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痴呆も種類いろいろ、治るものも 正常圧水頭症
 髄液抜いて、症状を改善


水頭症患者の髄液シャント手術
  

 お年寄りが元気をなくし、関心や意欲が薄れて、ぼんやり過ごすことが多くなると、痴呆(ちほう)が疑われる。アルツハイマー型痴呆や脳卒中後遺症がよく知られているため、「痴呆イコール治療困難」と思われている。しかし、実際には「特発性正常圧水頭症」など治る痴呆がいくつかある。あきらめるのは早い。

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 70代の知人が昨春から急に足が弱り、無気力になった。娘(医師)が「水頭症では」と気づき、秋に東京の大学病院で手術を受けた。「ぼんやりが晴れた」(本人)、「別人のよう」(家族)と喜ぶ。本が読め、外出もできるまでに快復した。

 お年寄りの歩き方がぎこちなくなり、ぼんやりし、尿をもらすようになる。家族は「年だから」とあきらめがちだが、ひょっとして「治る痴呆」の代表「特発性正常圧水頭症」の可能性があるかも知れない。「手術を受けず、そのままだといずれ、本当にぼけて寝たきりになる。見逃されている患者さんを一人でも減らしたい」と、北野病院(大阪市北区)の石川正恒・脳神経外科部長は機会あるごとに訴えている。

 水頭症は脳の中や周囲にある脳脊髄(せきずい)液(髄液)が多くたまる病気だ。大人で起こる、脳圧があまり高くない「正常圧水頭症」の大半は、くも膜下出血や頭のけが、髄膜炎などの後遺症として(=続発性)流路が詰まって起こる。ところが、症状は同じだが特別な原因がないのに(=特発性)起きるものが約1割あり、特発性正常圧水頭症と呼ばれている。

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 歩行障害、軽い痴呆、尿失禁が正常圧水頭症の3大症状だ。なかでも、小刻みですり足、よちよち歩きなどの歩行障害はほぼ全員に見られる。余分な髄液を管を引いておなかに流す髄液シャント手術で、どの症状も改善する可能性がある。

 「残念ながら医師でさえ、この病気をよく知らない」と、石川さん。薬が効かないパーキンソン病患者と思い、詳しく調べたら水頭症だった、などは日常的な話だ。患者は痴呆の5%、全国で8万人と推定されるが、ほとんど手術を受けていない。そこで、石川さんが中心の日本正常圧水頭症研究会委員会が医師向けの診療ガイドラインを企画、5月初めに出版(メディカルレビュー社)にこぎつけた。

 ガイドラインや石川さんの話によると、3大症状が一つ以上あり、画像診断で脳室の拡大が確かめられ、先行する病気がなければ特発性正常圧水頭症が疑われる。患者の腰椎(ようつい)に針を刺し脊髄に流れている髄液を30ミリリットルほど抜く試験をして、歩行障害が改善すれば、手術の効果が期待できる。

 脳外科医の慣れもあり、脳室と腹腔(ふくくう)を結ぶシャント手術()が多い。頭とおなかに小さな穴をあけ、脳室と腹腔からそれぞれシリコンの管(外径3ミリ程度)を耳の後方の皮下まで通す。2本の管はそこでバルブでつなぎ、脳室の余分な髄液が腹腔まで流れ落ち、吸収されるようにする。最近は腰椎から腹腔に流すシャント手術もある。

 髄液が流れすぎると、脳の血管が引っ張られて出血する。固定式バルブ時代は合併症の慢性硬膜下血腫が多かったが、流量を外から調節できる可変式バルブが中心になって激減した。

 手術ですっかり良くなる人もあれば、変わらない人もいる。石川さんによれば、歩行障害は9割は改善する。尿失禁の改善率は5割、痴呆も時間がややかかるがやはり5割ぐらいだ。

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 慢性硬膜下血腫も「治る痴呆」の一つだ。脳が萎縮(いしゅく)すると骨とのすき間が広がる。頭を打ったり、動かしたりした時に脳が動き、血管が切れてじわじわ出血。脳圧が高まって痴呆につながる。「ぼけ症状に手足のまひ、頭痛が加わる時は可能性がありますね」と石川さん。

 北摂総合病院(大阪府高槻市)の中野次郎理事(内科)によると「治る痴呆」には、うつ病や甲状腺機能低下症のほか、睡眠薬や血圧などの薬の不適切な使用も含まれる。

 孤独な高齢者が家にじっとしているとうつ病になりやすい。不眠を訴え、医師が睡眠薬などを出すとさらに拍車がかかる。

 甲状腺ホルモン不足は女性に多い。話がゆっくりになり、皮膚が乾燥する。血液検査で簡単にわかり、ホルモン剤で見違えるように改善する。

 高血圧が続くと痴呆になる一方で、降圧剤の使いすぎも逆効果だ。「治る痴呆を見つけるのは医師の重要な仕事だ。問診や観察力が要求される」と、中野さんは話す。

 身近なお年寄りに痴呆が疑われたら、きちんと診察を受け正体を確かめることが重要だ。

(2004/06/07)








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