2010年9月5日付 朝日新聞東京本社朝刊から
| 早期に発見できれば、治る可能性が高いと言われる乳がん。しかし日本の検診受診率は低く、先進国で唯一、乳がんで亡くなる人は増えている。こうした状況を変えようと、「乳がん月間」の10月、全国でピンクリボンフェスティバルが始まる。街や建物がピンク色に彩られるほか、ウオーキングやシンポジウムなど、早期発見の大切さを訴える催しが開かれる。 |
| タレントの山田邦子さんは3年前、テレビ番組への出演をきっかけに乳がんが見つかった。東京大医学部放射線科の中川恵一准教授とは啓発活動の中で知り合い、公私ともに仲がいいという。共に50歳の2人が、「乳がん検診のススメ」を話し合った。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| (聞き手・岡崎明子、写真・鈴木好之) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 山田邦子さん |
● 早期発見なら9割方治る ●
| 山田さんは、中川さんが座長を務める厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」の委員でもある |
山田 乳がんの検診受診率って、20%ぐらい。どうして低いんでしょうね。言っても受診率が上がらない。そこでこの懇談会ができて、呼ばれたんですよ。
中川 「検診を受けましょう」「はい」とはならない。がんとはどんな病気かとか、なぜ検診を受けなくてはならないのかということを、理解してもらわなきゃいけない。
山田 検診が怖いと言ってる人は、どうぞご自由ですから。ミュージシャンの川村カオリちゃんも乳がんで亡くなりました。彼女たちは最後の最後に検診を受けるのは大切だというメッセージを残している。
中川 本当にそうなんですよね。「がんが見つかったら怖いから行かない」という人には、「自分は死なない」という感覚があるんです。
山田 今日も乳がんで亡くなる人がいます。年間、1万人以上が乳がんで亡くなる。でも早期発見できれば、死なないですよね。
中川 早期であれば、9割方は完治します。ただ、(放射線被曝〈ひばく〉や、不必要な治療を受ける可能性が高まるので、特に気になることがなければ)20代からのマンモグラフィー検診はするべきじゃない。米国でも実は、40代についてはやらないほうがいいという勧告も出ているんです。検診というのはプラスとマイナスがあり、少なくとも国レベルでも40代からしか勧めていません。
| 乳がん治療は長く、仕事との両立も大変。メンタル面にも影響が出る |
山田 手術後の放射線治療は、28回通いました。仕事とのやり繰りが大変でした。通っているときには本当につらくて。主人に支えてもらいました。
中川 放射線がつらいというイメージは、日本人に刷り込まれています。
山田 治療しているときに、やけに怒りっぽくなったんです。自分が一生懸命だったので、一生懸命やっていない人を見つけるたびにイライラした。あ、これは異常だと思って、カウンセリングを受けました。おっぱいの形が変形して、申し訳ないとも思ったので、主人には「離婚しても構わないんだけれども」と言いました。そしたら、「いや、僕は別に全然何とも思わない」って言ってくれたの。
中川 サルを含めて、人間以外の動物というのは、授乳期を除いて、女性のおっぱいがこれほど膨らんでいないんですよ。それは気にしすぎです。
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| 中川恵一さん |
● お金の面でも早く見つけて ●
| 検診による早期発見は、経済的にもメリットが大きいという |
中川 乳がん世代は仕事とか子育てとか、お金も一番大切な時期。進行再発乳がんは、亡くなるまで抗がん剤を使うし、新しい薬は高い。(医療費の負担が一定額を超えると払い戻しが受けられる)高額療養費制度を使っても負担は大きいです。
山田 お薬代、高いですよね。
中川 がんの患者さんが「苦しい」と闘っているのは、抗がん剤の副作用がほとんどなんです。もちろん延命できることはいいことなんだけれども、その時期が非常につらくなっている。しかも、それが一番お金が必要な時期に起きているという意味では、やはり早期に見つけることが必要なんです。
| 検診の受診率向上について、2人からいろいろなアイデアが出た |
山田 空いてる時間はほぼすべて、啓発活動で全国に行っています。そこで富山の検診受診率が高いと聞いた。なぜだろうと思ったら、とてもやり手のおばさんたちのグループがいるらしいんです。「あなた、もう行ったの、行ってないの。今日行く?」って。口コミって、ばかにならないですよね。
中川 ボランティアによる個人勧奨ですね。例えば昨年度から始まった検診の無料クーポン券。日本対がん協会のデータによると、かなり受診率が上がっているんです。経済的な理由もあるかもしれないけど、個別の名前あてに来るということが大事です。
山田 検診はどこでも受けられると思っていたら、自治体検診は自分の住んでいるところだけだし、受けられる医療機関も決まっている。「何だ、今日行く気だったのに、行けないのか」と思ったら、先送りになっちゃう。ここはやっぱり問題だと思いますね。
中川 受診率を上げるには、長期的には学校での教育でしょう。数学は教えても、がんについて教えないのが今の学校の教育なんです。子どもたちが、がんで命を落とさないためにはどうすればいいかということを学べば、結局がん検診の受診率は上がるんです。
山田 それをずっと、中川先生とやっていこうと言っているんです。学校を回れば、親もついてくるでしょ。
| ウオーキングやシンポジウム、各地で | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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