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術後の経過観察

聖路加国際病院
乳腺外科部長 中村清吾

手術と術後の再発予防の治療を無事に終えると、二度とこのような目には遭いたくないと、強く心に誓うのは当然の心理です。これまで、あまりに不摂生であった人にとっては、体を休めるゆとりを持つこと、バランスの取れた食事を摂ること、適度に運動を行うこと―これらは、生活習慣病の予防にもつながる一般的なよい心掛けです。しかし、中には、食事と見間違うほどの多量のサプリメントを摂ったり、複数の代替療法に何十万のお金をかける方がいます。薬でも、過剰に服用すれば、様々な副作用がでますし、飲み合わせで、効果が損なわれたり、思いもよらぬ副作用が出ることもあります。サプリメントの中には、代表的な副作用や、一緒に飲んではいけない薬がわかっているものもありますので、主治医に相談してから摂るようにしましょう。ここでのキーワードは、「過ぎたるは及ばざるが如し」です。

さて、再発も、「できるだけ早く見つければ、完全に治せるのではないか?」と、多くの方が、様々な検査を含む定期検診を希望されます。特に、血液を少量採るだけで、簡単に調べられるのではないかと、期待される方が数多くいらっしゃいます。乳癌から血液中に出される特別な蛋白がいくつかあり、これらを総称して、腫瘍マーカといいます。乳癌で代表的なマーカには、CEA(これは、胃がんや子宮がんなど、他の多くの癌でも上昇することがあります)CA15-3(乳癌に特有のマーカです)NCC-ST−439(乳癌で上昇するマーカですが、閉経前では、生理に伴ってわずかに上昇することがあります)などがあり、再発に伴って、様々なパターンで上昇してきます。ここで注意しなければならないことは、再発があっても必ずしも上昇しないことです。事実、乳房の中にはじめて見つかった癌(原発巣という)では、ほとんど上昇することがありません。すなわち、それほど鋭敏な検査ではないので、正常だから癌細胞は体の中に存在しないとはいえないのです。また、上昇してくる場合は、既になんらかの症状(ある特定の場所が常に痛い、咳が治まらないなど)を伴っていたり、多くの場合は画像で特定できます。さらに、腫瘍マーカをきっかけに、多少早めに再発巣が見つかったとしても、残念なことにより良い治療結果に結びつかないこともわかってきました。すなわち、腫瘍マーカであれ画像診断であれ、再発が見つかった場合は、既にかなりの腫瘍量となっており、また、画像で捉えることのできない微小な病巣が他にも潜んでいることを念頭に治療をする必要があるのです。したがって、腫瘍マーカは、再発時に上昇していた場合に、その後に行う治療の効果を判断する目安(下がってくれば効いている可能性が高い)としてのみ有用と、国内外の診療ガイドラインにも書かれています。

もちろん、なにか気になる症状があった場合には、躊躇することなく、主治医に正確に伝え、その原因をつきとめるために要と判断された場合は、しかるべき検査を受けるべきですが、念のためにということで、数ヶ月ごとに検査を受けることは保険医療費の無駄遣いともいえます。その一方で、反対側にできる新たな癌は、早く見つければ、より完全に治すことができるので、年1回のマンモグラフィは、欠かさず受けることが大切です。

再発予防の治療はしっかり受けたと自信を持ち、生きがいを持って、バランスのとれた生活を心掛けることが肝心ではないでしょうか。

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