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その説明、だれのため?
〜 「患者を生きる」 2000回記念イベント(1) 〜

2012年10月25日付 朝日新聞東京本社朝刊掲載記事を拡大

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 連載「患者を生きる」の2千回記念イベント「納得する医療をめざして」が22日、東京都千代田区の秋葉原UDXで開かれました。医師、看護師、薬剤師、患者――。それぞれの立場で参加していただいた4人の方が、連載記事や読者の方からいただいたお手紙などをもとに、医療現場でのコミュニケーションのあり方などを語り合いました。詳細を報告します(進行役は、朝日新聞の医療サイト「アピタル」の平子義紀・編集長、フリーアナウンサー・小林美幸さん)。
出演者のみなさん
秋山正子さん 秋山正子(あきやま・まさこ)さん
1973年、聖路加看護大卒。大阪大医療技術短期大学看護学科をへて、1992年から白十字看護ステーションに勤務。訪問看護師のパイオニア的存在で、いまは同ステーションの統括所長を務めている。著書に「在宅ケアのつながる力」(医学書院)、「在宅ケアの不思議な力」(同)など。「市ケ谷のマザーテレサ」と呼ばれている。
磯部光章さん 磯部光章(いそべ・みつあき)さん
1978年東大医学部卒業後、三井記念病院内科、東大第三内科、ハーバード大心臓内科などを経て2001年から東京医科歯科大の循環器内科教授。日本心不全学会理事長、日本循環器学会理事として、心臓移植委員会の委員長などを務める。2005年、集英社から「話を聞かない医師 思いが言えない患者」を出版した。
小野正弘さん 小野正弘(おの・まさひろ)さん
1962年、明治薬科大卒。大手製薬会社勤務後、結核やC型肝炎を患い退社。74年から栃木県佐野市で「小野薬局」を経営。東洋医学を学び漢方薬の普及活動も励んでいる。2008年10月から、佐野市民病院で地域医療連携室顧問。「患者を生きる 1000回記念特集」の記事で登場。病院の待合室の一角で展示している連載「患者を生きる」のスクラップを続けている。
鈴木信行さん 鈴木信行(すずき・のぶゆき)さん
アピタルに「のぶさんの患者道場」を連載。「難病」の二分脊椎(せきつい)を抱えている。20歳の時に精巣がんになり、その後手術や抗がん剤治療を経験。都内で「みのりCafe」(http://www.minori-cafe.com/)を経営。近くに大学病院があって患者や医療者が来店しては、自分の思いなどを語っていく。そうした話を個人プライバシーを尊重した上で、アピタルブログで紹介している。
進行役
平子義紀 (アピタル編集長)
小林美幸 (薬剤師、フリーアナウンサー)
協力
新産業文化創出研究所

写真4

――「患者を生きる」の記事でとりあげられた事例を紹介します。

 《連載で紹介したある腎臓病の女子中学生の例です。ステロイドの服用について男性の主治医から「アンパンマンのように顔が腫れ、体毛が濃くなる場合がある」と説明を受けた。同席していた母は年ごろの女の子への言葉としてはひどいと心の中で思い、関係が少しぎくしゃくした》



■ 突き刺さる言葉 ■

写真3

――主治医は、子どもにわかりやすいようにと、気を使って話したと考えることもできる。どうみたらいいでしょうか。

磯部 私も(昔勤めていた)大学病院でショックを受けたことがあります。若い医師と2人で重い心不全の85歳の患者さんの家族に治療方針の説明をしたとき、この(若い)先生は「どうせご高齢で助からない命ですから」と。家族は黙って聞いておられたが、相手の気持ちを考えて欲しいと思ったものです。

 私は大学病院で、若い先生や学生を指導する立場にいます。言葉が難しく、わかりにくい説明をする医師はしょっちゅういます。でも、それ以前に「思いやり」が感じられない医師もいます。


――患者の立場からいかがですか。

鈴木 ドクターは(患者の)目を見て、体も向けてゆっくり話しかけたでしょうか。同じ言葉でも態度で受け止め方は変わります。生活面にふみこんで「学校で友達に自分の言葉で説明できるかな」というような、日常にかかわる問いかけがあったらよかったのではないでしょうか。

 もう一つは患者の側の問題です。お母さんはどう言ってほしかったのでしょうか。たぶん、医師が話した言葉は間違っていません。それよりも本質的にもう一段深いところに(医師への反発が)あったのではないでしょうか。たとえば、治療方針で納得いかないとか、医師の説明が分からないとか、本質の問題が別にあったように思います。


――秋山さんはどう思われますか。

秋山 このごろの医師はよく説明してくれるが、「立て板に水のごとく」で、家族がさえぎって質問することができにくい。一気に説明するのではなく、中学生の表情をみながら返答すれば(説明の仕方に)修正がかけられたのではないでしょうか。たとえば「この薬を飲むことで症状はよくなるけど、途中で顔が少し丸くなるんだよね。どお?」というような言い方はなかったのか。

 私も外来で患者家族の横で、医師の話を聞くことがあります。耳鼻科の外来での経験です。頭頸部(とうけいぶ)がんなどでは、気道がふさがりやすいので、割とあっさり「首に穴あけるからね」と医師は言う。栄養の通り道がふさがると「胃に穴あけて」とか。すごく簡単に説明する。医師の世界では大したことではないかもしれませんが、言葉の持つイメージ、ニュアンスがとてもぐさぐさっとくるのです。その反応が手に取るように分かるのですが、それが医師には伝わっていないと思われる現場を何回か経験しています。なんとか改善はできないのかな、といつも思っています。


写真2 自身で作った「患者を生きる」のスクラップについて話す小野さん(左)

――小野さんは切り抜いた「患者を生きる」の連載をファイルしています

小野 入ファイルは病院の待合室の小さな本棚に、感想ノートといっしょに置いています。自分もかつてC型肝炎や結核の患者でした。昔入った病院は監獄のようで、早く帰りたかった。今はだいぶ改善して、医療側がちゃんと説明してくれるが、患者は生活の中で生きている。もっと生活を見て欲しいと思います。

◇           ◇

 次回は、磯部さんが実際に経験した事例から、インフォームドコンセント(説明と同意)について考えます。


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