4年でようやく実がつくようになるとカラスの大群に襲われた。翌年はタヌキがやってきた。畑の周りをブリキで囲い、木の上にはネットを張った。
89年は全滅だった。ある夜、畑を見回りにいくと、大きな夜蛾(やが)の大群がリンゴの実の汁を吸っていた。日没とともに現れ、明け方に飛び去る。目の細かいネットに張り替えた。次はアナグマ。囲いのブリキを土中深く差し込んでも、その下を掘って侵入してきた。わなを仕掛けて捕まえた。ハクビシンは手ごわかった。ネットのわずかなすき間から侵入し、少しずつ荒らしていく。気づいた時には1本がまるまる食べ尽くされている。ネットのすき間を補強した。
様々な被害を切り抜け、リンゴの木は現在150本になった。20本は1本1万円を出資する「オーナー」がいる。10年前には畑の前に直売所をつくった。昨年は天候不順で不作だったが、今年は3トンも収穫した。特にフジの出来がよかったという。
「夢はかなったけど病気への対応など世話に手間がかかる」と苦笑いするが、表情は明るい。
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