収穫期を迎えたブドウ畑。農家の雨宮昭仁さんは「1房ずつ大切に育て上げた、子どものような存在」と言う=07年9月、笛吹市一宮町田中
みずみずしいブドウ。消費者が持つイメージは様々だ
〈聞くアスパラ〉12粒のぶどう
■よく食べる50代以上 年間の回数、若い世代少なく
ブドウは日本人に好まれているのだろうか――。朝日新聞甲府総局が、インターネット会員制サービス「アスパラクラブ」を通じて、全国3550人に聞いたところ、40代を境にブドウの消費傾向が違うことが分かった。若い世代ほどブドウを食べない。なぜなのか。また農家はそんな消費者に対応できているのか。
■皮むくのが面倒? 種なしならばOK
ブドウの「好き」「嫌い」を尋ねたところ、3550人のうち、3113人(87.7%)が「好き」と回答した。ただ、注目は、どれぐらいの頻度でブドウを食べるかだ。
1年間にブドウを何回食べますか――。
「11回以上」食べる人が1349人(38.0%)と最も多く、次いで「6〜10回」の942人(26.5%)。「3〜5回」は903人(25.4%)だった。ブドウはよく食べられているように受け取れるが、年代別にみると、50代以上と40代以下では、全く違った特徴があった。
50代以上の人たちは、「11回以上」など、食べる回数が多かった。ところが30、40代は、「11回以上」と「3〜5回」で肩を並べる。20代は、「11回以上」も「1〜2回」も、20%台だった。40代以下では年齢が低くなるほど、食べる回数が少ないという傾向がみられた。
「3〜5回」と回答した埼玉県行田市の江森庸介さん(30)は「若い人は、皮をむかなくてはならないので面倒くさいということもあるのだろう」と話す。
一方、「6〜10回」と答えた東京都調布市の自由業の女性(47)は、ロザリオビアンコが好きだ。理由は「皮がむきやすく、食べやすいから」と言う。兵庫県西宮市の会社員高田容司さん(49)は「短時間で食べることができない。忙しい世の中には受け入れにくいのかもしれない」と話している。
どうすればブドウが食べやすくなりますか――。
「種なし」と答えたのが1145人(32.2%)で、「皮も食べられる」が1065人(30.0%)。突出して多かった。甲府市の主婦加賀美洋子さん(61)は「手は汚れるし、一粒一粒食べるのが面倒くさいのかな」と受け止めている。
「ブドウのある食卓」はどのような食卓だと思いますか――。
自由記述をしてもらったところ、「ゆとり」「豪華」「ぜいたく」「家族だんらん」といった言葉が目立った。ブドウは東京都内のスーパーでは1房千円や800円で売られており、高級感が漂う。
■生産者 消費者の変化、対応難しく
笛吹市一宮町田中の雨宮昭仁さん(33)は祖父の代から続くブドウ農家。「果物の中で、栽培には最も手間ひまがかかる」と話す。
農家の高齢化は進み、後継者不足で耕作放棄地が増えている。県内では1997年に6万5500トンあった生産量は、07年には5万1400トンにまで落ちた。
ロザリオビアンコや甲斐(かい)路などの品種を開発し、年間約6万〜7万本の苗木を販売している植原葡萄(ぶどう)研究所(甲府市)の植原宣紘所長(68)は「時代によって消費者の要求が変わる。消費者の要望に生産側が応えきれていない」と厳しい。
ただ生産者側も、消費者の嗜好(しこう)に合わせ、品種改良は進めてきた。59年に開発されたジベレリン処理による種なし化で、種なしブドウは主流になった。欧州系の甲州からデラウエアへ、さらに90年代後半から巨峰の時代になった。最近はより大粒のピオーネが伸びている。
「皮も食べられる」ブドウについて、植原所長は「欧州と異なり、日本は雨が多く、皮ごと食べられる品種の栽培は難しい」という。実が割れやすいからだ。同研究所が開発した「マニキュアフィンガー」は、国内ではあまり広がらず、知らないうちに中国で栽培されるようになった。「『美人指』と呼ばれ、爆発的人気を得ている」(植原所長)という。
ブドウの木は、一般的に30〜40年は持つ。冒頭の雨宮さんはこうも言う。
「新しい苗を植えるにはそれなりの覚悟が必要。長い付き合いになるので、消費者のニーズによってころころ変えられないのも事実です」
■プロに聞く 味の秘密
アンケートで関心が高かった項目について、関係者からそれぞれアドバイスをもらった。
◆新鮮さや甘さなど、おいしいブドウの見分け方には、三つのポイントがあるという。
(1)茎が緑色でみずみずしい。
(2)粒が均一で色が濃い。
(3)果粉(表面の白い粉)がたくさんついている。
(県果樹食品流通課の担当者)
◆甘さと酸味の関係は、収穫時期や食べ方にポイントがある。
ブドウが熟してくると糖度が上がってきて、酸度は下がっていく。一般的には8月中旬、糖度と酸度が逆転する。
また、ブドウの粒の果肉のうち、種の周りは比較的酸度が高い。欧州では、ブドウの種を出さず、果肉をかまずに種ごと食べてしまう習慣がある。山梨でも種ありブドウは、種ごと食べるのが一般的だ。口の中で種と果肉を分けると酸味を感じやすい。
(フランス留学経験のある今井裕景・サドヤ代表取締役)
◆「種なし」「皮ごと食べられる」品種で、国内販売されているものはあるのか。
欧州種で、1979年に交配した瀬戸ジャイアンツ(通称・桃太郎)や、88年に交配したシャインマスカットなど、「種なし・皮ごと」の品種が最近、ブドウ農家の間で注目を集めている。
(植原葡萄研究所の植原宣紘所長)
シャインマスカットは、岡山県や山形県など各地で競って産地化を進めている。島根県のホームページには07年11月、栽培希望者の説明会の報告として、こう書いてある。
「シャインマスカットの栽培は全国で一斉に始まるので、高品質なものを安定的に生産できる態勢を早くから整えた産地が販売量や単価の面で圧倒的に有利となる」
■笑顔生まれる食卓のヒロイン
◆「ブドウのある食卓」はどのような食卓だと思いますか――(自由記述回答)
▽食後のちょっとぜいたくなデザート(兵庫県西宮市、30代女性)
▽幸せな食卓(東京都目黒区、40代男性)
▽家族だんらんのイメージ(埼玉県行田市、70代男性)
▽上中流家庭向きフルーツ(大阪市、40代女性)
▽ゆとりと落ち着きのある食卓(東京都瑞穂町、50代男性)
▽食費に余裕がないと買えない(兵庫県西宮市、40代女性)
▽食後のデザートとして、ブドウが小鉢にある風景は、至福のひととき(名古屋市、50代男性)
▽ちょっと高級な、お客のいる日の食卓(埼玉県所沢市、70代女性)
▽食後にブドウとチーズとクラッカーを用意して赤ワインを楽しむのが大好き(福岡県宇美町、30代女性)
▽山盛りのブドウが食卓にあるだけで楽しい雰囲気になる(神奈川県横須賀市、70代男性)
▽鍋に近い感覚がある。たわいもない話をしながら、巨峰など大きなブドウを家族で食べるイメージ(神奈川県茅ケ崎市、30代男性)
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