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《見落とされた乳がん》乳がん専門窓口なのに…「乳腺外科」看板出せず

 「乳がんは、産婦人科じゃないの?」。乳がん検診について寄せられた投書を読むと、乳がんの専門科を産婦人科と思い込んでいた女性がかなりの数に上る。実際には、乳がんを扱うのは外科、しかも「乳腺外科」だ。この乳腺外科をキーワードに歩いてみると、いまの乳がんの置かれている立場が見えてくる。

 東京都内のある病院を訪ねた。病院正面の看板にずらりと診療科名が並ぶ。「乳腺外科」の文字もある。この科名、都の監査のたびに、黒いテープで隠すそうだ。

 乳房は脂肪と乳腺でできている。その疾患を診るのが乳腺外科だ。乳腺科と呼ぶ病院もある。

 病院が公に表示できる診療科は、医療法で38科に限られる。それ以外の診療科名は表示できない。認められている38科には、美容外科、歯科口腔(こうくう)外科など細かい診療科名もあるのに、乳腺外科はない。

 なぜだろう。

 95年、患者の会が「乳がんを何科が診てくれるのか、わかりにくい。乳腺科の表示を認めて欲しい」と国へ要望した。だが、厚生省(当時)の答えは「ノー」。理由は「専門的にみる診療体制が十分整っているとは考え難い」。

 確かに、乳腺専門の医大教授は全国で10人もいない。そのため医学部で乳腺教育を体系的にしている大学も少ない。

 その理由を何人かの専門医に尋ねた。難手術で腕が試される心臓や腹部の手術と比べ、乳がん手術は、切る範囲も小さく複雑でもない。だから、専門にする外科医は少なかったという。乳がんの急増や温存手術の進歩などに伴い、高度な専門性が求められるようになったのは最近のことだ。

 では、乳腺専門医とはどういう医師なのか。

 98年、日本乳癌(にゅうがん)学会は「専門医」制度をつくった。学会歴7年以上、100人以上の手術実績などの条件を満たし、試験に合格すれば専門医になれる。学会員約7千人のうち、専門医は509人。

 しかし、乳癌学会の場合、この「専門医」も公に表示できない。

 小児科など22学会は、専門医を広告できる団体として国から認められているが、法人格を持たない乳癌学会は認められていないからだ。

 乳腺専門医のいる病院をどう調べればよいか。

 広告の制約がないホームページで、乳腺外科を掲げる病院を探すことができる。だが、必ず専門医がいるわけではない。

 九州の総合病院のホームページには、乳腺科の診療日に2人の医師の名がある。1人は学会員だが、専門医ではない。1人は学会員でもない。電話で尋ねると、「2人とも消化器が専門です」。

 「それでも乳腺科を名乗っていいんですか」

 「専門医を入れるかどうか、検討します」

 女性のかかるがんの中で乳がんはトップ。だが専門窓口の「乳腺外科」は追いついていない。

(2003/09/15)


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