|
国内で使われている乳房X線撮影(マンモグラフィー)装置のうち、厚生労働省の指針が定める仕様基準を満たさない古い装置が半数近くを占めていることが、明らかになった。基準外の装置で撮影すると画像が不鮮明になることがあり、技量のある技師が撮影しないと乳がんを見逃す可能性が高くなる。厚労省は、X線撮影を全面的に導入する方針だが、仕様基準を満たしていない市町村の検診センターもあり、態勢の整備が急がれる。
日本乳癌(にゅうがん)検診学会などが作る「マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(精中委)」のまとめによると、02年12月現在、全国に約2830台ある装置のうち、基準を満たしていない装置は約1400台に上った。市町村立の病院などが多く、大学病院も約30施設(分院含む)あった。
基準は日本医学放射線学会が定めたものを00年3月、厚労省が指針として採り入れた。線量を安定させる装置の装備や、乳房への圧力の表示など9項目ある。8社27機種が基準に合格している。基準に満たない装置は古い機種がほとんどで、現在は販売されていない。
精中委の教育・研修委員会委員長を務める国立名古屋病院放射線科の遠藤登喜子医師によると、技師の技量にもよるが、基準外の装置は線量が一定でなかったり、弱かったりすることから、ぼやっとした画像になることがあるという。「検診で要精密検査となっても、精密検査を担当する病院のX線撮影がずさんで、『異常なし』とされる例も多い」と指摘する。
市民の集団検診を実施する千葉県内の検診センターでは、10年前に購入した基準外の装置を使用している。担当者は「毎年点検はしているが、古くなれば性能は悪くなるのは確か。自動現像器もないため、画質の維持に苦労している」と認める。ただ、X線撮影装置は1台約1000万円と高価なため、すぐに買い替えられないという。
装置が基準を満たしていても、撮影する技師の腕や、現像器やフィルムの精度により、画質が悪い場合も多い。精中委では01年6月から、各医療機関の撮影フィルムを点数化し、合格点に達した医療機関を認定施設としているが、認定施設は全国に約180施設しかない。
<解説>
厚生労働省が98年にまとめたがん検診の有効性評価では、乳房X線撮影(マンモグラフィー)を併用する検診のみが「死亡率を減少させる効果がある」とされた。
厚労省は、視触診単独の検診を廃止し、X線撮影を全面的に導入するなどの改革に乗り出した。
X線撮影は(1)撮影技量をもった診療放射線技師(2)X線写真を分析(読影)する技量をもった医師(3)仕様基準を満たす装置――の3点がそろって、初めて効果を発揮する。
装置が古くても、撮影技術である程度はカバーできるが、それだけがんの判明率は下がるとみられる。また乳腺が発達している若い世代は、X線撮影より超音波(エコー)検診の方が効果があるという専門家もいる。
厚労省は、専門家による検討会を10月にも開き、新たな検診方法を年内にも通知する。仕様基準を満たさない装置については、検診で使うことは難しいだろう。
現在、検診の実施主体は市町村だが、それぞれが単独で3点セットをそろえるのは不可能だ。国の財政的な支援を得て、個別検診と集団検診を併用しながら、県単位などで検診態勢を整備することが求められる。
(2003/09/13)
一覧へ>>
|